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4 戦い
69 おやすみの挨拶は実は
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側近達と近衛騎士達からブワリと闘志が溢れ出る!
あの、悪政に悪政を重ねた痴れ者前皇帝か!
12年前、我が主ルーメン・ルーナエ賢帝陛下に、悪政の数々、更に北の大国ジョーカー王国崩壊後に貴族たちが独立を宣言して形成していた連邦国に理由なき戦争――いや、『前ジョーカー王の血縁者を捜し出し殺す為』と堂々と恥ずかし気も無くほざいていた――つまり全くの私怨で戦争を仕掛けようとしていたのを断罪され、帝位を追われた狂人暴君めか!
息子であり帝位を継がれたルーナエ賢帝陛下の温情でテネブラエ公の名を拝し、カード帝国直轄地の北の離宮に蟄居していたはずだが――
さては我が主、ルーナエ賢帝陛下に謀反を企むか!?
ルーナエ陛下が帝政を立て直す為にどれ程苦労されたと思っているのだ!
――あ、いや、サクサクとやっておられたがそれはルーナエ陛下だからこそ!
ご自分が潰し掛けた帝国を異次元の能力で復活させられたルーナエ陛下に仇なす不心得者が!
大人しく蟄居していればいいものを!
許さんッ!
側近達と近衛騎士達からユラユラと滾る闘志が立ち昇るッ!
「陛下、テネブラエ公の目的は――」
「ソル姫の命と皇帝の座だ」
許さぁ~~~んッ!!
あの女神の様な――いや、女神そのものの麗しく尊いジョーカー王女殿下の御命と世界最高の指導者、後にも先にも並ぶ者のいない賢帝の中の賢帝ルーナエ賢帝陛下の玉座を奪おうとは、狂人でも望めぬこと!
「彼の御方は既に亡くなられたのですね」
「…もはや悪魔に変化したのでしょう」
「もう人ではない――陛下、急ぎましょう!」
「一刻も早くジョーカー王女殿下を安心させてあげましょう!」
一気に士気の上がった側近達と近衛騎士達。
頼もしく思いながら月光城を後にし、本宮殿へと走る道すがら、側近の一人が質問する。
「‥ハァ、ハァ、ですが陛下、謀反の情報をいつ入手されたので?」
側近達と近衛騎士達にとって皇帝の行動は突然過ぎて、誰も知らない情報をいつ、どうやって手にしたのだろうとは皆が不思議に思うところ。
「ついさっきソル姫からもたらされた」
「えぇぇッ!?」
「彼女は昔から不穏を感知する能力が高かった――客室の前で俺が気付かなかった何かに気付いたのだろう――暗号会話で伝えて来た」
何と!
あの時――
「『おやすみ』の挨拶を頂いてませんわ」
そう言って皇帝にキスをしたソル。
その時の一連の会話は実は暗号会話だったのだ。
愛し合う者同士のラブラブトークに聞こえた本当の内容はこうだった――
「まぁ素敵…月が見えますのね【暗号会話で】」
皇帝の銀眼が僅かに揺れ、ソルは『了解』の意と取る。
「子供の頃、月光のもと宝探しをしましたね…わたくしが隠してルー様が探す…覚えていて?【30年前『月光の間』に『秘密の地下宮殿』への地図を隠しました】」
「ああ、覚えている…俺はいつも見つけられなかった【あの二人の逢瀬の場か】」
「今なら見つけられますわ【これが鍵です】」
そしてキス――というよりソルが口移しで鍵を皇帝に渡した。
「あの…失礼致しました…『おやすみのキス』なんて初めてで勝手が分からず…お気を悪くされてなければ良いのですが【わたくしが客室に入ったら直ぐに地図を見つけて秘密の地下宮殿へ向かって下さい】」
「‥ん‥」(了解)
「お送り下さいましてありがとうございます【武装し精鋭騎士を供に連れて】
「‥ん‥」(了解)
「では、失礼致します…おやすみなさいませ【そこにテネブラエ公がいるはずです】」
これを受けて、皇帝は月光城へ猛ダッシュしたのである。
あの、悪政に悪政を重ねた痴れ者前皇帝か!
12年前、我が主ルーメン・ルーナエ賢帝陛下に、悪政の数々、更に北の大国ジョーカー王国崩壊後に貴族たちが独立を宣言して形成していた連邦国に理由なき戦争――いや、『前ジョーカー王の血縁者を捜し出し殺す為』と堂々と恥ずかし気も無くほざいていた――つまり全くの私怨で戦争を仕掛けようとしていたのを断罪され、帝位を追われた狂人暴君めか!
息子であり帝位を継がれたルーナエ賢帝陛下の温情でテネブラエ公の名を拝し、カード帝国直轄地の北の離宮に蟄居していたはずだが――
さては我が主、ルーナエ賢帝陛下に謀反を企むか!?
ルーナエ陛下が帝政を立て直す為にどれ程苦労されたと思っているのだ!
――あ、いや、サクサクとやっておられたがそれはルーナエ陛下だからこそ!
ご自分が潰し掛けた帝国を異次元の能力で復活させられたルーナエ陛下に仇なす不心得者が!
大人しく蟄居していればいいものを!
許さんッ!
側近達と近衛騎士達からユラユラと滾る闘志が立ち昇るッ!
「陛下、テネブラエ公の目的は――」
「ソル姫の命と皇帝の座だ」
許さぁ~~~んッ!!
あの女神の様な――いや、女神そのものの麗しく尊いジョーカー王女殿下の御命と世界最高の指導者、後にも先にも並ぶ者のいない賢帝の中の賢帝ルーナエ賢帝陛下の玉座を奪おうとは、狂人でも望めぬこと!
「彼の御方は既に亡くなられたのですね」
「…もはや悪魔に変化したのでしょう」
「もう人ではない――陛下、急ぎましょう!」
「一刻も早くジョーカー王女殿下を安心させてあげましょう!」
一気に士気の上がった側近達と近衛騎士達。
頼もしく思いながら月光城を後にし、本宮殿へと走る道すがら、側近の一人が質問する。
「‥ハァ、ハァ、ですが陛下、謀反の情報をいつ入手されたので?」
側近達と近衛騎士達にとって皇帝の行動は突然過ぎて、誰も知らない情報をいつ、どうやって手にしたのだろうとは皆が不思議に思うところ。
「ついさっきソル姫からもたらされた」
「えぇぇッ!?」
「彼女は昔から不穏を感知する能力が高かった――客室の前で俺が気付かなかった何かに気付いたのだろう――暗号会話で伝えて来た」
何と!
あの時――
「『おやすみ』の挨拶を頂いてませんわ」
そう言って皇帝にキスをしたソル。
その時の一連の会話は実は暗号会話だったのだ。
愛し合う者同士のラブラブトークに聞こえた本当の内容はこうだった――
「まぁ素敵…月が見えますのね【暗号会話で】」
皇帝の銀眼が僅かに揺れ、ソルは『了解』の意と取る。
「子供の頃、月光のもと宝探しをしましたね…わたくしが隠してルー様が探す…覚えていて?【30年前『月光の間』に『秘密の地下宮殿』への地図を隠しました】」
「ああ、覚えている…俺はいつも見つけられなかった【あの二人の逢瀬の場か】」
「今なら見つけられますわ【これが鍵です】」
そしてキス――というよりソルが口移しで鍵を皇帝に渡した。
「あの…失礼致しました…『おやすみのキス』なんて初めてで勝手が分からず…お気を悪くされてなければ良いのですが【わたくしが客室に入ったら直ぐに地図を見つけて秘密の地下宮殿へ向かって下さい】」
「‥ん‥」(了解)
「お送り下さいましてありがとうございます【武装し精鋭騎士を供に連れて】
「‥ん‥」(了解)
「では、失礼致します…おやすみなさいませ【そこにテネブラエ公がいるはずです】」
これを受けて、皇帝は月光城へ猛ダッシュしたのである。
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