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65.俺だけだろうね
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「・・・ソロソロ起キテ・・・」
「・・え? 誰?」
霧の中にぼんやり浮かぶシルエット。
輪郭すらもハッキリしないけど・・・子供みたいだ。
だんだん近付いて来る・・・
子供・・黒髪に濃青の眼・・あぁ、何だ、8才の頃の俺か・・・
「起キナイト、失クシテシマウヨ・・」
「・・え? 何を? 俺、何を失くすの?」
「失クシタクナイモノ・・大切ナ人・・命ニ代エテデモ守リタイ彼・・」
それは・・・「・・・吉田君・・・」
「・・悠人ヲ守レルノハ、誰?」
「・・俺だけだろうね・・」
そう答えると、8才の俺はふわりと微笑み光の中に霧散する。
「!!」眩しさに、眉根を寄せる・・フイに、自分がどこかに寝てる事、周りで数人の男の声がするのを感じる。
「・・ヤベエって! そりゃ、犯りてえのはヤマヤマよ? けど、見たろ? トモヤ坊ちゃん、マジ頭狂ってるって! 従弟の光輝坊ちゃんを撃ち殺しちまうんだからよ、あんな恐ろしい銃で! 下半身だけの死体なんて・・おぉ、恐ろしい!」
「大丈夫、今頃吉田ってガキを殺すのに夢中になってる頃さ、殺したらスグ戻って来るだろうから、今しかねえ! 男だろうが構わねえ! あんな綺麗な体抱けるなんて、もう今を逃したら一生巡ってこねえぜ!?」
「・・そう、そうだよな、犯った後、キレイにしとけば、バレねえよ! 何せ、トモヤ坊ちゃんは、まだ指1本触れてねえんだから、何か変だとか言われても、最初からそうだったと思うしかねえんだ、よし!」 話はまとまった!
男達はベッドに横たわる美し過ぎる獲物を振り返・・・「・・うわぁぁっ!?」
あれんを犯す相談に集中していた3人の見張りの男は、あれんが目覚め、ベッドに座った状態で自分達を観察していた事に気付いていなかった。
「・・へっへへ・・、何だ、起きたのかい? お姫様、恐がらなくていい・・」
「どういう事だ? “トモヤ坊ちゃん”って、郷里トモヤの事だろ? 今、吉田君を殺そうとしてるのか? どこで!?」
「まぁまぁ、キレイな顔で怒りなさんな、そんな事より・・」
あれんは男達をジッと見つめながら、声を荒げる。
「答えろ! 郷里トモヤはどこだ!? 何をするつもりだ!?」
途端に男達は雷に打たれた様に放心状態になり、知ってる事を全て話す。
その内容に、あれんは震撼する・・・!
あれんが居る現在地は、郷里家の山の山頂付近の山荘の6階。
郷里が吉田君を殺す為に吉田君を呼びつけたのは、狩場P-6と呼ばれる小さな平地。
山荘から地下通路を使い行けるのはハンター側だけだし、どんなに急いでも20分は掛かる。
吉田君が呼び出された獲物側は、罠だらけの危険な場所で、行くには明るくなってから、この山をよく知る者でも、2時間は掛かるであろう場所。
今、山荘から短時間で向かうのは絶対不可能な場所。
そのP-6で、丁度今頃、殺人は行われているであろうと言うのだ。
タタタッ! 体が走り出す。 とにかく、上へ! 山荘は8階建て。 屋上へ!
飛ぶように階段を駆け上がり、屋上へ向かう。
「はっ・・!? あ、に、逃がすな!」 見張り達が我に返る。
「どこ行くつもりだ!? 待てぇっ!!」 見張り達があれんを追う。
「屋上か!? 行き止まりだぜ、何考えてんだ!?」
あれんは今、何も考えてない。 体が走るに任せている。
そう、考えてない、感じてる!
屋上へ出る。 方角は、アッチ! アッチに向かって、屋上を駆ける!
やっと屋上まで追いかけて来た見張りが叫ぶ。「ば、ばかっ! 止まれっ!」
「止まらねえと、落ちるぞっ! 8、8階だぞ! ばかっ! 死んじまうっっ!!」
駆ける足が加速する。 力強く、さらに力強く地を蹴る。
風が左右に分かれ、道を作る。 道を、作る? その道を全速力で駆け、
空が、広い。 うるさいほどに瞬く星々。
「にっ、逃がしてやる! 逃がしてやるからぁぁっ・・・」
見張りの声が、懇願に変わっている。
山の一部にぼんやりと灯りが見える。 あそこだ!
屋上の端。 囲の上へジャンプ!
・・はっ・・ ココで思考が戻る。 あ、コレって・・・飛び降り自殺?
俺は今、山荘の屋上からダイヴ・・
「待てぇ~~~ッ」 「行くなぁぁっ!」 「姫様~~~ッ」
「「「 死なないでくれぇぇっ!!! 」」」
囲を思いっきり蹴り、
ダイヴ!!
その瞬間、一気に色々なものが俺の魂に押し寄せて来る・・・あぁ・・・
眼を閉じる・・今・・あそこで・・引き金が・・引かれた・・清らかな瞳・・
俺の・・彼・・・俺の・・・悠人に・・ッ
≪ッッ・・ させるかッ!!≫
魂が叫ぶ!
カッと眼を見開く。 眼を閉じる前とは別人の俺が在る。
風よ吹け!!!
