68 / 155
第二章
2の03 三年後 3
しおりを挟む
「第二王子殿下からお手紙です。
『問題の件に関して説明している。
これを読んで理解して欲しい』
と仰って‥‥
すぐにお読みください」
殺気‥‥いや、さっきの侍女が盆に恭しく手紙を乗せて来た。
だから、
「毎回言わせないで。
読む気はありませんのでお返しして。
花も贈り物もよ」
「シッ、シレーヌ様ッ!
あなた、どれだけ不敬‥‥」
サッ!
「‥‥ヒィッ!?」
侍女の前に手鏡を出してやった。
自分の醜い表情に悲鳴って‥‥
自覚無かったの?
あなたはずっとそんな表情で私に接していたのよ?
「一応私はあなたの主人よ。
主人に対してその表情‥‥
私に不敬を説く前に、自分を顧みなさい」
「‥‥でもッ、
ですがッ‥‥
あなたは皆の憧れの第二王子殿下に望まれているのですよ!?
ご自分がどれだけ恵まれているのか、少しは自覚されるべきですわ!
有難いと感謝し、第二王子殿下に報いるべきです!」
「あなた弟か妹は?」
「‥‥え?
3才下の、17才の妹がおりますが‥‥
あと、領地の方に5才下の妹と7才下の弟がいます」
「可愛い?」
「ええ!
そりゃあもう!
すぐ下の妹は去年成人したと言うのにまだまだ子供で‥‥
でも(シレーヌ様と違って)とぉっても素直で可愛い子ですわ!」
「私にも妹二人と弟二人がいるの。
(国王と第一王子は記憶から抹消)
すぐ下の妹とは仲良くないのだけど、3才下の妹とは仲良しだった。
弟二人もね。
幼いという事で謁見の間にいなかった彼等とは会うことも出来ず船に乗せられた‥‥だから、彼等からしたら、突然ワケも分からず姉が消えた事になる。
この約3年間、私はここから出る事を許されなかったから、一度も会えていないわ。
弟妹だけじゃない、友人ともね。
手紙すら隠されてしまう‥‥
一切の交流を絶たれているのよ」
「えッ‥‥!
そんな‥‥
一度も!?
手紙も!?
う‥‥で、でも、」
「例えばあなたの妹が逆らえない相手に望まれて監禁されたらどう?
外出を許されず人との交流も一切絶たれたら?
勿論、あなたとも家族の誰とも手紙すら交わせない。
新たに友人が出来ても、その友人も遠くへ追いやられてしまう。
恵まれていると感謝できる?」
「‥‥ッ!
ソレは‥‥いいえ」
「私は3年間もこの状況に耐えているの。
ちなみに私はあなたの妹よりも子供の15才よ。
有難いと感謝できないのも無理ないと思わない?
少なくとも侍女に鬼の様な表情で詰め寄られる理由は無いわ」
「鬼‥‥ウッ、申し訳ございません‥‥でしたッ!」
「(‥‥あら、謝ってくれるなんて、素直な性質の侍女さんだったのね)
ええ‥‥私はただ殿下に『学校に行きたい』とお願いしているだけなのよ」
「学校‥‥ああ、王立学園は15才からでしたね。
シレーヌ様は学校に通いたいのですか?」
「ええ。
とにかく外に出たいし‥‥
私の母国では、全ての子供が平等に教育を受ける権利を持っていた。
だから私は当然の権利として、『学校に行きたい』とお願いしたの。
なのに殿下は許そうとしないのよ。
だから私は殿下がOKするまで会わないと決めたの」
「はぁ‥‥
(お強い‥‥)」
「‥‥もともと私は『留学生』としてこの国に拉‥連れて来られたのよ。
なのに、数カ月だけ家庭教師を付けられただけで、その後は教育を受けさせてもらっていないの。
私は自国では普通に国民の皆と一緒に学校で学んでいたわ。
王族としての勉強と学校の勉強は全然違って、両立するのは大変だったけど楽しかったの。
先日の事よ。
貴族は15才になったら王立学園で学ぶのだと殿下が仰ったの。
口を滑らせたのね。
私はもうすぐ16才。
王立学園で学んでいたはずの時間を一年も潰したのよ。
分かるでしょう?
私を人間だと思っていないのよ!
だから人間として扱ってくれないのよ!
だけど、私だって人間なのよ!
教育を受ける権利があるはずよ!」
ポカンと聞いている侍女が理解しているかどうか不明だが、不満で爆発寸前のシレーヌは口が止まらない。
バァン!
