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4 戦い
71 秘密の地下宮殿で
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本宮殿の最上階から秘密の通路を通っていつの間にか地下へ――最初細かった通路は地下深くに入ったと思われる辺りから広く開けていく。
「‥ハッここに男が――死んでいます!」
「ここにも――やはり死んでいます!」
「ここにもです!」
地下通路のあちこちに敵兵と思われる人相の悪い男達が倒れている。
どれも息をしていない。
――これは一体どういう事だ?
皇帝は手に汗握り出来るだけ急ぎながら、頭の中も忙しく分析している。
敵兵が死んでいるという事は――楽観は出来ないがソル姫は無事――そうとも、無事だ!無事に決まっている!――もしや敵兵の中に味方が潜んでいて、ソル姫を助けてくれているのだろうか――いや、ならばソル姫を拉致する事はないだろう――ソル姫は拉致されている――だが敵兵も倒されている――ああもう考えても分からない!――とにかく、一刻も早くソル姫を取り戻すのだ!!
秘密の地下通路を飛ぶように駆け、行き止まりに辿り着く。
――と、岩の一部から光が漏れているのを発見し、色々試したあげくやはりスライド式で、客室の暖炉同様に大岩が意外なほど簡単に動き――
「‥なッ‥‥これは」
大理石の階段を30段ほど下りると別世界の様な豪奢な空間が広がっている。
太い柱に滑らかな床――全て大理石で出来ており、階段から続く通路の左右は見事な彫刻の噴水を据えた池になっており、澄んだ水には本物なのか造花なのか分からないが色とりどりの花が浮かんでいる。
柱に据えられた数え切れないほどたくさんのランプには柔らかな明かりが灯り、空間を幻想的に照らしている――
「これが、『地下宮殿』…」
「何と美しい――地下にこれほど見事な宮殿があったなんて――あ、陛下‥」
側近達と近衛騎士達は『地下宮殿』に目を瞠るが皇帝は脇目もふらず駆け続ける。
皇帝にとって『地下宮殿』の美しさなどどうでもいい。
それよりもソルだ!
ソルの無事を確かめるまでは他の事は全てが無なのだ。
通路を一気に駆け抜け大きな扉に行き着く。
扉の前にはやはり5~6人の男が倒れている。
調べる迄も無くこと切れているのが分かる。
「‥ソル姫ッ!」
皇帝の心臓がドクンと跳ねる。
何故か分かる――
大扉の向こうにソルがいる!
実際、大扉の向こうの広い空間にソルはいた。
拘束はされておらず、壁の前に立ち、壁に飾られた沢山の肖像画の1枚を見ている――が…
ソルの後ろからテネブラエ公が足音を忍ばせソロリソロリと近付いている。
その手には大剣が握られている。
ソルは1枚の肖像画をじっと見つめている。
涙で潤んだ瞳は肖像画から目を離せない様だ。
ついにテネブラエ公はソルの真後ろに迫り、空気を揺らさぬ様に慎重に大剣を上段に構えて――
皇帝が重厚な大扉を思いきり押し開くのと
テネブラエ公がソルの頭上に大剣を振り下ろしたのは
全く同時であった――
「‥ハッここに男が――死んでいます!」
「ここにも――やはり死んでいます!」
「ここにもです!」
地下通路のあちこちに敵兵と思われる人相の悪い男達が倒れている。
どれも息をしていない。
――これは一体どういう事だ?
皇帝は手に汗握り出来るだけ急ぎながら、頭の中も忙しく分析している。
敵兵が死んでいるという事は――楽観は出来ないがソル姫は無事――そうとも、無事だ!無事に決まっている!――もしや敵兵の中に味方が潜んでいて、ソル姫を助けてくれているのだろうか――いや、ならばソル姫を拉致する事はないだろう――ソル姫は拉致されている――だが敵兵も倒されている――ああもう考えても分からない!――とにかく、一刻も早くソル姫を取り戻すのだ!!
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――と、岩の一部から光が漏れているのを発見し、色々試したあげくやはりスライド式で、客室の暖炉同様に大岩が意外なほど簡単に動き――
「‥なッ‥‥これは」
大理石の階段を30段ほど下りると別世界の様な豪奢な空間が広がっている。
太い柱に滑らかな床――全て大理石で出来ており、階段から続く通路の左右は見事な彫刻の噴水を据えた池になっており、澄んだ水には本物なのか造花なのか分からないが色とりどりの花が浮かんでいる。
柱に据えられた数え切れないほどたくさんのランプには柔らかな明かりが灯り、空間を幻想的に照らしている――
「これが、『地下宮殿』…」
「何と美しい――地下にこれほど見事な宮殿があったなんて――あ、陛下‥」
側近達と近衛騎士達は『地下宮殿』に目を瞠るが皇帝は脇目もふらず駆け続ける。
皇帝にとって『地下宮殿』の美しさなどどうでもいい。
それよりもソルだ!
ソルの無事を確かめるまでは他の事は全てが無なのだ。
通路を一気に駆け抜け大きな扉に行き着く。
扉の前にはやはり5~6人の男が倒れている。
調べる迄も無くこと切れているのが分かる。
「‥ソル姫ッ!」
皇帝の心臓がドクンと跳ねる。
何故か分かる――
大扉の向こうにソルがいる!
実際、大扉の向こうの広い空間にソルはいた。
拘束はされておらず、壁の前に立ち、壁に飾られた沢山の肖像画の1枚を見ている――が…
ソルの後ろからテネブラエ公が足音を忍ばせソロリソロリと近付いている。
その手には大剣が握られている。
ソルは1枚の肖像画をじっと見つめている。
涙で潤んだ瞳は肖像画から目を離せない様だ。
ついにテネブラエ公はソルの真後ろに迫り、空気を揺らさぬ様に慎重に大剣を上段に構えて――
皇帝が重厚な大扉を思いきり押し開くのと
テネブラエ公がソルの頭上に大剣を振り下ろしたのは
全く同時であった――
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