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第三章

3の63(最終話) 愛のために

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端正な顔に憂いを滲ませて、レイは答える。



「君を連れて行きたくなかった理由はそれもある。
君はいまだに自分の容姿に自信が持てないだろう?
それ程に類まれなる美貌でありながら。
子供の頃から長い間刷り込まれた悪意がいまだに抜けていない証拠だ。
君を傷つけた場所に君を連れて行きたくなかった‥‥」

「お気遣いありがとうございます。
ですがラメールは私が育った島。
島の自然、空、海‥‥
大好きなんです。
優しくしてくれた人達もたくさんいました。
大好きな侍女達やその家族、普通に友達になってくれた人達‥‥
彼女達を絶対に助けたい‥‥!
私を拾い、大切に育ててくれた今は亡きお母様もラメールを愛していました。
お母様への恩返しの為にも、ラメールを救いたいのです!」

「大丈夫ですよ。
島に着いてみて気分が悪い様なら義姉上は船から降りなければいい。
魔族など、兄上と私だけで蹴散らせましょう」



海風に吹かれながら話すシレーヌとレイのもとへフラットも合流する。

未知なる魔族との戦いの前に強気の発言をするにはワケがある。

フラットも聖なる魔力を覚醒させているのだ。

マーリンの黒雷攻撃を受けて生死の境を彷徨った事で覚醒に至ったと考えられる。

魔族と闘える力を得て、フラットは今、使命感に燃えている。



バシャーン!

バシャバシャーン!



≪キュキュキュッ!≫

≪キュキュッキュ!≫

≪キュキュキュッキュ!≫



「あッ!
イルカたちです!
わぁ、久しぶり!
私達を歓迎してくれています!」

「おぉ‥‥凄いな。
100頭以上いるのではないか?」

「‥‥フラット殿下?
何故逃げるのです?
イルカたちは大人しいですよ?」

「‥‥あぁ、うん。
何だろう、
体が勝手に後退るのだ」



ニコニコの新婚夫婦とちょっと青褪めた弟。

彼等が乗る船の周りを愉快にジャンプしながら並走するイルカたち。

水しぶきがキラキラ光って、まるで海のお祭りの様。


でも、この海の行く先には未知の戦いが――


魔族と言う、人類にとって未知なる敵との負けられない戦いが待っているのだ。




(人類と魔族との戦いの始まりとなるのだろう。
愛する妻、家族、国、
愛を守る為に私は、人類は、必ず勝利しなければならない!)

穏やかな表情に目だけ厳しく引き締めながら心に誓うレイ・ブルーフィン。


(魔族‥‥
未知の恐ろしい存在。
魔力を覚醒させた人類の数少ない一人として私は戦いきる!
我が王レイ様の為に。
愛する全ての為に!)

海の彼方を見つめながら心に誓うシレーヌ・ブルーフィン。


(必ず義姉上を‥‥
義姉上、兄上をお守りする!
私の命をかけて!)

諦めはしたものの、いまだ熱く想いを寄せる愛しい女性と敬愛する兄を見ながら決意を新たにするフラット・ブルーフィン。



彼等はこの数日後

ラメール王国到着直後


自分達三人だけで魔族を軽く瞬殺する事をまだ知らない――
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