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第一章
1の58 悩める第二王子
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離宮『湖の貴婦人』。
城から出て庭園の中を船着き場に向かう第二王子と側近。
第二王子が『フゥ』と溜息してボソリと漏らす。
「‥‥参ったな」
「!‥‥はい。
シレーヌ姫はいささか気が強すぎる様に思われます。
あれ程の美貌ですから、多少の我が儘なら可愛らしく思えるものですが‥‥
殿下に対する態度はいただけません。
きっと小さな島国で蝶よ花よとチヤホヤされまくって来たのでしょう」
「うん?
それは違うぞ。
シレーヌ姫は同い年の義妹にかなり悩まされていた様だ。
あれ程の美貌を自覚出来ない程にな」
「え‥‥
そうなのですか?
言われてみれば‥‥
シレーヌ姫には容姿に自信がある令嬢特有の傲慢な空気は一切ありませんね」
「だろう?
自覚が無いから危なっかしくて困る。
無自覚無意識に人を魅了し誘惑しまくる危険人物。
手がつけられないとは彼女の事だ」
「先程『参った』と仰ったのはそういう意味だったのですね」
「ああ‥‥
それもあるが」
「他にも何か?」
「もう会いたいのだ」
「‥‥は?」
「今別れたばかりでもう会いたい。
会ってもいい顔をされないのは分かっているのに会いたい。
明日訪ねて来るまでの時間が絶望的に長く感じる。
‥‥会いたいのだよ」
「‥‥!!」
(殿下‥‥
メロメロが過ぎます!
え‥‥本気の恋は初めてなのですか?
初恋ですか!?)
側近が正解に辿り着いたところで船着き場に到着する。
ボートで待っていたモーレイ侯爵令嬢が立ち上がり、第二王子を迎える。
『まぁ‥‥殿下、顔色が優れない様ですわ。
私で良ければお慰めさせて頂きたいわ‥‥』
と言うつもりだったモーレイ嬢だったが、既に顔色も表情も空気もいつも通りに戻っている第二王子を見て、グッと言葉を飲み込む。
(むむっ、
作戦変更だわ!
どうやってベッドに誘おうかしら‥‥)
「分かったか?」
「へっ!?」
遠い海で沈没船から生還した後、一切相手にしてくれなくなった第二王子をどう誘惑しようかとグルグル考えを巡らせていたモーレイ嬢。
いきなり質問されて変な声を出してしまう。
「君が言ったんだろう。
『離宮に招待している外国の客人の頑なな態度にお困りだと風の噂で聞き、私も心を痛めております。
同性の自分なら、客人が殿下を受け入れるきっかけなり何なりが分かるはずですので、是非会わせて下さい!
従姉として、全力でお手伝い致します』と。
それで?
シレーヌ姫と仲良くなるにはどうしたらいいか分かったのか?」
「あ‥‥え‥と。
あ、だってホラ!
全然お話出来ませんでしたもの!
いくら女同士でも、ちょっと挨拶を交わしただけでは‥‥
ですから、彼女とお話する機会を与えて下さればすぐに探り出せるかと‥‥」
「それはダメだ。
君は離宮『湖の貴婦人』を出禁とする。
シレーヌ姫のあんな態度、女性相手でも許せないからな。
‥‥それに多分君はどれだけ話してもシレーヌ姫を理解出来ないだろう。
人間が違いすぎるのだ。
私もつい焦りから君の提案に乗ってしまったが、バカな事をした‥‥」
そう言って第二王子は頭から足元までモーレイを舐める様に見る。
ドクンッ!
モーレイの心臓が跳ね上がる!
城から出て庭園の中を船着き場に向かう第二王子と側近。
第二王子が『フゥ』と溜息してボソリと漏らす。
「‥‥参ったな」
「!‥‥はい。
シレーヌ姫はいささか気が強すぎる様に思われます。
あれ程の美貌ですから、多少の我が儘なら可愛らしく思えるものですが‥‥
殿下に対する態度はいただけません。
きっと小さな島国で蝶よ花よとチヤホヤされまくって来たのでしょう」
「うん?
それは違うぞ。
シレーヌ姫は同い年の義妹にかなり悩まされていた様だ。
あれ程の美貌を自覚出来ない程にな」
「え‥‥
そうなのですか?
言われてみれば‥‥
シレーヌ姫には容姿に自信がある令嬢特有の傲慢な空気は一切ありませんね」
「だろう?
自覚が無いから危なっかしくて困る。
無自覚無意識に人を魅了し誘惑しまくる危険人物。
手がつけられないとは彼女の事だ」
「先程『参った』と仰ったのはそういう意味だったのですね」
「ああ‥‥
それもあるが」
「他にも何か?」
「もう会いたいのだ」
「‥‥は?」
「今別れたばかりでもう会いたい。
会ってもいい顔をされないのは分かっているのに会いたい。
明日訪ねて来るまでの時間が絶望的に長く感じる。
‥‥会いたいのだよ」
「‥‥!!」
(殿下‥‥
メロメロが過ぎます!
え‥‥本気の恋は初めてなのですか?
初恋ですか!?)
側近が正解に辿り着いたところで船着き場に到着する。
ボートで待っていたモーレイ侯爵令嬢が立ち上がり、第二王子を迎える。
『まぁ‥‥殿下、顔色が優れない様ですわ。
私で良ければお慰めさせて頂きたいわ‥‥』
と言うつもりだったモーレイ嬢だったが、既に顔色も表情も空気もいつも通りに戻っている第二王子を見て、グッと言葉を飲み込む。
(むむっ、
作戦変更だわ!
どうやってベッドに誘おうかしら‥‥)
「分かったか?」
「へっ!?」
遠い海で沈没船から生還した後、一切相手にしてくれなくなった第二王子をどう誘惑しようかとグルグル考えを巡らせていたモーレイ嬢。
いきなり質問されて変な声を出してしまう。
「君が言ったんだろう。
『離宮に招待している外国の客人の頑なな態度にお困りだと風の噂で聞き、私も心を痛めております。
同性の自分なら、客人が殿下を受け入れるきっかけなり何なりが分かるはずですので、是非会わせて下さい!
従姉として、全力でお手伝い致します』と。
それで?
シレーヌ姫と仲良くなるにはどうしたらいいか分かったのか?」
「あ‥‥え‥と。
あ、だってホラ!
全然お話出来ませんでしたもの!
いくら女同士でも、ちょっと挨拶を交わしただけでは‥‥
ですから、彼女とお話する機会を与えて下さればすぐに探り出せるかと‥‥」
「それはダメだ。
君は離宮『湖の貴婦人』を出禁とする。
シレーヌ姫のあんな態度、女性相手でも許せないからな。
‥‥それに多分君はどれだけ話してもシレーヌ姫を理解出来ないだろう。
人間が違いすぎるのだ。
私もつい焦りから君の提案に乗ってしまったが、バカな事をした‥‥」
そう言って第二王子は頭から足元までモーレイを舐める様に見る。
ドクンッ!
モーレイの心臓が跳ね上がる!
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