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第一章
1の19 私の人魚姫 2
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パシャッ!
ハッ‥‥
不意に私の耳‥‥と言うより心を捉えた小さな音。
小さいけど、確かな意思を感じさせる音――
木片を抱え直し、何とかその音の方向に首を振ると――
なッ‥見間‥‥
見間違いか!?
少女!?
船に乗っていなかったはずの少女がこちらへ泳いでくる!?
何度も波に弾かれ、押しやられ、流されながら、諦める事無く私に向かって来る!
違う。
こんな場所に少女がいるはず無い――
それ以上に、私に向かって必死に泳いでくるなど有り得ないと心が断じる。
そうだろう?
私を守るべき騎士達にすら見放された無価値な私なのだ――
少女は死にゆく私の心が作り出した幻だと確信した。
だが――
少女はとうとう目の前まで来た!
嘘だろう‥‥
幻じゃないのか?
【救助の者です!
安全な場所へお連れします!】
!?
何語だ?
聞いた事が無い言語だ。
だが、私を助けようとしてくれている事は伝わって来る。
彼女は手早く先が輪になったロープの輪の部分を私の頭から通して胴体に固定させ、私の腕の下に自分の体を入れて背中に手を回してロープをグイグイと揺らす。
それを合図にロープの先にいる人たちがロープを手繰り寄せ、私達を安全な場所へと導いてくれる様だ。
呆然と救助されながら、こんな時なのに私は少女の美しさに驚いていた。
ブルームーンブルーからグラデーションを経てシルバーパールへと輝くマーメイドブルーの髪は華やかな波を打ち、キラキラと光を放っている。
そして、甘く柔らかな赤‥‥
ローズレッドの瞳の美しさに、思わずパチパチと目を瞬いてしまう。
美しい‥‥不思議な瞳だ‥‥
ずっと見ていたい‥‥
ずっと‥‥
【もう大丈夫ですよ!
身体を休めて下さいね!】
眩しい笑顔で彼女がまた何か言った。
その笑顔に鼓動が激しくなる。
ッ、もどかしい!
彼女は何と言っているのだろう?
ハッ! ここは?
何故か荒波が届かない不思議な入り江から陸地に上がる。
すると、既に救助された者達がワッと集まって来る。
「殿下! よくぞご無事で!」
「見失ってしまって申し訳ございません!」
「皆で心配しておりました!」
嘘つけ。
海中で私を見ないフリしたのを知っているぞ‥‥
口だけの信用ならない連中から視線を外し、少女を探すが‥‥
いない!?
私は慌てて救助に当たってくれている人に話を聞こうとするが、言葉が通じない!
「殿下!
この島の人達はボニート王国語を話しています!
私で良ければ通訳致します!」
騎士の中に通訳の出来る者がいて助かった。
彼女はこの国の第一王女で、水泳が得意である為、救助に当たっているという。
王女が救助!?
‥‥‥‥
私はこれまでの自分‥‥
与えられるものを当たり前の様に享受し、義務に顔をしかめて来た自分を恥じた。
今までにも色々と助言、苦言を言って来る人達はいたが、心に響かなかった。
彼女の行動はそんな私の目をも覚ました。
私は何も感じないと思っていた自分の心を震わせてくれた彼女に感動し、感謝し、
―――恋に落ちたんだろう―――
ハッ‥‥
不意に私の耳‥‥と言うより心を捉えた小さな音。
小さいけど、確かな意思を感じさせる音――
木片を抱え直し、何とかその音の方向に首を振ると――
なッ‥見間‥‥
見間違いか!?
少女!?
船に乗っていなかったはずの少女がこちらへ泳いでくる!?
何度も波に弾かれ、押しやられ、流されながら、諦める事無く私に向かって来る!
違う。
こんな場所に少女がいるはず無い――
それ以上に、私に向かって必死に泳いでくるなど有り得ないと心が断じる。
そうだろう?
私を守るべき騎士達にすら見放された無価値な私なのだ――
少女は死にゆく私の心が作り出した幻だと確信した。
だが――
少女はとうとう目の前まで来た!
嘘だろう‥‥
幻じゃないのか?
【救助の者です!
安全な場所へお連れします!】
!?
何語だ?
聞いた事が無い言語だ。
だが、私を助けようとしてくれている事は伝わって来る。
彼女は手早く先が輪になったロープの輪の部分を私の頭から通して胴体に固定させ、私の腕の下に自分の体を入れて背中に手を回してロープをグイグイと揺らす。
それを合図にロープの先にいる人たちがロープを手繰り寄せ、私達を安全な場所へと導いてくれる様だ。
呆然と救助されながら、こんな時なのに私は少女の美しさに驚いていた。
ブルームーンブルーからグラデーションを経てシルバーパールへと輝くマーメイドブルーの髪は華やかな波を打ち、キラキラと光を放っている。
そして、甘く柔らかな赤‥‥
ローズレッドの瞳の美しさに、思わずパチパチと目を瞬いてしまう。
美しい‥‥不思議な瞳だ‥‥
ずっと見ていたい‥‥
ずっと‥‥
【もう大丈夫ですよ!
身体を休めて下さいね!】
眩しい笑顔で彼女がまた何か言った。
その笑顔に鼓動が激しくなる。
ッ、もどかしい!
彼女は何と言っているのだろう?
ハッ! ここは?
何故か荒波が届かない不思議な入り江から陸地に上がる。
すると、既に救助された者達がワッと集まって来る。
「殿下! よくぞご無事で!」
「見失ってしまって申し訳ございません!」
「皆で心配しておりました!」
嘘つけ。
海中で私を見ないフリしたのを知っているぞ‥‥
口だけの信用ならない連中から視線を外し、少女を探すが‥‥
いない!?
私は慌てて救助に当たってくれている人に話を聞こうとするが、言葉が通じない!
「殿下!
この島の人達はボニート王国語を話しています!
私で良ければ通訳致します!」
騎士の中に通訳の出来る者がいて助かった。
彼女はこの国の第一王女で、水泳が得意である為、救助に当たっているという。
王女が救助!?
‥‥‥‥
私はこれまでの自分‥‥
与えられるものを当たり前の様に享受し、義務に顔をしかめて来た自分を恥じた。
今までにも色々と助言、苦言を言って来る人達はいたが、心に響かなかった。
彼女の行動はそんな私の目をも覚ました。
私は何も感じないと思っていた自分の心を震わせてくれた彼女に感動し、感謝し、
―――恋に落ちたんだろう―――
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