85 / 155
第二章
2の20 あの時と同じ言葉
しおりを挟む
幻聴ではないのか??
スモークブルーのゴブリンが声の方を見ると、黒マントのフードを目深にかぶった誰かが草むらに隠れるようにしてしゃがみ込んでいる。
「あの、怪しい者ではありませんが、隠れる必要がある者で‥‥
すみません、見張りに見つかると面倒なので、こちらへ来て頂けますか?」
「見張‥‥ああ、」
注意してよく見ると、湖の向こうの城門付近に騎士が2名いる。
‥‥眠り込んでいる様だが。
ゴブリンは言われた通り黒マントの女性が隠れている草むらに移動するが、自分が近付くと人間が不快である事はよく分かっているので、なるべく距離をとる。
が、黒マントの女性の方からズズッとゴブリンに近寄るので、ゴブリンはギョッとして動揺する。
私が気持ち悪くないのか!?
黒マントの女性がフードを外すと、間違いなく夕方のあの美しいローズレッドの瞳の美少女で‥‥
――何という事だ!
美しいローズレッドの瞳には今回もまた、一切の不快が現れていない!?
むしろキラキラと眩しいほどの煌めきを放ち、吸い込まれそうだ‥‥
ゴブリンだぞ?
ゴブリンが不快ではないのか!?
もしや、軟禁生活や夕方の第二王子の暴挙に精神を蝕まれてしまっているのか!?
‥‥突然奇声を上げて暴れ出す可能性もある。
ゴブリンは慎重に話しかけてみる。
「‥‥君はあの時の少女だね?
城を抜け出して来たのか?
見たところ辺りに舟は無い様だが」
「はい、本当にありがとうございました!
あの時、もしお声掛け頂けていなかったらと思うとゾッとします。
私は嫌悪のあまり自害していたかもしれません‥‥
お城はこうして深夜にちょくちょく抜け出して、広い王宮敷地内を散歩したりしています。
私は泳ぎが得意ですので、湖は泳いで渡ります。
‥‥ふふ、第二王子殿下は私が泳ぎが得意だと知っているのに、湖を泳いで渡る可能性に思い至らないのが不思議ですね。
今は丁度散歩から戻って来たところで、これから湖を泳いで城に戻るところで‥‥
まさか恩人のゴブリンさんにお会いできるとは‥‥!」
「受け答えもしっかりしている‥‥
目も虚ろではない‥‥
正気なのか‥‥」
「‥‥え?」
「‥‥君は私が‥‥ゴブリンが不快ではないのか?」
「不快だなんて!
あのッ‥‥《カァァ》
クールで、カッコイイです!」
「‥ッッ!!!
き、君はッ‥‥」
赤面しながら紡がれた少女の言葉に、ゴブリンは目を見開く。
(あの時と、同じ事を‥‥
あの時とは、まるで違う姿の私に!?)
ゴブリンは言葉に詰まる。
心が震えている‥‥!
スモークブルーのゴブリンが声の方を見ると、黒マントのフードを目深にかぶった誰かが草むらに隠れるようにしてしゃがみ込んでいる。
「あの、怪しい者ではありませんが、隠れる必要がある者で‥‥
すみません、見張りに見つかると面倒なので、こちらへ来て頂けますか?」
「見張‥‥ああ、」
注意してよく見ると、湖の向こうの城門付近に騎士が2名いる。
‥‥眠り込んでいる様だが。
ゴブリンは言われた通り黒マントの女性が隠れている草むらに移動するが、自分が近付くと人間が不快である事はよく分かっているので、なるべく距離をとる。
が、黒マントの女性の方からズズッとゴブリンに近寄るので、ゴブリンはギョッとして動揺する。
私が気持ち悪くないのか!?
黒マントの女性がフードを外すと、間違いなく夕方のあの美しいローズレッドの瞳の美少女で‥‥
――何という事だ!
美しいローズレッドの瞳には今回もまた、一切の不快が現れていない!?
むしろキラキラと眩しいほどの煌めきを放ち、吸い込まれそうだ‥‥
ゴブリンだぞ?
ゴブリンが不快ではないのか!?
もしや、軟禁生活や夕方の第二王子の暴挙に精神を蝕まれてしまっているのか!?
‥‥突然奇声を上げて暴れ出す可能性もある。
ゴブリンは慎重に話しかけてみる。
「‥‥君はあの時の少女だね?
城を抜け出して来たのか?
見たところ辺りに舟は無い様だが」
「はい、本当にありがとうございました!
あの時、もしお声掛け頂けていなかったらと思うとゾッとします。
私は嫌悪のあまり自害していたかもしれません‥‥
お城はこうして深夜にちょくちょく抜け出して、広い王宮敷地内を散歩したりしています。
私は泳ぎが得意ですので、湖は泳いで渡ります。
‥‥ふふ、第二王子殿下は私が泳ぎが得意だと知っているのに、湖を泳いで渡る可能性に思い至らないのが不思議ですね。
今は丁度散歩から戻って来たところで、これから湖を泳いで城に戻るところで‥‥
まさか恩人のゴブリンさんにお会いできるとは‥‥!」
「受け答えもしっかりしている‥‥
目も虚ろではない‥‥
正気なのか‥‥」
「‥‥え?」
「‥‥君は私が‥‥ゴブリンが不快ではないのか?」
「不快だなんて!
あのッ‥‥《カァァ》
クールで、カッコイイです!」
「‥ッッ!!!
き、君はッ‥‥」
赤面しながら紡がれた少女の言葉に、ゴブリンは目を見開く。
(あの時と、同じ事を‥‥
あの時とは、まるで違う姿の私に!?)
ゴブリンは言葉に詰まる。
心が震えている‥‥!
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
琴姫の奏では紫雲を呼ぶ
山下真響
恋愛
仮想敵国の王子に恋する王女コトリは、望まぬ縁談を避けるために、身分を隠して楽師団へ入団。楽器演奏の力を武器に周囲を巻き込みながら、王の悪政でボロボロになった自国を一度潰してから立て直し、一途で両片思いな恋も実らせるお話です。
王家、社の神官、貴族、蜂起する村人、職人、楽師、隣国、様々な人物の思惑が絡み合う和風ファンタジー。
★作中の楽器シェンシャンは架空のものです。
★婚約破棄ものではありません。
★日本の奈良時代的な文化です。
★様々な立場や身分の人物達の思惑が交錯し、複雑な人間関係や、主人公カップル以外の恋愛もお楽しみいただけます。
★二つの国の革命にまつわるお話で、娘から父親への復讐も含まれる予定です。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる