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70.再プロポーズ・・・
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「・・夏を迎える覚悟、ある?」
その質問は、もちろん、季節についてではなく、この恋についてだろう。
吉田悠人は大きく目を見開き、数メートルあった距離を縮め、あれんの隣に立つ。
「・・その先の秋も、冬も、巡る春、夏・・ずっと、」
そこまで言ってあれんに向き直り、跪き、手を差し伸べ、
「君と迎えたい。 ずっと、一緒に、生きていきたい。 あれん、愛してる。
俺と結婚してくれ。」
「・・・へ?」
あれんがキョトンとしている。
「えっ、・・あ、ぅわ、急に!?」
あれんがメチャメチャ焦りだす。
急・・だったのか? そういう流れじゃなかったのか? 俺の勘違いなのか? 俺はどこから勘違いしているんだ? 俺の独り相撲だったのか? 全ては俺の勘違いなのか?
心の中で、答えによっては大怪我間違いなしの思考を堂々巡りさせながら硬直し、時が止まってしまう吉田悠人。
「・・あ、そうか。 例のアレか、言ってたヤツ。 再プロポーズ! 俺、記憶戻ったから?」
そう言われ、記憶について、ちゃんと確認していなかった事に吉田悠人は気付く。
「記憶、全部、戻ったんだよな?」 恐る恐る聞いてみる。
「・・そうだね。 8才の俺は、今よりずっと複雑な人生を送っていた事を思い出したよ。」 と言って、あれんが何とも言えない微笑を浮かべる。
「・・!! あれん・・・ あれん、俺は、・・・ごめん、考え無しだったんだな・・。 あれんが、ウメさんと過ごした最後の1ヶ月間が、暗く辛いものではなかった、って事だけを思い出してほしかった・・でも、・・そうだな。 あれんの人生は、複雑で・・そういう事全部思い出してしまうという事、考えが及ばなかった・・ごめん・・!」
サッと蒼ざめ、吉田悠人が謝る。
「いや、思い出すべきだったんだよ、だから悠人が謝る必要なんて、全然ない。」
柔らかな口調で言い、優しく微笑むあれん。
どうして、そんな風に微笑えるんだ、と吉田悠人は戸惑う。
さっき、ホテルで受けた電話の中で、あれんは祖母に普通に対応していた。 記憶が戻ったのなら、過去にその祖母に2度も殺されかけた事も思い出したはずなのに・・・
「ばーちゃんね・・」
吉田悠人の疑問を察したように、あれんが静かに語りだす。
「ばーちゃんは、小さな頃・・9才の時に、凄く辛い事があって、回復できないままなんだ・・傷ついた、小さな子供と同じなんだよ。 泉家のマインドコントロールも抜けてない・・だからね、俺は、彼女が立ち直る手伝いをしたいと思ってる。」
「・・あれんは凄いな・・たとえ血が繋がっていても・・いや、血が繋がっているからこそ、自分を殺そうとした相手を許せないのが普通だと思う。」
「ばーちゃんの場合、特殊だからね。 泉家は、異常なんだ。 ・・まぁ、これはばーちゃんと俺・・それと泉家の問題だから。」
吉田悠人はムッとする。
あれんの問題は、俺の問題だ。
――そう思っているのは、俺だけなのか・・・
「・・ぷくくっ・・、カワイ過ぎなんだけど・・・その拗ね顔・・・
あ、そうそう、だから、俺、悠人の所に少し荷物運んじゃったけど、やっぱ居候はしばらくはあきらめるよ。 何か今回の事で随分ショックだったみたいだから、ばーちゃん、一人に出来ないから。」
ザッッッ!! 跪いていた悠人が無言で立ち上がる。 眼を剥いている。
「・・・・・・・・・」 無言であれんを見つめ続けている。 眼を剥いている。
剥いている凄い眼であれんを見続けて・・
「ゆ、悠人・・、出来れば、言葉にしてほしいんだけど、え・・と、怒ってる?」
堪らずあれんが質問する。
「うぅ・・・・・」ギリッ・・
吉田悠人は血ィ咲く・・いや、小さく呻き、奥歯を噛み締める。眼を剥いている。
手はグーになっている。 肩が震えている・・・
「・・ヤ、・・クソク・・ハ・・? ヤ・・ク・・ソ、・・ク、シタ、ヤ・・」
賢王が非常にヤバい事になっている・・・どうした? 悠人・・・
何で時々日本語を忘れてしまうんだ・・約束って言いたいんだよな?
