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6 そういえ話
109 お義父様におねだり 1
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『自分は年齢的に子を生せないだろうから、結婚出来ません』
的な事で揉めた割に。
皇子、皇子と皇女の双子、皇女、皇子と。
ソルは立て続けに5人の子を産んだ。
『正に『案ずるよりも産むが易し』ですわね!』と4公女から言われたソル。
『ええ、無知や思い込みって怖いわね…
わたくし、30才を越えたらほぼほぼ妊娠しないものなのだと思い込んでいたの。
一般的にそう言われているでしょう?
でも考えてみたら、20代と30代、40代だって全然体調は変わっていないのよね』
体調だけでなく、ソルは5児の母になっても変わらず二十歳前後にしか見えない。
――『特別な人』には2種類ある様だ。
自分が特別であることを自覚し過ぎと、無自覚過ぎと。
後者であるソル、妊娠期間が5~6ヶ月と短い事も特別とは思っていない。
『あまり長く母胎にいると魔力酔い的な事になるらしいわ。
それでサッサと生まれてしまうのですって。
未熟な状態で生まれても暫くはわたくしの魔力に守られていて大丈夫だとか。
実際、その通り大丈夫だったわ。
ジョーカー王国の古代人に関する古文書に書いてあったの。
わたくしって本当に古代人の先祖返りなのねぇ…
でもまぁ、個人差がある事ですもの、別に普通よね』
と呑気に笑うソル。
38才で結婚、40才と4か月で5児の母である。
まだまだ皇帝の腰は止まりそうになく、カード宮殿はどこまで賑やかになるのだか…
これは、ソルが第一子を妊娠して数ヶ月後のエピソード――
「お久しぶりです、お義父様」
「‥やぁ、ソル姫、久しぶ‥えッ!?」
ここはカード帝国直轄地の北の離宮の庭園の一角である。
ソルの逆プロポーズからあっという間に発表、結婚式、お披露目祭と、怒涛の数か月が過ぎたところ。
テネブラエ公は『カード宮殿で共に暮らそう』という皇帝やソルの説得にも応じず、元々の蟄居先である北の離宮へ強引に戻っていた。
『私は多くの罪を犯した――それはスート王に操られていたからと言って許されるものではない』
その思いは揺るぎなく、テネブラエ公は蟄居の継続を主張したのだ。
皇帝に切り落とされた腕はソルが言った通り少しずつ生え戻ってきてはいるが、まだ肘にも達しておらず、不便である様だ。
にもかかわらずテネブラエ公は庭の手入れが日課で、今も雑草と格闘していたところだ。
わずかな使用人しか置かないテネブラエ公。
秋だというのに庭師のいない庭はうら寂しい感じがする。
そこへ突然現れた大輪の花の様なソル。
テネブラエ公は立ち上がり、キョロキョロと辺りを見回して――
「‥いや、馬車もない、供もいない、ルーメンすらいない…!
瞬間移動で来たのか…
だ、駄目ではないか!
お腹の子に何か障りがあったらどうするのだ!?」
眉根を寄せてそう言うが、頬はほんのり染まっている。
嬉しいのだ。
息子の嫁が、アクワ姫の娘が、そして単純に女神の様に美しい女性が訪ねて来てくれたことが嬉しいのである。
「問題ありませんわ。
魔法は体内に滞留させておくより使った方が胎児の為にもいいのです」
「ソル姫…そうか、なるほど。
‥ゆっくりしていけるのか?‥今お茶を‥」
「残念ながらすぐ戻らねばなりませんの。
実は今は仕事の休憩中で、お義父様にお願いするのを忘れていたことを思い出して飛んできましたの」
「私にお願い?
いいとも、私に出来る事なら何でも言ってほしい!」
嬉しさでキラキラしながら声を弾ませる義父にソルは微笑む。
(ルー様がお義父様を『無自覚モテ男』と言う理由が分かる…
随分と年上の御方に失礼だけれど何だか可愛らしいのよね…
お母様が恋に落ちたのも分かるわ…)
「…ソル姫?」
「‥あ、ええ。
実は出産祝いを頂きたくお願いに参りました」
「ああ、それはもちろんだが…何かリクエストが有るという事かな?」
「ご明察ですわ。
生まれてくる子が一生大切に使えるものをお願いしたいのです」
「…一生???」
「名前をお願いしたいのです」
「‥なッ!‥それは‥
そんな大切なこと…
…ルーメンは38才で初めて父になる…君だってそうだ!
二人で話し合って名前を決めるのがベストだと思う」
「二人で話し合ってお義父様にお願いしようとなったのです。
お願いいたします」
「いや、だが、」
「‥あ、そろそろ戻ります。
会議の時間ですので」
「いや私は‥」
〈カッ〉
「‥ああ、行ってしまった」
〈カッ〉
「ソルッ!」
「うわ!‥ルーメン!
またソル姫を追いかけているのか?
