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59.事実
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(・・・何だかボーっとする・・)
(学校前からタクシーに乗り込み、どれぐらいだろうか・・・そんな事も分からないって・・・変・・・だよな?)
祖母・優子に頼まれ、行先も分からないままタクシーで学校を出たあれん。
タクシーは1度町に入り、町を抜けて、山道に入ってから随分走ってる気がする。 道も大分悪くなってきていて、ガタガタと振動が激しくなってきてる。
(・・コレ、タクシー代いくら掛かっちゃうんだろ? ウチってそんな余裕ないよなぁ・・大丈夫かなぁ・・・)
あれんが体調の異変より、タクシー代を気にしていると、
「あれん? 大丈夫かい?」
ばーちゃんが心配してくれる。 良かった・・ばーちゃんは随分落ち着いたみたい。
「俺、・・何か・・変・・なんだ・・けど・・」
「ああ、それは、さっき飲んだスムージーに入れた薬のせいだよ! 心配しないで! あれんが楽になる薬だって!」
「??! ・・え? 薬って、何・・」
「あれん、やっぱり郷里君は素晴らしい人だよ! 最高の提案をしてくれて、最高のお医者さんも用意してくれてるんだって! 今からそこへ行って、あれんを女の子に変えてもらう手術をしてくれるんだって! そしたら、もう二度と泉家に命を狙われる事はないんだよ!!」
「・・な・・」
郷里!? あれんは薬でボンヤリしてる頭でも、その名には戦慄する。
(ばーちゃん、何で・・危険な男だから関わっちゃいけないって、あれ程頼んだのに・・)
キキィッ! その時、突然タクシーが止まる。 そして・・
「ひゃーーっはははは!! ひぃーーーっひひひ!! きはぁーーーっはは!!」
常軌を逸したようなけたたましい笑い声が車内に響き渡り、運転手が振り返り、帽子を投げ捨て、優子に向かって怒鳴りつける。
「はぁぁ!? あれん様に手術? 性転換!? するワケ無いっしょ!? 本っっ当脳ミソ腐ってんじゃない!?? このクッソばばぁがっ!!」
「・・・!?」 あまりの事に優子は頭が真っ白になる。
「どっ・・どうしたの!? 郷里君!? 私、ちゃんとあなたに言われた通り、やりましたよ? そうすれば、あれんを女の子にしてくれるって約束・・」
「だぁ~~かぁ~~らぁ~~!! あれん様は今のままがもう、最高傑作なのに、何で女なんかにしなきゃいけないワケさ!? 完璧な美にわざわざ傷をつけるとか、おぞまし過ぎて、ぅひゃぁぅぅっ、ブルルッ寒気がするよ!! この痴れ者がっ!!」
「なっ・・、なに・・なっ・」
「あぁあぁ、泣きゃいいってか? ばばぁの涙に誰が同情するっての? 大体さ、僕は女なんか抱けないんだよね。 あれ程憧れたサラ様にだって勃たなかったんだから! せっかく攫って、服を脱がせて、さぁ、って時にやっと気づいたんだけどサ、・・だけど、それは、あれん様に出会って、愛し合う為だって、今では良かったって思ってるんだ。くぅっふふふふふ、くふっ、くんっ・・はぁ、はぁ、さ、急がなきゃね、あれん様っ!!」
「あ、あんた、騙したんだねっ!! 本当は、サラを拉致監禁したのはあんたの方だったんだね!! ああ、あれんはそう言ってくれてたのに、私は・・!」
「ふふん、今頃、かよ!? ばばぁさ、何で僕を信用したか教えてあげるよ。
『あなたは悪くない、正しい。』――僕がそう言った瞬間、サッと表情が変わって、僕を神様を見る様な眼で見たんだ。 分かる? 自分を肯定してくれる、聞きたい事を言ってくれる、それだけで、あんたを憎んでるこの僕を妄信したんだよ!!」
「・・・・・・!!!」
優子は思い出した。 確かにそうだった。 泉家からも、瑛子さん達からも、・・・晩年のサラからも、否定され続けて来た・・・だから、『そうじゃない、あなたは正しい』と言われ・・・
「・・わ、私は・・何て愚かな・・・」
「あ、だよね~!! だからぁ、あんたには罰を与えるよ! もう少し行くと、車の交換の為に車と男達が待ってる。 その男達に、あんたの処刑を依頼しておいたからぁ! あぁ、簡単に死ねるとか思わないでよ? クソばばぁ! 僕の大切なあれん様をクソガキ・吉田に差し出した罪は万死に値するんだから! 男達に穴って穴を犯されて、散々なぶられて、ゴミみたいに捨てられりゃいい! ソレだって手ぬるいけど、時間が無いから・・はっ!?」
「・・ばー・・ちゃん・・を・・」
あれんは既に朦朧としている状態で、運転席に手をかけ、何とか体を起こしながら、必死に言葉を絞り出す。
「・・あぁっ! あれん様! もう、そんな状態で無理しないでっ! 意識を保つ事すら不可能な状態なんだから! そういう薬なんだから! 無理しないでっ・・」
あれんは諦めない。
閉じよう閉じようとする重い瞼を必死に開き、郷里の眼をジッと見つめながら、
「ばーちゃん・・を・・傷・・つけない・・で、・・安全・・に・・家に帰・・して・・お・・、お願いッ・・お・・願・・い・・」
そこまで言うと、もう自身の体を保てず、崩れ落ちた・・
(学校前からタクシーに乗り込み、どれぐらいだろうか・・・そんな事も分からないって・・・変・・・だよな?)