「・・え? 誰?」
霧の中にぼんやり浮かぶシルエット。
輪郭すらもハッキリしないけど・・・子供みたいだ。
だんだん近付いて来る・・・
子供・・黒髪に濃青の眼・・あぁ、何だ、8才の頃の俺か・・・
「起キナイト、失クシテシマウヨ・・」
「・・え? 何を? 俺、何を失くすの?」
「失クシタクナイモノ・・大切ナ人・・命ニ代エテデモ守リタイ彼・・」
それは・・・「・・・吉田君・・・」
「・・悠人ヲ守レルノハ、誰?」
「・・俺だけだろうね・・」
そう答えると、8才の俺はふわりと微笑み光の中に霧散する。
「!!」眩しさに、眉根を寄せる・・フイに、自分がどこかに寝てる事、周りで数人の男の声がするのを感じる。
「・・ヤベエって! そりゃ、犯りてえのはヤマヤマよ? けど、見たろ? トモヤ坊ちゃん、マジ頭狂ってるって! 従弟の光輝坊ちゃんを撃ち殺しちまうんだからよ、あんな恐ろしい銃で! 下半身だけの死体なんて・・おぉ、恐ろしい!」
「大丈夫、今頃吉田ってガキを殺すのに夢中になってる頃さ、殺したらスグ戻って来るだろうから、今しかねえ! 男だろうが構わねえ! あんな綺麗な体抱けるなんて、もう今を逃したら一生巡ってこねえぜ!?」
「・・そう、そうだよな、犯った後、キレイにしとけば、バレねえよ! 何せ、トモヤ坊ちゃんは、まだ指1本触れてねえんだから、何か変だとか言われても、最初からそうだったと思うしかねえんだ、よし!」 話はまとまった!
男達はベッドに横たわる美し過ぎる獲物を振り返・・・「・・うわぁぁっ!?」
あれんを犯す相談に集中していた3人の見張りの男は、あれんが目覚め、ベッドに座った状態で自分達を観察していた事に気付いていなかった。
「・・へっへへ・・、何だ、起きたのかい? お姫様、恐がらなくていい・・」
「どういう事だ? “トモヤ坊ちゃん”って、郷里トモヤの事だろ? 今、吉田君を殺そうとしてるのか? どこで!?」
「まぁまぁ、キレイな顔で怒りなさんな、そんな事より・・」
あれんは男達をジッと見つめながら、声を荒げる。
「答えろ! 郷里トモヤはどこだ!? 何をするつもりだ!?」
途端に男達は雷に打たれた様に放心状態になり、知ってる事を全て話す。
その内容に、あれんは震撼する・・・!
あれんが居る現在地は、郷里家の山の山頂付近の山荘の6階。
郷里が吉田君を殺す為に吉田君を呼びつけたのは、狩場P-6と呼ばれる小さな平地。
山荘から地下通路を使い行けるのはハンター側だけだし、どんなに急いでも20分は掛かる。
吉田君が呼び出された獲物側は、罠だらけの危険な場所で、行くには明るくなってから、この山をよく知る者でも、2時間は掛かるであろう場所。
今、山荘から短時間で向かうのは絶対不可能な場所。
そのP-6で、丁度今頃、殺人は行われているであろうと言うのだ。
タタタッ! 体が走り出す。 とにかく、上へ! 山荘は8階建て。 屋上へ!
飛ぶように階段を駆け上がり、屋上へ向かう。
「はっ・・!? あ、に、逃がすな!」 見張り達が我に返る。
「どこ行くつもりだ!? 待てぇっ!!」 見張り達があれんを追う。
「屋上か!? 行き止まりだぜ、何考えてんだ!?」
あれんは今、何も考えてない。 体が走るに任せている。
そう、考えてない、感じてる!
屋上へ出る。 方角は、アッチ! アッチに向かって、屋上を駆ける!
やっと屋上まで追いかけて来た見張りが叫ぶ。「ば、ばかっ! 止まれっ!」
「止まらねえと、落ちるぞっ! 8、8階だぞ! ばかっ! 死んじまうっっ!!」
駆ける足が加速する。 力強く、さらに力強く地を蹴る。
風が左右に分かれ、道を作る。 道を、作る? その道を全速力で駆け、
空が、広い。 うるさいほどに瞬く星々。
「にっ、逃がしてやる! 逃がしてやるからぁぁっ・・・」
見張りの声が、懇願に変わっている。
山の一部にぼんやりと灯りが見える。 あそこだ!
屋上の端。 囲の上へジャンプ!
・・はっ・・ ココで思考が戻る。 あ、コレって・・・飛び降り自殺?
俺は今、山荘の屋上からダイヴ・・
「待てぇ~~~ッ」 「行くなぁぁっ!」 「姫様~~~ッ」
「「「 死なないでくれぇぇっ!!! 」」」
囲を思いっきり蹴り、
ダイヴ!!
その瞬間、一気に色々なものが俺の魂に押し寄せて来る・・・あぁ・・・
眼を閉じる・・今・・あそこで・・引き金が・・引かれた・・清らかな瞳・・
俺の・・彼・・・俺の・・・悠人に・・ッ
≪ッッ・・ させるかッ!!≫
魂が叫ぶ!
カッと眼を見開く。 眼を閉じる前とは別人の俺が在る。
風よ吹け!!!
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