約束・・・再プロポーズの事かな? あれんは何の約束か見当がつかない。
「あの・・ごめん、記憶が曖昧かも・・でも、悠人と約束したんなら、必ずちゃんと思い出せると思う・・少し、待ってくれる?」
そう言って、悠人を覗き込む。 途端に悠人が真っ赤になる。
・・・エロい約束かな? いや、でも、エロい約束とか俺、絶対しないだろ。
うぅ~~ん・・・。 知りたくなる。
チラッ・・ 悠人を見・・あ、悠人もコッチ見てた。 ニコッ!
「フッ・・分かった。 同棲も、約束も、お預けだな・・・ちょっと・・いや、かなり残念だけど・・・」
王が微笑みながらお言葉を・・・あぁ、尊すぎる!!
随分慣れたけど、清らかビームは相変わらず神聖な空間を作り出し、その神秘的な空気に包まれると、厳かな気持ちになれる・・・尊い・・・
あれんは厳かな気持ちになっている。 厳かな気持ちのあれんには吉田悠人の欲情は読み取れない。
吉田悠人がエロい気持ちになると、あれんはナゼか清らかなものを感じ取る。
一体何の呪いなのか・・・
「「「お~~~~い!!」」」 「あ~ちゃ~~ん!!」
『海辺なのに山田サナトリウム』の方から砂煙を上げて4人の男が走って来る。
小池 & ゴリラズ。 あれんが一人で散歩したいと言うので、カフェでお茶して待っていたのだが、しびれを切らしたようだ。
「ちょっ・・何で吉田がいるんだよ!?」 小池ガルルが吠える。
その質問は、もちろん、季節についてではなく、この恋についてだろう。
吉田悠人は大きく目を見開き、数メートルあった距離を縮め、あれんの隣に立つ。
「・・その先の秋も、冬も、巡る春、夏・・ずっと、」
そこまで言ってあれんに向き直り、跪き、手を差し伸べ、
「君と迎えたい。 ずっと、一緒に、生きていきたい。 あれん、愛してる。
俺と結婚してくれ。」
「・・・へ?」
あれんがキョトンとしている。
「えっ、・・あ、ぅわ、急に!?」
あれんがメチャメチャ焦りだす。
急・・だったのか? そういう流れじゃなかったのか? 俺の勘違いなのか? 俺はどこから勘違いしているんだ? 俺の独り相撲だったのか? 全ては俺の勘違いなのか?
