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第三章

3の17 後頭部で受けとめる男

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「聖女に謀られたな」

「はい。
3年前の偽りの婚約、婚約式から‥‥
周到に準備され、実行されました。
私の危機管理が甘かった結果です」



グッ‥‥‥

思わず両陛下は胸を押さえる。


ここは国王の私室。

夕刻に聖女、第二王子と話した両陛下はその夜、くだんのゴブリン達を招いた。

スモークブルーのゴブリンが我が息子だなどと俄かには信じられない‥‥

ことはなく。

シーブルーの瞳はその力を失ってはおらず、話しぶりもそのままだ。

間違いなく両陛下の愛する息子、レイである!

姿は変われど、生きていてくれただけで、それだけでいい‥‥!



「‥‥レイには何の落ち度も無いわ!
あるとしたら、感じる必要の無い責任を感じたって事だけかしら。
父親の女癖の悪さに息子が責任を感じる必要なんて全然無いもの!」



言いながら王妃の剣呑な顔が徐々に隣に座る国王へと向いて行く。

国王は端正な顔を俯けて、同じ速度で王妃の視線から逃れて行く。

つまり、二人は同じ速度で同じ方向へ顔を向けて行っている。



「レイは聖女に、
『陛下に強く言い寄られていて困ってますの。
何度断っても諦めてくれなくて。
強引な手を使ってでも手に入れると言われて、恐くて恐くて。
陛下の魔の手を逃れる為に一時的に婚約者を装って欲しいの』
―と懇願されたのね。
フンッ、いかにもありそうだもの!
騙されるなと言う方が無理な話よ!」



王妃の厳しい声はどんどん声量を上げていく。

国王はパンチのある声を後頭部で受けとめる。



「陛下はレイにだけは弱いから、レイの婚約者になってしまえば諦めるだろうと言うのも‥‥実際、その通りだから説得力があるわよね。
事実確認も難しい‥‥
いえ、不可能ですもの。
聖女は狡猾ね‥‥
よく考えたものだわ。
実際には陛下は聖女には興味を示していなかった。
ねぇ、そうですわよね、陛下?」



‥‥心を無にしているのだろうか?

国王は王妃の問い掛けに気付かぬ様子でピクリとも動かない。



「3年前の陛下は熟女ブームでしたよねぇ?
未亡人を追い回していたんですよねぇッ!?」



誰にも触れられていないはずなのに、後頭部に激しい衝撃を感じた国王は、怯える幼子おさなごの様にビクッと神経質に体を震わせる。
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