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25.ベテランピザ配達員は見た!

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「ピザ? 頼んでないけど・・」


応対に出た男性は流暢な日本語を操ってはいるが、外国の方だと思われる。
風呂から出たばかりの様子でバスローブを着ているが、日本人ではこうは着こなせない。 たかがバスローブ、されどバスローブ。
習慣で着慣れている人と、真似して着ている人は全然違うのだ。
モチロン、普通バスローブ姿で人前に出る事は無いと思うが、俺が狂ったように玄関ベルを鳴らしてしまった為、この男性は親切で出てくれているのだろう。

それにこの男性は醸し出す雰囲気がまるで違う。若いのに冒しがたい威厳に溢れ、ただ立っているだけでも他人をひれ伏せさせてしまう圧倒的な威圧感がある。
もしかして、どこぞの国の王様かもしれない・・・そんな風に思わせる。


この辺は観光ガイドブックには載っていないが隠れた人気別荘地。ヘタに観光地化されておらず、最低限の整備のみで自然の豊かさを残している事が、日本人よりも海外の人達に人気がある理由らしい。なので別荘の利用者は外国人の方が多いぐらいだ。

彼もきっとその一人、お忍びで来日中の王様に違いない・・・


俺はピザの配達員。配達員歴10年になるベテランだ。
なので客を見る目には自信がある。そして配達先の確認も怠ることは決してない。

別荘地が始まる辺りのこの家に、確かに注文が入っているはずなのだ。
「えぇと、泉あれん様から確かにご注文頂いたはずですが・・・」
俺がそういうのと同時に、バタン!と奥の方のドアの開く音がして、


「フヮァ~~~ッ、吉田君・・ッ、すっごく、気持ち、良かったぁ~~・・・」


「「ハッ!」」
ゾクゾクする艶めかしい声に、俺も王様も声の方向に本能的にギラギラした野性の目を向ける! 極上の獲物に対するワイルドな欲望は王様も庶民も変わりない・・!
俺達の視線の先には・・!


時々耳にする『女性より美しい男性』という表現・・・
俺は完全異性愛者だからなのか、『その通り』と思う例は無かった。
造形的には整えられていても、目に見えない部分、発するオーラに『違う』と思わされてしまう。だけど・・・ここに・・・いた!!『女性より美しい男性』が、目の前に!!


少し濡れた白銀髪の髪を無造作に、しかし最高にエロティックにかき上げ、吸い込まれそうな深く碧い瞳は暴力的な魅力を放ち、端正過ぎる顔が冷たさを感じさせないのは、妖しく艶めく唇のせいか・・・

王様とお揃いの黒のバスローブが、彼の白くきめ細やかな肌の魅力を否応なしに引き立てて・・・ポタッ、ポタタタッ・・・あ?な、何だ?・・・俺・・鼻血が!

セ、セーフ!ピザにはかかってない・・・
いや、ある意味アウト! 俺、男に欲情しちゃった・・・!!


「あ、ピザ来た?よかった、吉田君が空腹でイライラしてるみたいだったから、そこの電話から頼んでおいたんだよ。フフ、どや! あ、すいませーん、ピザ屋さん、いくらですか・・うわッ!?」


彼がせっかく俺に話しかけてくれてたのに、王様がものすごい速さで彼を奥の部屋に押し込んでしまう。ケ、ケチィ!!


「何だよ? 俺が払うよ・・」「いいから!あれんは人前に出るな!しかもそんな格好で・・・」「吉田君だって同じ格好じゃん!違いと言ったら俺パンツはいてないくらいで・・」「はぁぁぁぁぁ!?」


―――などと会話が漏れ聞こえてくる・・・明らかに二人ともシャワー直後・・・お揃いのバスローブ・・・銀髪超絶美少年が発した最初の言葉・・・余韻を感じさせる濡れた声・・・匂い立つ色香・・・パンツはいてません宣言は・・早くも次をお強請ねだりか・・・い、いけない子だなっ・・くぅぅっ、強請られたい・・・!!
俺に強請ってくれ!! 君に強請られれば、命だって差し出そう・・・!!!


ハァッハァッ、ダメだッ!これ以上の妄想は俺の限界を超えてしまうッ!
そう自分を抑えようとするのに、どうしても頭の中につい先程まで繰り広げられていたであろう重なり合い組んず解れつする二人の激しいアレを・・・
王様に激しく攻めたてられ耐えかねた銀髪超絶美少年の淫らな喘ぎ声と跳ね上がり激しく全身をくねらせ悶え狂うあられもない姿態を描いてしまい、鼻血が止まらない・・・!!


それにしても・・・押し戻されるときに彼のバスローブの裾が乱れ一瞬露わになった・・・足首のキュッと締まった白く美しい足・・・彼のフェイス同様に清らかさと艶めかしさを同時に醸し出す・・・あんな足にギリギリと踏みつけられてみたいものだ・・・ゴクリッ・・・この俺の貧相な顔面に彼のいやらしくも尊い足裏を感じられたなら・・・そして、その・・ピーーーーーーッ(R15自主規制)


――などと自分の中に今まで感じた事のない欲求が芽生え燃え上がる・・・
あぁ、今までの人生で貫かれてきた俺の性の価値観・・・これはその敗北なのか!?・・・こんなに甘美な敗北があっていいのかッ・・・!?


はっ!! 王様がこっちに来る! 
頭を軽く振り、両手で乱暴に髪をかき乱す姿が悩まし過ぎる・・・


「すいません、支払いを・・」 セクシー・ダダ漏れ・バリトンイケボ・・・!


最初の応対の時よりぐったりとした様子の王様・・・

この王様も危険なまでに美しく妖艶だ・・・銀髪超絶美少年に困らされたのか、ブラック・バスローブが少し乱れた事でクールさの裏に隠された猛々しい雄の貌を露呈するワイルド・キング・・・
自らが放つむせかえる程の男の色香に気付きもせず、お財布片手にピザ代を支払おうとする姿はどこか無防備で、男の俺でもむしゃぶりつきたくなる様な色気と危うさをはらんでいる。 な、何てイケナイ王様ッッッ・・・

銀髪超絶美少年に自分の中の何かを引き出されてしまった今の俺は、その事に気付いてしまう・・・ゴクリ。彼の・・ピーーーーーーッ(R15&不敬罪自主規制)


「い、いえ!充分・・!過ぎるほどに頂きました!ありがとうございました!!」と叫び、ピザを置いて逃げる様に車を走らせる。王様が何か言っているが、俺は切羽詰まっている!


「今日の配達、バイクじゃなくて車にしといてよかった・・・」チラリ。助手席に無造作に放ってあるBOXティッシュを素早く確認して呟く・・・



ベテラン配達員は自分の中に新たな扉が開くのを認めつつ、扉の先に広がるめくるめく世界への期待に目眩を覚えながら、とにかくどこか人気のない場所で1本抜く為、静かな脇道へとピザ屋の車を走らせていくのだった・・・
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