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第四章「アイリスの節」
008#愛と向こう
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どこかで聞いたことがある。
運命の人は自分が15歳になるまでにどこかで必ず出会っていると。
幼い頃からそんな話を聞いてワクワクした日が続いたのは内緒の話で、身近にはそんな人がいるのではないかという妄想があった。
自分が見ている世界は大きくて、そこにある人達が最高で世界で1番恵まれているのではないかと考えることもあった。
ただ、それは浅はかな幻想なのだということを知らずに……。
「入って、どうぞ」
駅から徒歩数分のところにある大きな一軒家のドアを開けて怜也を家の中へと案内する。
家の中に入ると偶然なのだろうか家族はいなかった。
そんなことは気にせずに2階へと足を運んでいき、自室へと案内した。
「同年代の女の子の部屋って案外綺麗なんだね」
意外と失礼な言葉が出てきた。
少し恥ずかしかったらここで返さないと行けないと思ったのですかさず言葉を返した。
「失礼だね。これでも最近は散らかってる方よ。それに、同年代ってなに? 」
ついでに気になったことも聞いてみることにした。
「あー言ってなかったっけ? 2つ上の姉が居るんだ。あの人はいつも部屋を片付けないから他の人はどうなのかなって気になってたんだ」
なんというか、意外だった。
どちらかと言えば一人っ子という印象が強かったので少しではあるが驚いた。
そんなことはさておき、彼を近くにあった椅子に座られて話を始めた。
「あのさ、元彼のことなんだけどさ。どっちも平和に解決なんてできない気がしてきたの」
相変わらず彼は黙って頷いてくれている。
その事は相変わらずではあるがとても嬉しかった。
「だからさ、お互いのどちらかに恋人が出来たらもう何もしてこないと思うの。だからさ、明日だけでいいから恋人の役をしてくれない? 」
少し怒られる気でいた。
こんな事を言われたら私だって怒る。
ただ、彼は何も言わずにひとつ頷いてこの作戦を承諾してくれた。
「いいよ。それで君の悩みが解決するなら」
一瞬泣きそうになった。
自分の話を聞いて、何も言わずにいいよと言ってくれる人は生まれて初めてだったから。
「それじゃあ、明日駅に呼ぶから来てね」
翌日、昼前に集まった彼は珍しくおしゃれな格好をして現れた。
ちょっとボサボサしていた髪の毛をしっかりと切り、髪の毛はセットされていた。
「今日は凄い気合入ってるね」
いつもとのギャップが違いすぎて少し驚いたが、怜也は少し照れ臭く喋り始めた。
「舞香の彼氏を称するならこれぐらいしてこないと逆に失礼かなって思ってさ。という君もおしゃれしてるよね」
普段なら苗字さん呼びとかにするのにやけに気合いが入っていて面白かったが、今はそれどころじゃないと思った。
そして、2人はそのまま約束の公園の場所へと足を運んだのだった。
運命の人は自分が15歳になるまでにどこかで必ず出会っていると。
幼い頃からそんな話を聞いてワクワクした日が続いたのは内緒の話で、身近にはそんな人がいるのではないかという妄想があった。
自分が見ている世界は大きくて、そこにある人達が最高で世界で1番恵まれているのではないかと考えることもあった。
ただ、それは浅はかな幻想なのだということを知らずに……。
「入って、どうぞ」
駅から徒歩数分のところにある大きな一軒家のドアを開けて怜也を家の中へと案内する。
家の中に入ると偶然なのだろうか家族はいなかった。
そんなことは気にせずに2階へと足を運んでいき、自室へと案内した。
「同年代の女の子の部屋って案外綺麗なんだね」
意外と失礼な言葉が出てきた。
少し恥ずかしかったらここで返さないと行けないと思ったのですかさず言葉を返した。
「失礼だね。これでも最近は散らかってる方よ。それに、同年代ってなに? 」
ついでに気になったことも聞いてみることにした。
「あー言ってなかったっけ? 2つ上の姉が居るんだ。あの人はいつも部屋を片付けないから他の人はどうなのかなって気になってたんだ」
なんというか、意外だった。
どちらかと言えば一人っ子という印象が強かったので少しではあるが驚いた。
そんなことはさておき、彼を近くにあった椅子に座られて話を始めた。
「あのさ、元彼のことなんだけどさ。どっちも平和に解決なんてできない気がしてきたの」
相変わらず彼は黙って頷いてくれている。
その事は相変わらずではあるがとても嬉しかった。
「だからさ、お互いのどちらかに恋人が出来たらもう何もしてこないと思うの。だからさ、明日だけでいいから恋人の役をしてくれない? 」
少し怒られる気でいた。
こんな事を言われたら私だって怒る。
ただ、彼は何も言わずにひとつ頷いてこの作戦を承諾してくれた。
「いいよ。それで君の悩みが解決するなら」
一瞬泣きそうになった。
自分の話を聞いて、何も言わずにいいよと言ってくれる人は生まれて初めてだったから。
「それじゃあ、明日駅に呼ぶから来てね」
翌日、昼前に集まった彼は珍しくおしゃれな格好をして現れた。
ちょっとボサボサしていた髪の毛をしっかりと切り、髪の毛はセットされていた。
「今日は凄い気合入ってるね」
いつもとのギャップが違いすぎて少し驚いたが、怜也は少し照れ臭く喋り始めた。
「舞香の彼氏を称するならこれぐらいしてこないと逆に失礼かなって思ってさ。という君もおしゃれしてるよね」
普段なら苗字さん呼びとかにするのにやけに気合いが入っていて面白かったが、今はそれどころじゃないと思った。
そして、2人はそのまま約束の公園の場所へと足を運んだのだった。
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