祖母・優子に頼まれ、行先も分からないままタクシーで学校を出たあれん。
タクシーは1度町に入り、町を抜けて、山道に入ってから随分走ってる気がする。 道も大分悪くなってきていて、ガタガタと振動が激しくなってきてる。
(・・コレ、タクシー代いくら掛かっちゃうんだろ? ウチってそんな余裕ないよなぁ・・大丈夫かなぁ・・・)
あれんが体調の異変より、タクシー代を気にしていると、
「あれん? 大丈夫かい?」
ばーちゃんが心配してくれる。 良かった・・ばーちゃんは随分落ち着いたみたい。
「俺、・・何か・・変・・なんだ・・けど・・」
「ああ、それは、さっき飲んだスムージーに入れた薬のせいだよ! 心配しないで! あれんが楽になる薬だって!」
「??! ・・え? 薬って、何・・」
「あれん、やっぱり郷里君は素晴らしい人だよ! 最高の提案をしてくれて、最高のお医者さんも用意してくれてるんだって! 今からそこへ行って、あれんを女の子に変えてもらう手術をしてくれるんだって! そしたら、もう二度と泉家に命を狙われる事はないんだよ!!」
「・・な・・」
郷里!? あれんは薬でボンヤリしてる頭でも、その名には戦慄する。
(ばーちゃん、何で・・危険な男だから関わっちゃいけないって、あれ程頼んだのに・・)
キキィッ! その時、突然タクシーが止まる。 そして・・
「ひゃーーっはははは!! ひぃーーーっひひひ!! きはぁーーーっはは!!」
常軌を逸したようなけたたましい笑い声が車内に響き渡り、運転手が振り返り、帽子を投げ捨て、優子に向かって怒鳴りつける。
「はぁぁ!? あれん様に手術? 性転換!? するワケ無いっしょ!? 本っっ当脳ミソ腐ってんじゃない!?? このクッソばばぁがっ!!」
「・・・!?」 あまりの事に優子は頭が真っ白になる。
「どっ・・どうしたの!? 郷里君!? 私、ちゃんとあなたに言われた通り、やりましたよ? そうすれば、あれんを女の子にしてくれるって約束・・」
「だぁ~~かぁ~~らぁ~~!! あれん様は今のままがもう、最高傑作なのに、何で女なんかにしなきゃいけないワケさ!? 完璧な美にわざわざ傷をつけるとか、おぞまし過ぎて、ぅひゃぁぅぅっ、ブルルッ寒気がするよ!! この痴れ者がっ!!」
「なっ・・、なに・・なっ・」
「あぁあぁ、泣きゃいいってか? ばばぁの涙に誰が同情するっての? 大体さ、僕は女なんか抱けないんだよね。 あれ程憧れたサラ様にだって勃たなかったんだから! せっかく攫って、服を脱がせて、さぁ、って時にやっと気づいたんだけどサ、・・だけど、それは、あれん様に出会って、愛し合う為だって、今では良かったって思ってるんだ。くぅっふふふふふ、くふっ、くんっ・・はぁ、はぁ、さ、急がなきゃね、あれん様っ!!」
「あ、あんた、騙したんだねっ!! 本当は、サラを拉致監禁したのはあんたの方だったんだね!! ああ、あれんはそう言ってくれてたのに、私は・・!」
「ふふん、今頃、かよ!? ばばぁさ、何で僕を信用したか教えてあげるよ。
『あなたは悪くない、正しい。』――僕がそう言った瞬間、サッと表情が変わって、僕を神様を見る様な眼で見たんだ。 分かる? 自分を肯定してくれる、聞きたい事を言ってくれる、それだけで、あんたを憎んでるこの僕を妄信したんだよ!!」
「・・・・・・!!!」
優子は思い出した。 確かにそうだった。 泉家からも、瑛子さん達からも、・・・晩年のサラからも、否定され続けて来た・・・だから、『そうじゃない、あなたは正しい』と言われ・・・
「・・わ、私は・・何て愚かな・・・」
「あ、だよね~!! だからぁ、あんたには罰を与えるよ! もう少し行くと、車の交換の為に車と男達が待ってる。 その男達に、あんたの処刑を依頼しておいたからぁ! あぁ、簡単に死ねるとか思わないでよ? クソばばぁ! 僕の大切なあれん様をクソガキ・吉田に差し出した罪は万死に値するんだから! 男達に穴って穴を犯されて、散々なぶられて、ゴミみたいに捨てられりゃいい! ソレだって手ぬるいけど、時間が無いから・・はっ!?」
「・・ばー・・ちゃん・・を・・」
あれんは既に朦朧としている状態で、運転席に手をかけ、何とか体を起こしながら、必死に言葉を絞り出す。
「・・あぁっ! あれん様! もう、そんな状態で無理しないでっ! 意識を保つ事すら不可能な状態なんだから! そういう薬なんだから! 無理しないでっ・・」
あれんは諦めない。
閉じよう閉じようとする重い瞼を必死に開き、郷里の眼をジッと見つめながら、
「ばーちゃん・・を・・傷・・つけない・・で、・・安全・・に・・家に帰・・して・・お・・、お願いッ・・お・・願・・い・・」
そこまで言うと、もう自身の体を保てず、崩れ落ちた・・
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