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72.フワリ、風が輝く
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フワリ・・・
海からの風が二人を包む。
合図されたかの様に、あれんが唇を離す。
「・・ッ、あれん・・!」
もっと・・永遠にでもキスしていたい悠人が、不満気な声を上げる。
「俺、寝てる間に、悠人の両親、探して会って来たんだ!」
早く言いたい、とばかりに、早口で一気に言うあれん。 ニコニコしている。
「・・!? え、俺の・・亡くなった?」
「うん。 探すの大変だった。 でも、見つけて、許しをもらった。」
「・・・・・・」 悠人は困惑顔であれんを見つめる。
「悠人も俺の母さんに、言ってくれたんだろ?『再プロポーズしてOKをもらえたら、あれんを俺にください。』って。 だから俺もさ、ちゃんとしたくて。
『悠人とずっと一緒に居ていいですか?』って聞いたんだ。」
「あ・・おぉ、・・・うん・・」
あれんは悠人の困惑の反応に気付かず、
「で、『いい』って言ってもらえた!」とニコニコ。
はっ・・! 悠人は気付く。 OKか!? OKだろ!? OKだな?!!
俺とずっと一緒にって・・・プロポーズOKって事だよな!! それで、俺の両親に、許しをもらったって・・・
11日間寝てる間に、そうゆう夢をみてくれたんだな!?
何て・・何て可愛いんだ!! 誠実で、優しいんだ!!
あれんの話を“夢を見てた”と解釈する悠人だが、あれんの次の言葉で総毛立つ。
「『ユージーンは実は寂しがりやだから、迷惑掛けるかもしれないけど、よろしくお願いしますね。』って言ってくれたんだよ!」
「ユージーン・・・!!?」
それは、誰も知らない、両親と悠人だけの、秘密の呼び名。
他に誰もいない、3人だけの時に、両親はその名で悠人を呼んだ。
叔父さんも祖父母も、本当に3人以外誰も知らない・・悠人自身、忘れていた・・・
「・・その、二人は、俺を“ユージーン”って?」 震える声で訊ねる悠人。
「うん、“家族だけの暗号名”なんだって? お父さんは“JJ”で、お母さんが何と“桜”って・・・俺の母さんの“梅”と何かつながってる気がして嬉しいよな。
・・・悠人? 大丈夫?」
「・・本当に・・二人に、会ったんだな・・そんな、不思議な事って・・」
信じられない・・だけど現実・・悠人の心はサワサワしている・・
「自分で言ってたじゃん、“二人とも魂がつながっているから、いつも一緒だから”って。 だから探せたし、話せた。 ・・フフ、自分で言ってて、半信半疑だった?大丈夫、本当にちゃんと繋がってるよ。」
「!!!」 悠人は真っ赤になる。
そうだ・・実際は、半信半疑どころか、殆ど信じてなかった・・俺は、そんなに、両親にとって大切な存在だとは思えなかったから・・
「・・・おいで?」
不意にあれんが悠人に手を広げてフワリと微笑む。 戸惑い、あれんを見つめる悠人。 動けない。 あれんの方から近付き、悠人をやさしく抱きしめる。
泣きたくなる様な、あたたかさ・・・魂が、魂に包まれている、そんな感じ・・
「・・本当はね、悠人のお父さんとお母さんは、こんな風にしたかったんだって。
でも、悠人のお父さんが、自分の心の弱さは、自分の両親が優し過ぎたからだと考えて、悠人には強く育って欲しくて、敢えて我慢して厳しく接してしまった、って。
たった5年しか一緒に居られないと知っていれば、もっとちゃんと“愛してる”って、伝えたのに、って。」
「!!!・・そ、・・今更・・・」想いが溢れて、言葉がうまく出ない悠人。
「あれ? 素直じゃない、悪い子だね?」悠人の髪を撫でながら、あれんが言う。
「・・ごめん。 すごく嬉しい。 愛されていたって、思える日が来るなんて・・」悠人はすぐに素直になる。 あれんに抱きしめられながら髪を撫でられいるのだから、素直になるに決まってる。
「うん、いい子。 何かご褒美あげる。 何がいい?」
何って・・・
「3、2、1。 はい、終了! 残念、悠人君、時間切れです!」
そう言って体を離し、波打ち際を駆け出すあれん。
え!? は!? 何っ!? 「ぁ、あれんっ!? ちょ・・」
「時間は有限なのだよ! 悠人君!! ハハッ・・」
あれんが走りながら叫ぶ。 た、楽しそうって・・・!?
「・・クッ・・」悠人も追いかける。 鬼の形相である。 すぐに捕まえてやる!
