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第三章
3の06 神殿の門にて
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王家の離宮 ”湖の貴婦人 ”
大きな湖の真ん中の島に建つ白い城へ戻る為、湖を泳いで渡ると言ったシレーヌ。
泳ぎが得意なのは知っているが、大丈夫だろうか‥‥
チャプッ‥‥
遠い向こう岸で静かに湖から上がるシレーヌ。
簡単に、あっという間に広い湖を泳ぎ切り、城の門番に気付かれない様裏へ回る。
一度離れたと見せかけて戻って来たスモークブルーのゴブリン・レイは、安全に向こう岸に着いたシレーヌに安堵すると、今度こそ本当に湖の側を離れる。
広い宮殿敷地内を歩きながら、神殿へと向かう。
神殿も宮殿敷地内にあり、聖女はそこにいる。
「‥‥いない?」
「いない!
聖女様は大変尊く、お忙しいお方なのだ!
お出掛けになっていて、いつお帰りになるかも分からん!
ホラ、サッサと離れろ!
ゴブリンの分際で神殿に足を踏み入れようなど、不敬にもほどがあろう!
ましてや尊き聖女様に会いたいだなどと、身の程知らずの極み!
大体、今何時だと思っている!?
日付が変わろうかという深夜だぞッ!?
常識知らずの人外め!
ホラ、行け!
シッシッ!
行かねば、汚水をぶっかけてやるぞ!」
仕方なく神殿から離れるスモークブルー・ゴブリン・レイ。
(‥‥いるな。
私に会わせたくないだけなのだろう‥‥
私が来たら何時だろうが取り次ぐように言われているはずなのだが。
若い門番だった‥‥私の事を知らないのだろう。
仕方ない、明日の昼間に来るか。
昼間の門番なら、大丈夫だろう)
翌朝。
早朝の喧騒の時間は過ぎ、ゆっくり昼へと向かう穏やかな時間。
いつもは静かな神殿の門で、何やら不穏な音がする。
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
「ヒィッ!
お、お許し‥‥ヒィッ」
「『スモークブルーのゴブリンを門前払いしてやった』ですってぇッ!?
あの御方を、せっかく来て下さったあの御方を、よくもッ!
許さないッ、お前!
ずっとずっと待って、やっと‥‥
やっと来て下さったのにィィィィッ」
「し、知らなくて‥‥
申し訳‥ヒィッ!
痛いッ!」
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
昨夜スモークブルー・ゴブリンが追い返された神殿の門が騒ぎになっている。
主宮殿に用事がある為出掛けようとしていた聖女が怒り狂い、門番を聖杖でビシバシ叩いているのだ。
憧れの聖女に褒めて頂けると思って自分の手柄としてゴブリンを追い払った事を申し出たのに、まさかの展開。
門番は泣きながら許しを請う。
「ヒィッ、痛いッ!
お許しを!
私は聖女様の御為に‥‥ヒィィッ」
「お黙りッ!
お前など叩き殺してや‥‥」
「やめろ」
静かなのによく響く声が聖女の動きを止める。
大きな湖の真ん中の島に建つ白い城へ戻る為、湖を泳いで渡ると言ったシレーヌ。
泳ぎが得意なのは知っているが、大丈夫だろうか‥‥
チャプッ‥‥
遠い向こう岸で静かに湖から上がるシレーヌ。
簡単に、あっという間に広い湖を泳ぎ切り、城の門番に気付かれない様裏へ回る。
一度離れたと見せかけて戻って来たスモークブルーのゴブリン・レイは、安全に向こう岸に着いたシレーヌに安堵すると、今度こそ本当に湖の側を離れる。
広い宮殿敷地内を歩きながら、神殿へと向かう。
神殿も宮殿敷地内にあり、聖女はそこにいる。
「‥‥いない?」
「いない!
聖女様は大変尊く、お忙しいお方なのだ!
お出掛けになっていて、いつお帰りになるかも分からん!
ホラ、サッサと離れろ!
ゴブリンの分際で神殿に足を踏み入れようなど、不敬にもほどがあろう!
ましてや尊き聖女様に会いたいだなどと、身の程知らずの極み!
大体、今何時だと思っている!?
日付が変わろうかという深夜だぞッ!?
常識知らずの人外め!
ホラ、行け!
シッシッ!
行かねば、汚水をぶっかけてやるぞ!」
仕方なく神殿から離れるスモークブルー・ゴブリン・レイ。
(‥‥いるな。
私に会わせたくないだけなのだろう‥‥
私が来たら何時だろうが取り次ぐように言われているはずなのだが。
若い門番だった‥‥私の事を知らないのだろう。
仕方ない、明日の昼間に来るか。
昼間の門番なら、大丈夫だろう)
翌朝。
早朝の喧騒の時間は過ぎ、ゆっくり昼へと向かう穏やかな時間。
いつもは静かな神殿の門で、何やら不穏な音がする。
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
「ヒィッ!
お、お許し‥‥ヒィッ」
「『スモークブルーのゴブリンを門前払いしてやった』ですってぇッ!?
あの御方を、せっかく来て下さったあの御方を、よくもッ!
許さないッ、お前!
ずっとずっと待って、やっと‥‥
やっと来て下さったのにィィィィッ」
「し、知らなくて‥‥
申し訳‥ヒィッ!
痛いッ!」
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
昨夜スモークブルー・ゴブリンが追い返された神殿の門が騒ぎになっている。
主宮殿に用事がある為出掛けようとしていた聖女が怒り狂い、門番を聖杖でビシバシ叩いているのだ。
憧れの聖女に褒めて頂けると思って自分の手柄としてゴブリンを追い払った事を申し出たのに、まさかの展開。
門番は泣きながら許しを請う。
「ヒィッ、痛いッ!
お許しを!
私は聖女様の御為に‥‥ヒィィッ」
「お黙りッ!
お前など叩き殺してや‥‥」
「やめろ」
静かなのによく響く声が聖女の動きを止める。
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