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2 四花繚乱
21 スペード公女カリステプス 2
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頭ン中で鳴るこの音は何かしら?
銅鑼…!?
とにかくもう他には何も見えない…
何も聞こえない…!
わたくしの世界には今、皇帝陛下しかいらっしゃらない!
あぁ、何て!
美しくて、ご立派で!
こんなに素敵な殿方を絵の中にだって見た事無いわ!
信じられない…
幻ではないのよね?
今、わたくしのハートは早鐘を打ち、頭の中は空っぽで――
ただひたすらに目の前の美しい御方を見つめるしか出来ないの…
「わたくし、何を話したかまるで覚えていないわ…」
「まぁ姫様!
そんな事では困ります!」
ここはカード宮殿敷地内にある『北の城』。
本宮殿の周囲に幾つもある城の内の一つで、スペード公王家はここに滞在する。
美しく豪奢な城を丸ごと一城用意してくれるとはさすがに皇帝陛下である。
執事3名と侍女10名も用意されていたが、それはお断りした。
執事も侍女も連れて来たし、ボロが出たら困るし…
なので今公女カリステプスに与えられた部屋に居るのは気心の知れた侍女ばかり。
特に乳姉妹として幼い頃から仕えて来たアマリリスとは親友の様な仲。
そのアマリリスは遠慮なく主カリステプスに意見する。
「勿論私達のカリー様が一番美しく賢く皇后に相応しいです!
私達はよぉく分かってます!
それを皇帝陛下にも解って頂かなくては!
ライバルの姫様達だってそりゃあ死に物狂いで勝ちに来るはず!
――ところでどうしてそんなドレスを着ていらっしゃるのですか?
何だか流行遅れの野暮ったいデザイン‥」
「‥ハッ!
ッ、そうだったわ!
あぁッ、わたくしは何て愚かな事を!
持ってきたドレスはどれも流行遅れのダサドレスばかり…
いや~~~ッ!」
「ひ、姫様??」
「アマリ、わたくしは愚か者よ!
38才のオジサンと結婚なんて真っ平と思って――嫌われてしまおうと――だって知らなかったんですもの!
皇帝陛下があんなに素敵だなんて!」
「まぁ…まぁまぁ!
私は夢を見ているのかしら?…いつもやる気が無くて今回だって――ええ、私は気付いておりましたよ、姫様がこのお話に乗り気ではない事…
どうやってその気になって頂こうか頭を悩ませておりましたが…姫様…」
「わたくしはやる気よ!…こんな自分は生まれて初めてだわ!
こんなに心が燃え上がるなんて、わたくしは一体どうしてしまったの?」
「まぁ姫様、分かっておいでのくせに‥」
「分からないわよ?」
「心臓は?」
「ドキドキと煩いわ」
「頬は?」
「熱くて熱くて…」
「頭は?」
「ずっとクラクラしてるのよ…あぁ、コレって何かの病気よね?
こんな症状は初めて…わたくしは未知の病に罹ってしまったの?」
「ええ!
ですがその病、医術師では治せません」
「ええ!?
どうしたらいいのよ?
まだ死にたくない!」
「――いつも冷静で賢くていらっしゃる姫様も恋をすると何ともお可愛らしい‥」
「こッ!?」
「はい」
「こッッ
ここここここここッ」
「ええ」
「こぉ~~~~ッ」
「作戦会議よ!」
「いッ!?お母様!?
いつの間に!?」
お喋りに夢中になっていたカリステプスは、突然背後から母親に声を掛けられソファから飛び上がる。
銅鑼…!?
とにかくもう他には何も見えない…
何も聞こえない…!
わたくしの世界には今、皇帝陛下しかいらっしゃらない!
あぁ、何て!
美しくて、ご立派で!
こんなに素敵な殿方を絵の中にだって見た事無いわ!
信じられない…
幻ではないのよね?
今、わたくしのハートは早鐘を打ち、頭の中は空っぽで――
ただひたすらに目の前の美しい御方を見つめるしか出来ないの…
「わたくし、何を話したかまるで覚えていないわ…」
「まぁ姫様!
そんな事では困ります!」
ここはカード宮殿敷地内にある『北の城』。
本宮殿の周囲に幾つもある城の内の一つで、スペード公王家はここに滞在する。
美しく豪奢な城を丸ごと一城用意してくれるとはさすがに皇帝陛下である。
執事3名と侍女10名も用意されていたが、それはお断りした。
執事も侍女も連れて来たし、ボロが出たら困るし…
なので今公女カリステプスに与えられた部屋に居るのは気心の知れた侍女ばかり。
特に乳姉妹として幼い頃から仕えて来たアマリリスとは親友の様な仲。
そのアマリリスは遠慮なく主カリステプスに意見する。
「勿論私達のカリー様が一番美しく賢く皇后に相応しいです!
私達はよぉく分かってます!
それを皇帝陛下にも解って頂かなくては!
ライバルの姫様達だってそりゃあ死に物狂いで勝ちに来るはず!
――ところでどうしてそんなドレスを着ていらっしゃるのですか?
何だか流行遅れの野暮ったいデザイン‥」
「‥ハッ!
ッ、そうだったわ!
あぁッ、わたくしは何て愚かな事を!
持ってきたドレスはどれも流行遅れのダサドレスばかり…
いや~~~ッ!」
「ひ、姫様??」
「アマリ、わたくしは愚か者よ!
38才のオジサンと結婚なんて真っ平と思って――嫌われてしまおうと――だって知らなかったんですもの!
皇帝陛下があんなに素敵だなんて!」
「まぁ…まぁまぁ!
私は夢を見ているのかしら?…いつもやる気が無くて今回だって――ええ、私は気付いておりましたよ、姫様がこのお話に乗り気ではない事…
どうやってその気になって頂こうか頭を悩ませておりましたが…姫様…」
「わたくしはやる気よ!…こんな自分は生まれて初めてだわ!
こんなに心が燃え上がるなんて、わたくしは一体どうしてしまったの?」
「まぁ姫様、分かっておいでのくせに‥」
「分からないわよ?」
「心臓は?」
「ドキドキと煩いわ」
「頬は?」
「熱くて熱くて…」
「頭は?」
「ずっとクラクラしてるのよ…あぁ、コレって何かの病気よね?
こんな症状は初めて…わたくしは未知の病に罹ってしまったの?」
「ええ!
ですがその病、医術師では治せません」
「ええ!?
どうしたらいいのよ?
まだ死にたくない!」
「――いつも冷静で賢くていらっしゃる姫様も恋をすると何ともお可愛らしい‥」
「こッ!?」
「はい」
「こッッ
ここここここここッ」
「ええ」
「こぉ~~~~ッ」
「作戦会議よ!」
「いッ!?お母様!?
いつの間に!?」
お喋りに夢中になっていたカリステプスは、突然背後から母親に声を掛けられソファから飛び上がる。
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