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アル

03 あの山へ

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僕は故郷の山が恋しくなった。
あそこへ帰りたい。
あの白い小さなお城で‥‥母上‥‥


母上は、笑っていても、いつもどこか辛そうでしたね。
ふと視線を感じて振り返ると、母上の哀しそうな視線に出会い、立ち尽くしてしまう事がたまにありました。
――― 母上はどんな気持ちで僕を見ていたんでしょうか。
僕は母上にとっては辛い記憶を思い出させる存在だったのですね。
母上との間に感じていた壁のようなものの正体はコレだったんですね‥‥


母上‥‥僕はダメな子供です。
ここで生きる努力をするべきなのに。
あのメイドの話を聞いてしまった以上、もうここに居たくありません。



ただただあの山へ帰りたいと願っています。
こんなダメな僕に、母上は天国で失望しているでしょうか。



あの山へ。


僕の居場所おうちへ帰りたい‥‥

あの泉のほとり。

足元で笑う木の葉。

風と遊ぶ木漏れ日。


全部全部大好きだった。


背の高い木々に守られた小さなお城。

お城の中には母上がいる。

窓際の椅子に座って本を読んでいる。

傍には作りかけのレース編みや刺しゅう。

お茶にビスケット。

僕は母上の姿に安心する。

それなのに少し緊張してすぐには近寄る事が出来ない。

母上は今日も僕に笑いかけてくれるだろうか。

母上はいつも優しく笑いかけてくれるのに、僕はいつも緊張してしまう。

今にして思えば、僕は母上が笑っていても実は不幸だという事に傷ついていたのかもしれません。



母上‥‥‥


生まれて来てしまって、


ごめんなさい。
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