捕まえたら、メチャメチャにキスして、そして・・・っ
だけどあれんは捕まらない。 手を伸ばしても、あとちょっとの所でスルリとかわされてしまう。 そうして楽しそうに逃げ続ける。 何度も何度も。 一生、捕まえられないんじゃないか・・悠人はそんな不安に襲われる。
「・・あれんっ!!」普通じゃない声音に、あれんが立ち止まり、振り向く。
その体に抱きつき、さらに強く抱きしめる悠人。
「・・ッ、痛・・ゆ、悠人? どうした? ・・怒った?」
「ハァッハァッハァッハァッハァッハァッ・・・キス、」
「うん、・・キスしたい?」と訊くあれん。
「・・したくない・・」と答える悠人。
「・・・・・・」
「・・されたい。 ご褒美、くれるって言っただろ。 時間切れは認めない。」
「・・フフ、」
ゾクゾク・クラクラ・ザ・妖艶な微笑みを浮かべるあれん。
「・・仰せのままに・・我が王。」
喜びに震える唇に、愛で膨らんだ唇が重なる・・・
風が、輝く――――――
海からの風が二人を包む。
合図されたかの様に、あれんが唇を離す。
「・・ッ、あれん・・!」
もっと・・永遠にでもキスしていたい悠人が、不満気な声を上げる。
「俺、寝てる間に、悠人の両親、探して会って来たんだ!」
早く言いたい、とばかりに、早口で一気に言うあれん。 ニコニコしている。
「・・!? え、俺の・・亡くなった?」
「うん。 探すの大変だった。 でも、見つけて、許しをもらった。」
「・・・・・・」 悠人は困惑顔であれんを見つめる。
「悠人も俺の母さんに、言ってくれたんだろ?『再プロポーズしてOKをもらえたら、あれんを俺にください。』って。 だから俺もさ、ちゃんとしたくて。
『悠人とずっと一緒に居ていいですか?』って聞いたんだ。」
「あ・・おぉ、・・・うん・・」
あれんは悠人の困惑の反応に気付かず、
「で、『いい』って言ってもらえた!」とニコニコ。
はっ・・! 悠人は気付く。 OKか!? OKだろ!? OKだな?!!
俺とずっと一緒にって・・・プロポーズOKって事だよな!! それで、俺の両親に、許しをもらったって・・・
11日間寝てる間に、そうゆう夢をみてくれたんだな!?
何て・・何て可愛いんだ!! 誠実で、優しいんだ!!
あれんの話を“夢を見てた”と解釈する悠人だが、あれんの次の言葉で総毛立つ。
「『ユージーンは実は寂しがりやだから、迷惑掛けるかもしれないけど、よろしくお願いしますね。』って言ってくれたんだよ!」
「ユージーン・・・!!?」
それは、誰も知らない、両親と悠人だけの、秘密の呼び名。
他に誰もいない、3人だけの時に、両親はその名で悠人を呼んだ。
叔父さんも祖父母も、本当に3人以外誰も知らない・・悠人自身、忘れていた・・・
「・・その、二人は、俺を“ユージーン”って?」 震える声で訊ねる悠人。
「うん、“家族だけの暗号名”なんだって? お父さんは“JJ”で、お母さんが何と“桜”って・・・俺の母さんの“梅”と何かつながってる気がして嬉しいよな。
・・・悠人? 大丈夫?」
「・・本当に・・二人に、会ったんだな・・そんな、不思議な事って・・」
信じられない・・だけど現実・・悠人の心はサワサワしている・・
「自分で言ってたじゃん、“二人とも魂がつながっているから、いつも一緒だから”って。 だから探せたし、話せた。 ・・フフ、自分で言ってて、半信半疑だった?大丈夫、本当にちゃんと繋がってるよ。」
「!!!」 悠人は真っ赤になる。
そうだ・・実際は、半信半疑どころか、殆ど信じてなかった・・俺は、そんなに、両親にとって大切な存在だとは思えなかったから・・
「・・・おいで?」
不意にあれんが悠人に手を広げてフワリと微笑む。 戸惑い、あれんを見つめる悠人。 動けない。 あれんの方から近付き、悠人をやさしく抱きしめる。
泣きたくなる様な、あたたかさ・・・魂が、魂に包まれている、そんな感じ・・
「・・本当はね、悠人のお父さんとお母さんは、こんな風にしたかったんだって。
でも、悠人のお父さんが、自分の心の弱さは、自分の両親が優し過ぎたからだと考えて、悠人には強く育って欲しくて、敢えて我慢して厳しく接してしまった、って。
たった5年しか一緒に居られないと知っていれば、もっとちゃんと“愛してる”って、伝えたのに、って。」
「!!!・・そ、・・今更・・・」想いが溢れて、言葉がうまく出ない悠人。
「あれ? 素直じゃない、悪い子だね?」悠人の髪を撫でながら、あれんが言う。
「・・ごめん。 すごく嬉しい。 愛されていたって、思える日が来るなんて・・」悠人はすぐに素直になる。 あれんに抱きしめられながら髪を撫でられいるのだから、素直になるに決まってる。
「うん、いい子。 何かご褒美あげる。 何がいい?」
何って・・・
「3、2、1。 はい、終了! 残念、悠人君、時間切れです!」
そう言って体を離し、波打ち際を駆け出すあれん。
え!? は!? 何っ!? 「ぁ、あれんっ!? ちょ・・」
「時間は有限なのだよ! 悠人君!! ハハッ・・」
あれんが走りながら叫ぶ。 た、楽しそうって・・・!?
「・・クッ・・」悠人も追いかける。 鬼の形相である。 すぐに捕まえてやる!
捕まえたら、メチャメチャにキスして、そして・・・っ
だけどあれんは捕まらない。 手を伸ばしても、あとちょっとの所でスルリとかわされてしまう。 そうして楽しそうに逃げ続ける。 何度も何度も。 一生、捕まえられないんじゃないか・・悠人はそんな不安に襲われる。
「・・あれんっ!!」普通じゃない声音に、あれんが立ち止まり、振り向く。
その体に抱きつき、さらに強く抱きしめる悠人。
「・・ッ、痛・・ゆ、悠人? どうした? ・・怒った?」
「ハァッハァッハァッハァッハァッハァッ・・・キス、」
「うん、・・キスしたい?」と訊くあれん。
「・・したくない・・」と答える悠人。
「・・・・・・」
「・・されたい。 ご褒美、くれるって言っただろ。 時間切れは認めない。」
「・・フフ、」
ゾクゾク・クラクラ・ザ・妖艶な微笑みを浮かべるあれん。
「・・仰せのままに・・我が王。」
喜びに震える唇に、愛で膨らんだ唇が重なる・・・
風が、輝く――――――
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