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2 四花繚乱
33 ハート公女ペルシクム 3
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帝国宮殿内の広大な庭園の一角から声を掛けて来た女性は、確か――
「ダイヤ公女殿下の侍女ね。
宜しくてよ。
顔をお上げなさい」
ダイヤ公女と親友の様に楽しそうに話していた侍女――
ペルシクムの心にはどうしようもない羨望が揺れている。
どうしてわたくしは彼女達の様な関係が築けないのかしら…
わたくしに問題があるのかしら…
ペルシクムの天色(美しい濃水色)の瞳が暗く翳る。
「ありがとうございます!
私の様な者を知って頂いているなんて感激ですわ!
仰る通り、私はダイヤ公女殿下の専属侍女のアセビと申します」
「わたくしに何か用?」
「あの、実は嬉しくて――だってハート公女殿下は私達と同じ様に美味しそうにお菓子をお食べになっていて…こんな言い方不敬かもしれませんけど、親しみを感じてしまって嬉しくて!」
「‥あ、あら、別に不敬だなんて思わないけど…
ダイヤ公女だってお菓子ぐらい食べるでしょう?」
「それが――ダリア様は甘い物がお好きではないのです」
「えッ!?
甘い物が好きではない!?」
ペルシクムは素で驚いてしまう。
お菓子を好きではない女子が居るだなんて!?
「ええ、ですから私、高貴な御方と私達は違うのだな、と思っていたんです。
ですが今日、美味しそうにお菓子を頬張るハート公女殿下を拝見してビックリするのと同時に私達と同じだ~~!って…よく分からないけど何だかすごーく嬉しかったんです!…って…申し訳ございません、私興奮しちゃって変な事を‥」
「別に…別に気にしないでいいわよ…ふふっ」
「ハート公女殿下…
うふふふっ」
「イヤぁね、恥ずかしいわ…夢中でお菓子を食べている所を見られていたなんて。
だって帝国のお菓子ってとっても美味しいんですもの」
「はい!本当に美味しいですよね!
それに見た目もすごく綺麗で可愛くて」
「そうなの!
動物をかたどったものなんて何だか可哀想で勿体なくて食べられない、なんて思うのだけど…」
「でも我慢出来ずに食べてしまうんですよね~~!」
「そうそう!ふふっ」
「うふふふふっ
――あ、そうそう、それでコレなんですけど」
そう言いながらアセビは手に持っていた小さな包みの包装を外す。
包みの中は小瓶で、瓶の中には色とりどりのキャンディーが入っている。
「まぁ綺麗…可愛い」
目を輝かせるペルシクムに、アセビはニヤリと口角を上げる。
「ダイヤ公女殿下の侍女ね。
宜しくてよ。
顔をお上げなさい」
ダイヤ公女と親友の様に楽しそうに話していた侍女――
ペルシクムの心にはどうしようもない羨望が揺れている。
どうしてわたくしは彼女達の様な関係が築けないのかしら…
わたくしに問題があるのかしら…
ペルシクムの天色(美しい濃水色)の瞳が暗く翳る。
「ありがとうございます!
私の様な者を知って頂いているなんて感激ですわ!
仰る通り、私はダイヤ公女殿下の専属侍女のアセビと申します」
「わたくしに何か用?」
「あの、実は嬉しくて――だってハート公女殿下は私達と同じ様に美味しそうにお菓子をお食べになっていて…こんな言い方不敬かもしれませんけど、親しみを感じてしまって嬉しくて!」
「‥あ、あら、別に不敬だなんて思わないけど…
ダイヤ公女だってお菓子ぐらい食べるでしょう?」
「それが――ダリア様は甘い物がお好きではないのです」
「えッ!?
甘い物が好きではない!?」
ペルシクムは素で驚いてしまう。
お菓子を好きではない女子が居るだなんて!?
「ええ、ですから私、高貴な御方と私達は違うのだな、と思っていたんです。
ですが今日、美味しそうにお菓子を頬張るハート公女殿下を拝見してビックリするのと同時に私達と同じだ~~!って…よく分からないけど何だかすごーく嬉しかったんです!…って…申し訳ございません、私興奮しちゃって変な事を‥」
「別に…別に気にしないでいいわよ…ふふっ」
「ハート公女殿下…
うふふふっ」
「イヤぁね、恥ずかしいわ…夢中でお菓子を食べている所を見られていたなんて。
だって帝国のお菓子ってとっても美味しいんですもの」
「はい!本当に美味しいですよね!
それに見た目もすごく綺麗で可愛くて」
「そうなの!
動物をかたどったものなんて何だか可哀想で勿体なくて食べられない、なんて思うのだけど…」
「でも我慢出来ずに食べてしまうんですよね~~!」
「そうそう!ふふっ」
「うふふふふっ
――あ、そうそう、それでコレなんですけど」
そう言いながらアセビは手に持っていた小さな包みの包装を外す。
包みの中は小瓶で、瓶の中には色とりどりのキャンディーが入っている。
「まぁ綺麗…可愛い」
目を輝かせるペルシクムに、アセビはニヤリと口角を上げる。
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