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第一章

1の03 嵐の中の救助

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半年ほど前、この国にとっても私にとっても『太陽』と言える人が。

お母様――王妃陛下が亡くなった。

事故だった。



失った存在の大きさに呆然としたまま、半年が過ぎた。

この半年間の記憶がほとんど無い。



そんなある日のこと。

海が大荒れに荒れて。

島の近くを航行中だった大きな船が沈んでしまった。


ラメール王国の民は泳ぎが得意だし、親切だから!

島には『空気の実』という植物があって、それを口に入れれば、空気を吸わずに水中にしばらくいられるから!

島民の泳ぎが上手い人達は、嵐の中、船から投げ出された人々の救助に当たった。

二次災害を考えれば嵐の最中に救助活動など有り得ない事だけど‥‥


この島には不思議な入り江がある。

どんな嵐の時でも影響を受けず穏やかさを保つラメール・ベイ。

そこを拠点にして出来る限り救助活動するのはラメール王国の古くからの伝統。

他国の人から『人魚』と言われるラメールの民の矜持なのだ。


わ、私も!

私は子供だけど、泳ぎの上手さは島一番だもの!

お母様が愛したラメールの民として、やるべき事をやる!

お母様が生きていれば、出来る限り救助する様指示するはずだもの。

自分が唯一得意な泳ぎで、お母様に少しでも恩返しがしたい!


役に立ちたいの。



『王女様なんだから、そんな危険な事は俺達に任せて下さい!
シレーヌ殿下に何かあったら、亡くなった王妃陛下に申し訳が立ちません!』


そう言って眉を下げた人達もいたけど、私、王女といっても『一応』だしね。



――張り切ってたくさんの人を救助できたけど、頑張り過ぎたらしい。

疲れ果て、高熱を出し数日間寝込んでしまった。

私が寝込んでいる間に『改めて、お礼に伺う』と帰って行った人たち。

何と、大国ブルーフィンの人達だった。

ふむ、どうりで言葉が通じないはず。

大国としか分からないぐらい、かなり遠い国。

そんな遠い国の言葉は勉強してなかった。

外国の人と話す時は、ボニート王国語で大体通じる。


でも彼等の中でボニート王国語を話せる人は僅かだった。


‥‥あの御方はとても流暢に、自然にボニート王国語で話してくれたなぁ‥‥


‥‥ハッ!!

私、あの御方のお名前すら聞いてない!


か‥‥

帰ってしまった‥‥


もう、会えない‥‥


えぇ~~~~!?
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