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4 戦い

91 二人の関係

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(これは…近づくことすら出来ないな)


それが最初の印象――


帝国貴族学園入学式での事だった。

同じ新入生でありながら一人特別席に座る13才のクラールス・カードは次元の違う輝きを放っていた。


クラールス・カード。

5男とはいえさすがは皇帝の息子――上の4人と比べ出来が悪いと噂されているが、纏う空気は異次元の貫禄。

帝国の第5皇子が同級生と聞いてお近づきになれればと思っていたが帝国の属国の中でも小国のスート王国の王太子の自分など相手にされるわけがない――

早々に諦めかけたドゥルケ・スートだが、ふとこちらを見たクラールス・カードが驚きに目を見開き、刹那、哀し気に微笑したのを見て、『イケる』と確信した。

話してみると周りに気後れさせる外見とは真逆の繊細で孤独で自信のない少年。

神に祝福されし茶髪茶眼がコンプレックスの無知な貴人。

『実は自分も茶髪茶眼のせいで辛い目に』と話を合わせれば涙を流した第5皇子。


『操れる』


試してみればいとも簡単に術にかかった。

これは私の駒だ。


スート王国は狭く痩せた土地柄。

農産物の代わりに人材を育成して稼がせる。

男は傭兵として命で稼ぎ、女は性で稼いで国に尽くす。

子供の頃に術を掛ければ疑問に思う者はいない。

いたとして殺せばいい。

ドゥルケ・スートは幼少の頃から『神にも等しい存在』としてスート王国民に術を掛け、国に尽くすよう洗脳する。

幼少期から特別な教育を受けて成長した男たちの中には殺人に特化した者もいる。

それが殺人組織『マレフィクス』だ。

タイミングを見計らい父王にクラールス・カードの優秀なる4人の兄皇子と現皇帝の暗殺を命じる。

『マレフィクス』の優秀なるメンバーがカード帝国の4人の皇子と皇帝を暗殺した。

『自分には関係無い』と思っていた帝位が降りかかって来た事で不安の塊になるクラールス・カードに『私がいます…親友として、側近としていつでも陛下をお支え致します』と囁けば新皇帝は涙目で頷いた。

幼少期に強い術を掛けられたスート国民と違い、普通の人には術は段々効かなくなる。

『疑い』が芽生えれば術は一切効かなくなる。

ところが新皇帝には何度掛けてもキッチリ掛かる。

逆に強く掛かる様になっていく。


『愚帝が…』


心の中で嘲りながら忠実なる臣下の顔で主を操る。


こんな関係だったから、スート王がテネブラエ公を侮るのは仕方なかったのかもしれない。

テネブラエ公は自分に心酔しきっているから裏切られたと知っても怒る事無くただ黙って涙を流すのだろうと思っていたスート王。

彼は今、何が起きているのか理解出来ない。
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