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4 戦い
74 ソル VS. テネブラエ公 2
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「では続けます――
わたくしの同母兄はわたくしより4才年上…
――と言えば誰が父親かお判りかしら」
「‥ッ!?――な、
まさか――だが、時期的には――!?」
「お分かりになった様ね――それと記憶障害でも起こしている様ですからハッキリさせておきますわ。
母はジョーカー王との結婚の為に南方の国から北方のジョーカー王国へ向かっていました。
旅の途中、母の親友であられたカード皇后陛下のお誘いを受けてカード宮殿に。
その母とあろう事か当時のカード皇帝――お前が恋に落ちた――
つまりお前はジョーカー王の婚約者を。
母は親友の夫を奪った最低最悪のW不貞。
我が父ジョーカー王とカード皇后陛下は完全なる被害者です。
おぞましい履き違えは許しませんわ」
抑揚のない声で続けるソルにテネブラエ公は堪らず反論する。
「わ、私達は出会いが遅かっただけで――互いに運命の相手だったのだ!
互いに苦しみながらも真実の愛に真っ直ぐ突き進んだ――それを不貞だなどと俗な言葉で穢すのは許さん!」
「ほほ‥男は終わった恋を引きずるというのは本当ですのね…
ちなみにわたくしの母は恋愛至上主義――
恋をするのは息をするのと同じこと…
結婚前には南方の国に残して来た護衛騎士に
カード宮殿滞在中はカード皇帝――お前に
ジョーカー王国で兄を産み落とした1ヶ月後にはジョーカー王に
ジョーカー王に飽きられた後はジョーカー王の側近に
その後は近衛騎士に
『あなた様はわたくしの運命の人ですわ』と言ったと――母本人から聞きましたわ――数々の恋愛経験は母にとっては財産、自慢の種だったのです」
「ふごっ、何と忌々しい女よ…清純なアクワ姫の娘だとは到底信じられぬ――ありもしない嘘で自分の母親まで穢すとは!…地獄が口を開けてお前を待っているぞ!」
怒りのあまり鼻を鳴らしながら悪態をつくテネブラエ公。
『冷静に冷静に』と頭の中で繰り返しながらもワナワナと震えが止まらない。
「嘘をつく理由がどこにあって?――母はわたくしに『殿方を落とす方法』として自慢話を繰り返したのですわ――確か、まず『相手の色を褒める』のだと言ってましたね――何故か殿方は色に拘る人が多い…自分の色が自慢なら褒められればいい気分だろうし、でも大抵の男は自分の色に不満を持っていて、そこを褒めて認めてやれば確実に男は『イチコロ』だと母は繰り返しておりましたっけ…」
「‥ッッ‥」
息を呑み、言葉も出ないテネブラエ公。
テネブラエ公は正にそれで恋に落ちたのだ。
月白――僅かに青みがかった白い髪に所々美しい浅葱色のメッシュが混じる艶やかなストレートロングヘア。
蜂蜜色の美しい肌。
髪のメッシュと同じ色の美しい瞳に端正な顔立ちの妖精の様な美少女――
出会った時アクワ姫は16才――南方の小国の姫君は噂通りの美しい少女であったが――政略結婚し、妻というより親友の様な皇后も美しさに於いては引けを取らない。
そう、カード皇帝の周りは魅力的な美女で溢れていた。
アクワ姫がそれらの美女達と違ったのは、会う早々皇帝の髪と瞳の色を褒めた事だ。
平民にありがちな茶色の髪と瞳に物心ついた頃からずっと劣等感を抱いていた。
帝国の皇帝として相応しくないありふれた色に心を悩ませ続けて来た。
それをアクワ姫は穢れの無い瞳をキラキラ輝かせながら絶賛してくれたのだ。
『これ程にあたたかな、お優しい色は初めて――その瞳に見つめられるだけでわたくしは蕩けてしまいそうですわ』
その心震わせる言葉が終わらない内に二人は唇を合わせ、体を重ねた。
南方の姫君の熱い体に狂いながらふと湧いた疑問をその時はスルーした。
あの時気付かないフリをした事実が今頃テネブラエ公を捉える。
(そういえば――アクワ姫は『初めて』ではなかった――)
わたくしの同母兄はわたくしより4才年上…
――と言えば誰が父親かお判りかしら」
「‥ッ!?――な、
まさか――だが、時期的には――!?」
「お分かりになった様ね――それと記憶障害でも起こしている様ですからハッキリさせておきますわ。
母はジョーカー王との結婚の為に南方の国から北方のジョーカー王国へ向かっていました。
旅の途中、母の親友であられたカード皇后陛下のお誘いを受けてカード宮殿に。
その母とあろう事か当時のカード皇帝――お前が恋に落ちた――
つまりお前はジョーカー王の婚約者を。
母は親友の夫を奪った最低最悪のW不貞。
我が父ジョーカー王とカード皇后陛下は完全なる被害者です。
おぞましい履き違えは許しませんわ」
抑揚のない声で続けるソルにテネブラエ公は堪らず反論する。
「わ、私達は出会いが遅かっただけで――互いに運命の相手だったのだ!
