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4 戦い
68 敵は秘密の地下宮殿にあり?
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月光城へ到着した皇帝たち。
皇帝は近衛騎士達をエントランス・ホールに残し、側近を連れてソルに教わった秘密の通路を通り鬼気迫る速さで『月光の間』へ到達する。
選び抜かれた側近達は超優秀ではあるが、それでも皇帝の尋常でない速さには追いつけず、彼等がようやっと『月光の間』へ着くと皇帝は壁を入念に調べている。
「はぁ、ひぃ、ひぇいは、ひゃひほ‥」
側近の一人が皇帝を手伝おうと行動の目的を尋ねようとするが、息が切れてまともに話す事が出来ない。
「‥あった!」
皇帝が何かを発見したらしい――
ヘロヘロの側近達が壁をさする様にしている皇帝を覗き込む。
「ひゃにぎゃ‥し、しちゅれいいたました‥はぁ、こほっ、な、何が‥」
「鍵穴だ」
「ひゃ‥かぎあにゃ」
「ひょんにゃとこに」
いつまでも滑舌が復活しない残念な男達を無視し皇帝は口の中から鍵を取り出す。
「にゃ‥な、何故、鍵が口の中に!?」
「さっき、ソル姫に渡された」
「さっき!?‥はっ」
側近達は気付く。
さっきの熱い『おやすみのキス』…あの時か!
「‥でも、何故ずっと口の中に?‥飲み込んでしまったり落としてしまうリスクが高いのに‥」
「余韻を‥」
「エ」
「ゴホ‥何でもない!
よし、開いた」
皇帝が壁の、よく見ないと――いや、よく見ても鍵穴だとは分かりずらい場所にキーを差し込み、カチャリと回すと、壁の一部が小さなドアの様になっていて、右端を押すと小さなドアがクルリと回転して壁の奥のスペースを覗き込める。
皇帝は中にあった巻物状の紙を取り出しクルクルと開きながら読み進めていく。
暗号なのか何なのか覗き込む側近達には判読出来ないが、皇帝は『カード宮殿はこうなっていたのか』だの『凄いな…これを8才の頃の僅かな滞在中に見つけ出し図面に起こしていたとは』だの言いながら読み進め、目的の個所に辿り着いた様で。
「‥戻るぞ!」
「え!?‥どこへ」
「ソル姫が居る客室」
「夜這いですかッ?」
「ち‥違う!
『秘密の地下宮殿』への入り口がそこにあるんだ!」
「ひみつの‥あっ陛下‥速!」
頬を染めながら勢いよく駆け出した皇帝の後を必死に追う側近達。
理由も目的も分からないまま長距離走&長い階段の上り下りでヘトヘトの側近達を月光城のエントランス・ホールで息切れ一つしていない皇帝と緊張の面持ちの近衛騎士達が待ち受ける。
「も、もうひわへあひあへん‥」
「時間が無いので手短に説明する」
自分達の足がガクガクなせいで皇帝を待たせてしまった事を謝罪する側近達を手で制し、皇帝は説明する。
「これから『秘密の地下宮殿』へ行き敵と対峙する――敵の人数は不明だが闘う事になると覚悟してくれ――武装する必要がある――が、秘密の通路を通って行くので身軽である必要もある――近衛騎士はそのままでいいだろうが、側近の2人は本宮殿に戻った時点で軽く武装し最上階のソル姫の客室へ来るように」
「ひょれなら、帯剣しておりますのでこのままで」
「はい、『月光の間』への『秘密の近道』も狭い所などは通るのに苦労しました。
武装により身重になるとその場で闘いになった場合に不利となりましょう」
「分かった‥だが、強化布の胴着ぐらいは着けろ」
「「はっ」」
「何か質問は?」
「はい、『敵』とは一体何者なのでしょうか?‥わざわざ陛下が出向かれる必要があるのでしょうか?」
「そうです!