その時、勢いよくドアが開けられた!
『問題の件に関して説明している。
これを読んで理解して欲しい』
と仰って‥‥
すぐにお読みください」
殺気‥‥いや、さっきの侍女が盆に恭しく手紙を乗せて来た。
だから、
「毎回言わせないで。
読む気はありませんのでお返しして。
花も贈り物もよ」
「シッ、シレーヌ様ッ!
あなた、どれだけ不敬‥‥」
サッ!
「‥‥ヒィッ!?」
侍女の前に手鏡を出してやった。
自分の醜い表情に悲鳴って‥‥
自覚無かったの?
あなたはずっとそんな表情で私に接していたのよ?
「一応私はあなたの主人よ。
主人に対してその表情‥‥
私に不敬を説く前に、自分を顧みなさい」
「‥‥でもッ、
ですがッ‥‥
あなたは皆の憧れの第二王子殿下に望まれているのですよ!?
ご自分がどれだけ恵まれているのか、少しは自覚されるべきですわ!
有難いと感謝し、第二王子殿下に報いるべきです!」
「あなた弟か妹は?」
「‥‥え?
3才下の、17才の妹がおりますが‥‥
あと、領地の方に5才下の妹と7才下の弟がいます」
「可愛い?」
「ええ!
そりゃあもう!
すぐ下の妹は去年成人したと言うのにまだまだ子供で‥‥
でも(シレーヌ様と違って)とぉっても素直で可愛い子ですわ!」
「私にも妹二人と弟二人がいるの。
(国王と第一王子は記憶から抹消)
すぐ下の妹とは仲良くないのだけど、3才下の妹とは仲良しだった。
弟二人もね。
幼いという事で謁見の間にいなかった彼等とは会うことも出来ず船に乗せられた‥‥だから、彼等からしたら、突然ワケも分からず姉が消えた事になる。
この約3年間、私はここから出る事を許されなかったから、一度も会えていないわ。
弟妹だけじゃない、友人ともね。
手紙すら隠されてしまう‥‥
一切の交流を絶たれているのよ」
「えッ‥‥!
そんな‥‥
一度も!?
手紙も!?
う‥‥で、でも、」
「例えばあなたの妹が逆らえない相手に望まれて監禁されたらどう?
外出を許されず人との交流も一切絶たれたら?
勿論、あなたとも家族の誰とも手紙すら交わせない。
新たに友人が出来ても、その友人も遠くへ追いやられてしまう。
恵まれていると感謝できる?」
「‥‥ッ!
ソレは‥‥いいえ」
「私は3年間もこの状況に耐えているの。
ちなみに私はあなたの妹よりも子供の15才よ。
有難いと感謝できないのも無理ないと思わない?
少なくとも侍女に鬼の様な表情で詰め寄られる理由は無いわ」
「鬼‥‥ウッ、申し訳ございません‥‥でしたッ!」
「(‥‥あら、謝ってくれるなんて、素直な性質の侍女さんだったのね)
ええ‥‥私はただ殿下に『学校に行きたい』とお願いしているだけなのよ」
「学校‥‥ああ、王立学園は15才からでしたね。
シレーヌ様は学校に通いたいのですか?」
「ええ。
とにかく外に出たいし‥‥
私の母国では、全ての子供が平等に教育を受ける権利を持っていた。
だから私は当然の権利として、『学校に行きたい』とお願いしたの。
なのに殿下は許そうとしないのよ。
だから私は殿下がOKするまで会わないと決めたの」
「はぁ‥‥
(お強い‥‥)」
「‥‥もともと私は『留学生』としてこの国に拉‥連れて来られたのよ。
なのに、数カ月だけ家庭教師を付けられただけで、その後は教育を受けさせてもらっていないの。
私は自国では普通に国民の皆と一緒に学校で学んでいたわ。
王族としての勉強と学校の勉強は全然違って、両立するのは大変だったけど楽しかったの。
先日の事よ。
貴族は15才になったら王立学園で学ぶのだと殿下が仰ったの。
口を滑らせたのね。
私はもうすぐ16才。
王立学園で学んでいたはずの時間を一年も潰したのよ。
分かるでしょう?
私を人間だと思っていないのよ!
だから人間として扱ってくれないのよ!
だけど、私だって人間なのよ!
教育を受ける権利があるはずよ!」
ポカンと聞いている侍女が理解しているかどうか不明だが、不満で爆発寸前のシレーヌは口が止まらない。
バァン!
その時、勢いよくドアが開けられた!
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる