98 / 155
第三章
3の06 神殿の門にて
しおりを挟む
王家の離宮 ”湖の貴婦人 ”
大きな湖の真ん中の島に建つ白い城へ戻る為、湖を泳いで渡ると言ったシレーヌ。
泳ぎが得意なのは知っているが、大丈夫だろうか‥‥
チャプッ‥‥
遠い向こう岸で静かに湖から上がるシレーヌ。
簡単に、あっという間に広い湖を泳ぎ切り、城の門番に気付かれない様裏へ回る。
一度離れたと見せかけて戻って来たスモークブルーのゴブリン・レイは、安全に向こう岸に着いたシレーヌに安堵すると、今度こそ本当に湖の側を離れる。
広い宮殿敷地内を歩きながら、神殿へと向かう。
神殿も宮殿敷地内にあり、聖女はそこにいる。
「‥‥いない?」
「いない!
聖女様は大変尊く、お忙しいお方なのだ!
お出掛けになっていて、いつお帰りになるかも分からん!
ホラ、サッサと離れろ!
ゴブリンの分際で神殿に足を踏み入れようなど、不敬にもほどがあろう!
ましてや尊き聖女様に会いたいだなどと、身の程知らずの極み!
大体、今何時だと思っている!?
日付が変わろうかという深夜だぞッ!?
常識知らずの人外め!
ホラ、行け!
シッシッ!
行かねば、汚水をぶっかけてやるぞ!」
仕方なく神殿から離れるスモークブルー・ゴブリン・レイ。
(‥‥いるな。
私に会わせたくないだけなのだろう‥‥
私が来たら何時だろうが取り次ぐように言われているはずなのだが。
若い門番だった‥‥私の事を知らないのだろう。
仕方ない、明日の昼間に来るか。
昼間の門番なら、大丈夫だろう)
翌朝。
早朝の喧騒の時間は過ぎ、ゆっくり昼へと向かう穏やかな時間。
いつもは静かな神殿の門で、何やら不穏な音がする。
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
「ヒィッ!
お、お許し‥‥ヒィッ」
「『スモークブルーのゴブリンを門前払いしてやった』ですってぇッ!?
あの御方を、せっかく来て下さったあの御方を、よくもッ!
許さないッ、お前!
ずっとずっと待って、やっと‥‥
やっと来て下さったのにィィィィッ」
「し、知らなくて‥‥
申し訳‥ヒィッ!
痛いッ!」
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
昨夜スモークブルー・ゴブリンが追い返された神殿の門が騒ぎになっている。
主宮殿に用事がある為出掛けようとしていた聖女が怒り狂い、門番を聖杖でビシバシ叩いているのだ。
憧れの聖女に褒めて頂けると思って自分の手柄としてゴブリンを追い払った事を申し出たのに、まさかの展開。
門番は泣きながら許しを請う。
「ヒィッ、痛いッ!
お許しを!
私は聖女様の御為に‥‥ヒィィッ」
「お黙りッ!
お前など叩き殺してや‥‥」
「やめろ」
静かなのによく響く声が聖女の動きを止める。
大きな湖の真ん中の島に建つ白い城へ戻る為、湖を泳いで渡ると言ったシレーヌ。
泳ぎが得意なのは知っているが、大丈夫だろうか‥‥
チャプッ‥‥
遠い向こう岸で静かに湖から上がるシレーヌ。
簡単に、あっという間に広い湖を泳ぎ切り、城の門番に気付かれない様裏へ回る。
一度離れたと見せかけて戻って来たスモークブルーのゴブリン・レイは、安全に向こう岸に着いたシレーヌに安堵すると、今度こそ本当に湖の側を離れる。
広い宮殿敷地内を歩きながら、神殿へと向かう。
神殿も宮殿敷地内にあり、聖女はそこにいる。
「‥‥いない?」
「いない!
聖女様は大変尊く、お忙しいお方なのだ!
お出掛けになっていて、いつお帰りになるかも分からん!
ホラ、サッサと離れろ!
ゴブリンの分際で神殿に足を踏み入れようなど、不敬にもほどがあろう!
ましてや尊き聖女様に会いたいだなどと、身の程知らずの極み!
大体、今何時だと思っている!?
日付が変わろうかという深夜だぞッ!?
常識知らずの人外め!
ホラ、行け!
シッシッ!
行かねば、汚水をぶっかけてやるぞ!」
仕方なく神殿から離れるスモークブルー・ゴブリン・レイ。
(‥‥いるな。
私に会わせたくないだけなのだろう‥‥
私が来たら何時だろうが取り次ぐように言われているはずなのだが。
若い門番だった‥‥私の事を知らないのだろう。
仕方ない、明日の昼間に来るか。
昼間の門番なら、大丈夫だろう)
翌朝。
早朝の喧騒の時間は過ぎ、ゆっくり昼へと向かう穏やかな時間。
いつもは静かな神殿の門で、何やら不穏な音がする。
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
「ヒィッ!
お、お許し‥‥ヒィッ」
「『スモークブルーのゴブリンを門前払いしてやった』ですってぇッ!?
あの御方を、せっかく来て下さったあの御方を、よくもッ!
許さないッ、お前!
ずっとずっと待って、やっと‥‥
やっと来て下さったのにィィィィッ」
「し、知らなくて‥‥
申し訳‥ヒィッ!
痛いッ!」
バシィッ!
ビシィッ!
バシィッ!‥‥
昨夜スモークブルー・ゴブリンが追い返された神殿の門が騒ぎになっている。
主宮殿に用事がある為出掛けようとしていた聖女が怒り狂い、門番を聖杖でビシバシ叩いているのだ。
憧れの聖女に褒めて頂けると思って自分の手柄としてゴブリンを追い払った事を申し出たのに、まさかの展開。
門番は泣きながら許しを請う。
「ヒィッ、痛いッ!
お許しを!
私は聖女様の御為に‥‥ヒィィッ」
「お黙りッ!
お前など叩き殺してや‥‥」
「やめろ」
静かなのによく響く声が聖女の動きを止める。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
おとぎ話のお姫さまに転生したようですが王子さまの様子が変です
ミズメ
恋愛
修道院で過ごすヘンリエッタには、前世の記憶があった。本を読むのが好きな、日本人の記憶だ。
いばら姫にシンデレラ、人魚姫……たくさんのお姫さまたちが登場するこのおとぎ話のような世界で、彼女はある日気がついた。
「わたし、人魚姫の恋路を邪魔したあの王女ですね」
魔女に人魚に狼に……何でもアリなこの世界ですが、せっかく魔法が使えるので人魚姫の悲恋もわたしが何とかします!そう思っていたのに、ヘンリエッタは何故か王子に追いかけ回されるのだった。
「――へえ。姫は追いかけっこがしたいんだね?」
✳︎アンデルセン、グリム童話、おとぎ話が色々混ざっています。
苦手な方はご注意ください。
✳︎ゆるふわっとした気持ちでご覧ください
✳︎2019.8.24改題、改稿しました。大まかな流れは同じです
✳︎小説家になろうにも掲載中。別名です。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる