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第二章

2の20 あの時と同じ言葉

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幻聴ではないのか??

スモークブルーのゴブリンが声の方を見ると、黒マントのフードを目深にかぶった誰かが草むらに隠れるようにしてしゃがみ込んでいる。



「あの、怪しい者ではありませんが、隠れる必要がある者で‥‥
すみません、見張りに見つかると面倒なので、こちらへ来て頂けますか?」

「見張‥‥ああ、」



注意してよく見ると、湖の向こうの城門付近に騎士が2名いる。

‥‥眠り込んでいる様だが。


ゴブリンは言われた通り黒マントの女性が隠れている草むらに移動するが、自分が近付くと人間が不快である事はよく分かっているので、なるべく距離をとる。

が、黒マントの女性の方からズズッとゴブリンに近寄るので、ゴブリンはギョッとして動揺する。

私が気持ち悪くないのか!?


黒マントの女性がフードを外すと、間違いなく夕方のあの美しいローズレッドの瞳の美少女で‥‥


――何という事だ!

美しいローズレッドの瞳には今回もまた、一切の不快が現れていない!?

むしろキラキラと眩しいほどの煌めきを放ち、吸い込まれそうだ‥‥

ゴブリンだぞ?

ゴブリンが不快ではないのか!?

もしや、軟禁生活や夕方の第二王子の暴挙に精神を蝕まれてしまっているのか!?


‥‥突然奇声を上げて暴れ出す可能性もある。

ゴブリンは慎重に話しかけてみる。



「‥‥君はあの時の少女だね?
城を抜け出して来たのか?
見たところ辺りに舟は無い様だが」

「はい、本当にありがとうございました!
あの時、もしお声掛け頂けていなかったらと思うとゾッとします。
私は嫌悪のあまり自害していたかもしれません‥‥
お城はこうして深夜にちょくちょく抜け出して、広い王宮敷地内を散歩したりしています。
私は泳ぎが得意ですので、湖は泳いで渡ります。
‥‥ふふ、第二王子殿下は私が泳ぎが得意だと知っているのに、湖を泳いで渡る可能性に思い至らないのが不思議ですね。
今は丁度散歩から戻って来たところで、これから湖を泳いで城に戻るところで‥‥
まさか恩人のゴブリンさんにお会いできるとは‥‥!」

「受け答えもしっかりしている‥‥
目も虚ろではない‥‥
正気なのか‥‥」

「‥‥え?」

「‥‥君は私が‥‥ゴブリンが不快ではないのか?」

「不快だなんて!
あのッ‥‥《カァァ》
クールで、カッコイイです!」

「‥ッッ!!!
き、君はッ‥‥」



赤面しながら紡がれた少女の言葉に、ゴブリンは目を見開く。


(あの時と、同じ事を‥‥
あの時とは、まるで違う姿の私に!?)



ゴブリンは言葉に詰まる。

心が震えている‥‥!
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