我々だけで参りますので、陛下には安全な場所でお待ち頂いて‥」
「俺が行き俺が仕留めるのが一番安全だ。
敵は剣豪――年老いても腕はまだ鈍っていないだろうからな…
この国で互角に闘えるのは俺ぐらいだろう。
俺は奴の相手で手一杯になるだろうから、お前達は奴の取り巻きの兵達を片付けて欲しい」
「‥なッ‥剣豪とは‥互角に闘えるのが陛下だけとは‥まさか、『敵』とは‥」
蒼白になる側近達と近衛騎士達。
皇帝は静かな眼で彼等と眼を合わせ頷く。
「前皇帝テネブラエ公
――俺の父だ」
皇帝は近衛騎士達をエントランス・ホールに残し、側近を連れてソルに教わった秘密の通路を通り鬼気迫る速さで『月光の間』へ到達する。
選び抜かれた側近達は超優秀ではあるが、それでも皇帝の尋常でない速さには追いつけず、彼等がようやっと『月光の間』へ着くと皇帝は壁を入念に調べている。
「はぁ、ひぃ、ひぇいは、ひゃひほ‥」
側近の一人が皇帝を手伝おうと行動の目的を尋ねようとするが、息が切れてまともに話す事が出来ない。
「‥あった!」
皇帝が何かを発見したらしい――
ヘロヘロの側近達が壁をさする様にしている皇帝を覗き込む。
「ひゃにぎゃ‥し、しちゅれいいたました‥はぁ、こほっ、な、何が‥」
「鍵穴だ」
「ひゃ‥かぎあにゃ」
「ひょんにゃとこに」
いつまでも滑舌が復活しない残念な男達を無視し皇帝は口の中から鍵を取り出す。
「にゃ‥な、何故、鍵が口の中に!?」
「さっき、ソル姫に渡された」
「さっき!?‥はっ」
側近達は気付く。
さっきの熱い『おやすみのキス』…あの時か!
「‥でも、何故ずっと口の中に?‥飲み込んでしまったり落としてしまうリスクが高いのに‥」
「余韻を‥」
「エ」
「ゴホ‥何でもない!
よし、開いた」
皇帝が壁の、よく見ないと――いや、よく見ても鍵穴だとは分かりずらい場所にキーを差し込み、カチャリと回すと、壁の一部が小さなドアの様になっていて、右端を押すと小さなドアがクルリと回転して壁の奥のスペースを覗き込める。
皇帝は中にあった巻物状の紙を取り出しクルクルと開きながら読み進めていく。
暗号なのか何なのか覗き込む側近達には判読出来ないが、皇帝は『カード宮殿はこうなっていたのか』だの『凄いな…これを8才の頃の僅かな滞在中に見つけ出し図面に起こしていたとは』だの言いながら読み進め、目的の個所に辿り着いた様で。
「‥戻るぞ!」
「え!?‥どこへ」
「ソル姫が居る客室」
「夜這いですかッ?」
「ち‥違う!
『秘密の地下宮殿』への入り口がそこにあるんだ!」
「ひみつの‥あっ陛下‥速!」
頬を染めながら勢いよく駆け出した皇帝の後を必死に追う側近達。
理由も目的も分からないまま長距離走&長い階段の上り下りでヘトヘトの側近達を月光城のエントランス・ホールで息切れ一つしていない皇帝と緊張の面持ちの近衛騎士達が待ち受ける。
「も、もうひわへあひあへん‥」
「時間が無いので手短に説明する」
自分達の足がガクガクなせいで皇帝を待たせてしまった事を謝罪する側近達を手で制し、皇帝は説明する。
「これから『秘密の地下宮殿』へ行き敵と対峙する――敵の人数は不明だが闘う事になると覚悟してくれ――武装する必要がある――が、秘密の通路を通って行くので身軽である必要もある――近衛騎士はそのままでいいだろうが、側近の2人は本宮殿に戻った時点で軽く武装し最上階のソル姫の客室へ来るように」
「ひょれなら、帯剣しておりますのでこのままで」
「はい、『月光の間』への『秘密の近道』も狭い所などは通るのに苦労しました。
武装により身重になるとその場で闘いになった場合に不利となりましょう」
「分かった‥だが、強化布の胴着ぐらいは着けろ」
「「はっ」」
「何か質問は?」
「はい、『敵』とは一体何者なのでしょうか?‥わざわざ陛下が出向かれる必要があるのでしょうか?」
「そうです!
我々だけで参りますので、陛下には安全な場所でお待ち頂いて‥」
「俺が行き俺が仕留めるのが一番安全だ。
敵は剣豪――年老いても腕はまだ鈍っていないだろうからな…
この国で互角に闘えるのは俺ぐらいだろう。
俺は奴の相手で手一杯になるだろうから、お前達は奴の取り巻きの兵達を片付けて欲しい」
「‥なッ‥剣豪とは‥互角に闘えるのが陛下だけとは‥まさか、『敵』とは‥」
蒼白になる側近達と近衛騎士達。
皇帝は静かな眼で彼等と眼を合わせ頷く。
「前皇帝テネブラエ公
――俺の父だ」
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