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4 戦い
70 客室の惨状、そしてソルがいない
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闘志漲る皇帝一行。
ソルの客室前になだれ込んで来た一行に客室を守る女性騎士達が目を丸くする。
「‥あ、ご就寝中‥」
ダダダンッ
「ソル姫!俺だ!失礼するぞ!」
ワタワタする女性騎士達を無視し、皇帝が扉をノックし、開ける。
――が――
「‥なッ!?」
「これは‥!?」
扉を開けたと同時に鼻を衝く血の匂い――
真っ暗な部屋に側近がランプを掲げればそこここに侍女達が転がっている。
「死んでいる――若い!?‥この者達は本宮殿の侍女達ではありません!――手に手に武器を持っている――刺客か!?」
「なッ‥コイツは男だぞ!‥侍女に化けた男が紛れ込んでいるぞ!」
「な‥ハッ!‥コイツも男だ!‥全員、侍女に化けた男の刺客だったんだ!」
転がる侍女達に駆け寄った近衛騎士が口々に声を上げる。
「ぅわッ…!ここに本当の侍女達が折り重なって!‥全員死んでいます!――全員下着姿…侍女服を奪われています!」
クローゼットの扉の隙間から血だらけの手が出ているのを発見した近衛騎士もクローゼットの中を確認し報告する。
「ッ‥これはッ!」
部屋の入り口付近に落ちていたソルのマントとドレスの一部――スカート部分と思われるものを手にした皇帝が続きの寝室に駆け込む。
「ソル姫!‥ソル!」
必死に呼ぶ皇帝の声は無人の部屋に虚しく響き、カーテンの隙間から射し込む月光が暖炉を射している。
「‥クソッ‥遅かった!――ソル姫が拉致された!――ああ、俺は二度までも彼女を攫われてしまった――暖炉がズレている…?――そうか!地図にはそこまで示されていなかったが、この暖炉が『秘密の地下宮殿』への入り口なのだな!?」
「陛下!本物の侍女と侍女に化けた刺客、全員死んでいます!――扉を守っていた女性騎士達は何も知らないと言っています!」
「お、王女殿下が部屋に入られた後に侍女達が続き、最後の侍女が扉を閉めた後は何の物音も、争っている様子も感じられませんでした――誰も訪ねて来てもいません!――あ、でも、扉が閉まる前、部屋が薄暗かったので不思議に思ったのですが、もう就寝されるからかと――あの時調べていればッ…!」
蒼白で震えながら報告する女性騎士長に皇帝は命を出す。
「騎士団総長に伝えよ!‥一刻を争う為、俺達は今から拉致されたソル姫を追って『秘密の地下宮殿』へ向かう!――騎士団は精鋭部隊を編成し後に続け!――敵は前皇帝テネブラエ公――兵の数は不明――今のところ『秘密の地下宮殿』への道はこの暖炉から続く地下通路だけだ――以上、分かったな?」
「‥はッははいい!」
皇帝が暖炉を少し調べたあと左に押すと意外なほどスムーズに暖炉がスライドし、人一人が通れるほどの穴が出現する。
「行くぞ!」
皇帝が勢いよく入って行き、側近達、近衛騎士達が慌ててランプを掲げ『ははっ!』と続く。
ソルの客室前になだれ込んで来た一行に客室を守る女性騎士達が目を丸くする。
「‥あ、ご就寝中‥」
ダダダンッ
「ソル姫!俺だ!失礼するぞ!」
ワタワタする女性騎士達を無視し、皇帝が扉をノックし、開ける。
――が――
「‥なッ!?」
「これは‥!?」
扉を開けたと同時に鼻を衝く血の匂い――
真っ暗な部屋に側近がランプを掲げればそこここに侍女達が転がっている。
「死んでいる――若い!?‥この者達は本宮殿の侍女達ではありません!――手に手に武器を持っている――刺客か!?」
「なッ‥コイツは男だぞ!‥侍女に化けた男が紛れ込んでいるぞ!」
「な‥ハッ!‥コイツも男だ!‥全員、侍女に化けた男の刺客だったんだ!」
転がる侍女達に駆け寄った近衛騎士が口々に声を上げる。
「ぅわッ…!ここに本当の侍女達が折り重なって!‥全員死んでいます!――全員下着姿…侍女服を奪われています!」
クローゼットの扉の隙間から血だらけの手が出ているのを発見した近衛騎士もクローゼットの中を確認し報告する。
「ッ‥これはッ!」
部屋の入り口付近に落ちていたソルのマントとドレスの一部――スカート部分と思われるものを手にした皇帝が続きの寝室に駆け込む。
「ソル姫!‥ソル!」
必死に呼ぶ皇帝の声は無人の部屋に虚しく響き、カーテンの隙間から射し込む月光が暖炉を射している。
「‥クソッ‥遅かった!――ソル姫が拉致された!――ああ、俺は二度までも彼女を攫われてしまった――暖炉がズレている…?――そうか!地図にはそこまで示されていなかったが、この暖炉が『秘密の地下宮殿』への入り口なのだな!?」
「陛下!本物の侍女と侍女に化けた刺客、全員死んでいます!――扉を守っていた女性騎士達は何も知らないと言っています!」
「お、王女殿下が部屋に入られた後に侍女達が続き、最後の侍女が扉を閉めた後は何の物音も、争っている様子も感じられませんでした――誰も訪ねて来てもいません!――あ、でも、扉が閉まる前、部屋が薄暗かったので不思議に思ったのですが、もう就寝されるからかと――あの時調べていればッ…!」
蒼白で震えながら報告する女性騎士長に皇帝は命を出す。
「騎士団総長に伝えよ!‥一刻を争う為、俺達は今から拉致されたソル姫を追って『秘密の地下宮殿』へ向かう!――騎士団は精鋭部隊を編成し後に続け!――敵は前皇帝テネブラエ公――兵の数は不明――今のところ『秘密の地下宮殿』への道はこの暖炉から続く地下通路だけだ――以上、分かったな?」
「‥はッははいい!」
皇帝が暖炉を少し調べたあと左に押すと意外なほどスムーズに暖炉がスライドし、人一人が通れるほどの穴が出現する。
「行くぞ!」
皇帝が勢いよく入って行き、側近達、近衛騎士達が慌ててランプを掲げ『ははっ!』と続く。
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