彼女ならつい今帰ったぞ」
ソルが消えた直ぐ後に必死過ぎる顔で現れた息子にテネブラエ公は呆れた声を上げる。
ソル姫を好き過ぎる気持ちは解るが、追いかけ過ぎだろうと。
的な事で揉めた割に。
皇子、皇子と皇女の双子、皇女、皇子と。
ソルは立て続けに5人の子を産んだ。
『正に『案ずるよりも産むが易し』ですわね!』と4公女から言われたソル。
『ええ、無知や思い込みって怖いわね…
わたくし、30才を越えたらほぼほぼ妊娠しないものなのだと思い込んでいたの。
一般的にそう言われているでしょう?
でも考えてみたら、20代と30代、40代だって全然体調は変わっていないのよね』
体調だけでなく、ソルは5児の母になっても変わらず二十歳前後にしか見えない。
――『特別な人』には2種類ある様だ。
自分が特別であることを自覚し過ぎと、無自覚過ぎと。
後者であるソル、妊娠期間が5~6ヶ月と短い事も特別とは思っていない。
『あまり長く母胎にいると魔力酔い的な事になるらしいわ。
それでサッサと生まれてしまうのですって。
未熟な状態で生まれても暫くはわたくしの魔力に守られていて大丈夫だとか。
実際、その通り大丈夫だったわ。
ジョーカー王国の古代人に関する古文書に書いてあったの。
わたくしって本当に古代人の先祖返りなのねぇ…
でもまぁ、個人差がある事ですもの、別に普通よね』
と呑気に笑うソル。
38才で結婚、40才と4か月で5児の母である。
まだまだ皇帝の腰は止まりそうになく、カード宮殿はどこまで賑やかになるのだか…
これは、ソルが第一子を妊娠して数ヶ月後のエピソード――
「お久しぶりです、お義父様」
「‥やぁ、ソル姫、久しぶ‥えッ!?」
ここはカード帝国直轄地の北の離宮の庭園の一角である。
ソルの逆プロポーズからあっという間に発表、結婚式、お披露目祭と、怒涛の数か月が過ぎたところ。
テネブラエ公は『カード宮殿で共に暮らそう』という皇帝やソルの説得にも応じず、元々の蟄居先である北の離宮へ強引に戻っていた。
『私は多くの罪を犯した――それはスート王に操られていたからと言って許されるものではない』
その思いは揺るぎなく、テネブラエ公は蟄居の継続を主張したのだ。
皇帝に切り落とされた腕はソルが言った通り少しずつ生え戻ってきてはいるが、まだ肘にも達しておらず、不便である様だ。
にもかかわらずテネブラエ公は庭の手入れが日課で、今も雑草と格闘していたところだ。
わずかな使用人しか置かないテネブラエ公。
秋だというのに庭師のいない庭はうら寂しい感じがする。
そこへ突然現れた大輪の花の様なソル。
テネブラエ公は立ち上がり、キョロキョロと辺りを見回して――
「‥いや、馬車もない、供もいない、ルーメンすらいない…!
瞬間移動で来たのか…
だ、駄目ではないか!
お腹の子に何か障りがあったらどうするのだ!?」
眉根を寄せてそう言うが、頬はほんのり染まっている。
嬉しいのだ。
息子の嫁が、アクワ姫の娘が、そして単純に女神の様に美しい女性が訪ねて来てくれたことが嬉しいのである。
「問題ありませんわ。
魔法は体内に滞留させておくより使った方が胎児の為にもいいのです」
「ソル姫…そうか、なるほど。
‥ゆっくりしていけるのか?‥今お茶を‥」
「残念ながらすぐ戻らねばなりませんの。
実は今は仕事の休憩中で、お義父様にお願いするのを忘れていたことを思い出して飛んできましたの」
「私にお願い?
いいとも、私に出来る事なら何でも言ってほしい!」
嬉しさでキラキラしながら声を弾ませる義父にソルは微笑む。
(ルー様がお義父様を『無自覚モテ男』と言う理由が分かる…
随分と年上の御方に失礼だけれど何だか可愛らしいのよね…
お母様が恋に落ちたのも分かるわ…)
「…ソル姫?」
「‥あ、ええ。
実は出産祝いを頂きたくお願いに参りました」
「ああ、それはもちろんだが…何かリクエストが有るという事かな?」
「ご明察ですわ。
生まれてくる子が一生大切に使えるものをお願いしたいのです」
「…一生???」
「名前をお願いしたいのです」
「‥なッ!‥それは‥
そんな大切なこと…
…ルーメンは38才で初めて父になる…君だってそうだ!
二人で話し合って名前を決めるのがベストだと思う」
「二人で話し合ってお義父様にお願いしようとなったのです。
お願いいたします」
「いや、だが、」
「‥あ、そろそろ戻ります。
会議の時間ですので」
「いや私は‥」
〈カッ〉
「‥ああ、行ってしまった」
〈カッ〉
「ソルッ!」
「うわ!‥ルーメン!
またソル姫を追いかけているのか?
彼女ならつい今帰ったぞ」
ソルが消えた直ぐ後に必死過ぎる顔で現れた息子にテネブラエ公は呆れた声を上げる。
ソル姫を好き過ぎる気持ちは解るが、追いかけ過ぎだろうと。
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