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第三章

3の11 二人とも、一生ゴブリン

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「あ‥‥、
すまない、
つい‥‥」



つい抱きしめてしまっていた事に気付き、慌てて体を離すゴブリン・レイ。

体を離されると寂しくて、しょんぼりしてしまうゴブリン・シレーヌ。

でも、『ずっと抱きしめていて』なんて言えない。

だって‥‥



「あにゃた、婚約者、いうかや‥‥」

「!
違う!
本当の婚約ではない!
私は愚かにも騙されたのだ!」

「キッ、
キシュ、さっき‥‥」

「うん‥‥
見てたんだよな。
彼女と室内で二人になるのが嫌で庭園に来たから。
彼女‥‥さっきの銀髪の女性は聖女だ。
私は偽りの婚約式で聖女にキスされた後、魔法でゴブリンにされた。
3年前だ」

「3年も‥‥
どうちて、すう‥すゆに、」

「すぐに聖女に口付けを請わなかったのは、シンプルに愛していない相手と口付けするのが嫌だったからだ」

「!」

「聖女との口付けを我慢してでも人間に戻りたいと思ったのは、君を守る為だ。
昨日の様子では、第二王子はかなり危険な状態だと判断した。
人間に戻れば、私は君を守れる。
兄として、フラットを抑え込める」

「!?
兄‥‥行方不明の第一王子!?」

「ああ、言ってなかったね。
私はレイ・ブルーフィン。
ブルーフィン王国の第一王子だ」

「ひぇぇ‥‥」

「‥‥だった、かな。
魔法は解けなかった。
私は一生このままだ」

「!
わーちも!
同じ!」

「なッ‥‥!?」

「今日のあしゃ、魔女が来て、何かぶわ~~ってなって、気がちゅいたあ、変身ちてまちた‥‥
第二殿下の注文って言ってまちた。
あの、キシュした事無いかや、戻えないしょうでちゅ」

「そッ‥‥んな!?
君も人間に戻れないというのか!?
フラットは何故、そんなバカな事を!?」

「私が望んだのではありません!
モーレイのせいです!」

「「!?」」



神殿の方から突然現れた第二王子。

その後ろには蒼白な顔で俯いている聖女。



「この私が愛する人魚姫にこんな事、ワザとするワケ無いではありませんか!
本当なら、魔法を掛ける前に私がキスするはずだったんです!
ああ、あと3ヵ月‥‥
シレーヌ姫が16才になり成人するまであとたった3ヵ月だ!
だが私はもう、シレーヌ姫への欲望を抑える自信が霧散してしまった。
シレーヌ姫をこの腕に抱き、全てを奪う事しか考えられなくなってしまった!
だが、『成人するまでは手を出さない』という約束を違えるわけにはいかない。
だから、苦肉の策として、シレーヌ姫にゴブリンになってもらおうと決めた。
3か月だけゴブリンでいてもらって、16才‥‥成人して結婚出来るようになったら人間に戻して結婚するはずだったのに‥‥
『妖しの沼の魔女』への依頼は、モーレイに頼んだ。
モーレイがしくじって、私がキスする前に‥」

「おめでたいのね!
ワザとに決まっているでしょう?」

「「「!?」」」



蒼白で俯いていた聖女がガバと顔を上げ、目を吊り上げて叫ぶ。

大きく見開いた金色の瞳には赤い稲妻が不規則に走り、普通の状態ではない。
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