心の中で、答えによっては大怪我間違いなしの思考を堂々巡りさせながら硬直し、時が止まってしまう吉田悠人。
「・・あ、そうか。 例のアレか、言ってたヤツ。 再プロポーズ! 俺、記憶戻ったから?」
そう言われ、記憶について、ちゃんと確認していなかった事に吉田悠人は気付く。
「記憶、全部、戻ったんだよな?」 恐る恐る聞いてみる。
「・・そうだね。 8才の俺は、今よりずっと複雑な人生を送っていた事を思い出したよ。」 と言って、あれんが何とも言えない微笑を浮かべる。
「・・!! あれん・・・ あれん、俺は、・・・ごめん、考え無しだったんだな・・。 あれんが、ウメさんと過ごした最後の1ヶ月間が、暗く辛いものではなかった、って事だけを思い出してほしかった・・でも、・・そうだな。 あれんの人生は、複雑で・・そういう事全部思い出してしまうという事、考えが及ばなかった・・ごめん・・!」
サッと蒼ざめ、吉田悠人が謝る。
「いや、思い出すべきだったんだよ、だから悠人が謝る必要なんて、全然ない。」
柔らかな口調で言い、優しく微笑むあれん。
どうして、そんな風に微笑えるんだ、と吉田悠人は戸惑う。
さっき、ホテルで受けた電話の中で、あれんは祖母に普通に対応していた。 記憶が戻ったのなら、過去にその祖母に2度も殺されかけた事も思い出したはずなのに・・・
「ばーちゃんね・・」
吉田悠人の疑問を察したように、あれんが静かに語りだす。
「ばーちゃんは、小さな頃・・9才の時に、凄く辛い事があって、回復できないままなんだ・・傷ついた、小さな子供と同じなんだよ。 泉家のマインドコントロールも抜けてない・・だからね、俺は、彼女が立ち直る手伝いをしたいと思ってる。」
「・・あれんは凄いな・・たとえ血が繋がっていても・・いや、血が繋がっているからこそ、自分を殺そうとした相手を許せないのが普通だと思う。」
「ばーちゃんの場合、特殊だからね。 泉家は、異常なんだ。 ・・まぁ、これはばーちゃんと俺・・それと泉家の問題だから。」
吉田悠人はムッとする。
あれんの問題は、俺の問題だ。
――そう思っているのは、俺だけなのか・・・
「・・ぷくくっ・・、カワイ過ぎなんだけど・・・その拗ね顔・・・
あ、そうそう、だから、俺、悠人の所に少し荷物運んじゃったけど、やっぱ居候はしばらくはあきらめるよ。 何か今回の事で随分ショックだったみたいだから、ばーちゃん、一人に出来ないから。」
ザッッッ!! 跪いていた悠人が無言で立ち上がる。 眼を剥いている。
「・・・・・・・・・」 無言であれんを見つめ続けている。 眼を剥いている。
剥いている凄い眼であれんを見続けて・・
「ゆ、悠人・・、出来れば、言葉にしてほしいんだけど、え・・と、怒ってる?」
堪らずあれんが質問する。
「うぅ・・・・・」ギリッ・・
吉田悠人は血ィ咲く・・いや、小さく呻き、奥歯を噛み締める。眼を剥いている。
手はグーになっている。 肩が震えている・・・
「・・ヤ、・・クソク・・ハ・・? ヤ・・ク・・ソ、・・ク、シタ、ヤ・・」
賢王が非常にヤバい事になっている・・・どうした? 悠人・・・
何で時々日本語を忘れてしまうんだ・・約束って言いたいんだよな?
約束・・・再プロポーズの事かな? あれんは何の約束か見当がつかない。
「あの・・ごめん、記憶が曖昧かも・・でも、悠人と約束したんなら、必ずちゃんと思い出せると思う・・少し、待ってくれる?」
そう言って、悠人を覗き込む。 途端に悠人が真っ赤になる。
・・・エロい約束かな? いや、でも、エロい約束とか俺、絶対しないだろ。
うぅ~~ん・・・。 知りたくなる。
チラッ・・ 悠人を見・・あ、悠人もコッチ見てた。 ニコッ!
「フッ・・分かった。 同棲も、約束も、お預けだな・・・ちょっと・・いや、かなり残念だけど・・・」
王が微笑みながらお言葉を・・・あぁ、尊すぎる!!
随分慣れたけど、清らかビームは相変わらず神聖な空間を作り出し、その神秘的な空気に包まれると、厳かな気持ちになれる・・・尊い・・・
あれんは厳かな気持ちになっている。 厳かな気持ちのあれんには吉田悠人の欲情は読み取れない。
吉田悠人がエロい気持ちになると、あれんはナゼか清らかなものを感じ取る。
一体何の呪いなのか・・・
「「「お~~~~い!!」」」 「あ~ちゃ~~ん!!」
『海辺なのに山田サナトリウム』の方から砂煙を上げて4人の男が走って来る。
小池 & ゴリラズ。 あれんが一人で散歩したいと言うので、カフェでお茶して待っていたのだが、しびれを切らしたようだ。
「ちょっ・・何で吉田がいるんだよ!?」 小池ガルルが吠える。
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