互いに苦しみながらも真実の愛に真っ直ぐ突き進んだ――それを不貞だなどと俗な言葉で穢すのは許さん!」
「ほほ‥男は終わった恋を引きずるというのは本当ですのね…
ちなみにわたくしの母は恋愛至上主義――
恋をするのは息をするのと同じこと…
結婚前には南方の国に残して来た護衛騎士に
カード宮殿滞在中はカード皇帝――お前に
ジョーカー王国で兄を産み落とした1ヶ月後にはジョーカー王に
ジョーカー王に飽きられた後はジョーカー王の側近に
その後は近衛騎士に
『あなた様はわたくしの運命の人ですわ』と言ったと――母本人から聞きましたわ――数々の恋愛経験は母にとっては財産、自慢の種だったのです」
「ふごっ、何と忌々しい女よ…清純なアクワ姫の娘だとは到底信じられぬ――ありもしない嘘で自分の母親まで穢すとは!…地獄が口を開けてお前を待っているぞ!」
怒りのあまり鼻を鳴らしながら悪態をつくテネブラエ公。
『冷静に冷静に』と頭の中で繰り返しながらもワナワナと震えが止まらない。
「嘘をつく理由がどこにあって?――母はわたくしに『殿方を落とす方法』として自慢話を繰り返したのですわ――確か、まず『相手の色を褒める』のだと言ってましたね――何故か殿方は色に拘る人が多い…自分の色が自慢なら褒められればいい気分だろうし、でも大抵の男は自分の色に不満を持っていて、そこを褒めて認めてやれば確実に男は『イチコロ』だと母は繰り返しておりましたっけ…」
「‥ッッ‥」
息を呑み、言葉も出ないテネブラエ公。
テネブラエ公は正にそれで恋に落ちたのだ。
月白――僅かに青みがかった白い髪に所々美しい浅葱色のメッシュが混じる艶やかなストレートロングヘア。
蜂蜜色の美しい肌。
髪のメッシュと同じ色の美しい瞳に端正な顔立ちの妖精の様な美少女――
出会った時アクワ姫は16才――南方の小国の姫君は噂通りの美しい少女であったが――政略結婚し、妻というより親友の様な皇后も美しさに於いては引けを取らない。
そう、カード皇帝の周りは魅力的な美女で溢れていた。
アクワ姫がそれらの美女達と違ったのは、会う早々皇帝の髪と瞳の色を褒めた事だ。
平民にありがちな茶色の髪と瞳に物心ついた頃からずっと劣等感を抱いていた。
帝国の皇帝として相応しくないありふれた色に心を悩ませ続けて来た。
それをアクワ姫は穢れの無い瞳をキラキラ輝かせながら絶賛してくれたのだ。
『これ程にあたたかな、お優しい色は初めて――その瞳に見つめられるだけでわたくしは蕩けてしまいそうですわ』
その心震わせる言葉が終わらない内に二人は唇を合わせ、体を重ねた。
南方の姫君の熱い体に狂いながらふと湧いた疑問をその時はスルーした。
あの時気付かないフリをした事実が今頃テネブラエ公を捉える。
(そういえば――アクワ姫は『初めて』ではなかった――)
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