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第二章「カリンの節」
009#眠気
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目が覚める。
今日の天気はとてつもなく青い空が広がっていた。
朝にすることを終わらせると城下町に用事があるのを思い出し、身支度をし始めた。
軽く服装を整え、帽子を被ると家を出た。
ここから城下町は徒歩で10分ぐらい掛かる。
目的地に到着し、中へ入る。
いつもなら血気盛んな町は何故か静まり返っていた。
不思議な世界であった。
普段ならはしゃいで歩く子供たちの姿もなく、街で喋る大人たちもいなかった。
幸い、目的である店は空いていたのでそこに向かい買い物を済ませた。
帰り際どうしても気になったので店主に状況を聞いてみた。
「今日とても町が静かですがなにかあったんですか? 」
その質問に対し、店主は少し驚いた様子を見せたが、直ぐに答え返してくれた。
「一昨日か? 前国王様がお亡くなりになられてな。今日新しい国王様が継かれたのだが、そいつが戦争するって言い出してな。今大騒ぎでみんなひきこもっているんだよ」
想定しているよりもとても大きな出来事だった。
国王が新しくなった?
もしかしてジョンがこんなことをしているのではないかと心配になった。
「国王様の新しい名前って分かりますか? 」
確認のために一応聞いてみた。
「えーと……ジョンだった気がするな」
最悪なことになっていた。
先に浮かんだのは国の戦争のことや戦争を仕掛けられた国の心配ではなく、ジョンのことだった。
「分かりました……。ありがとうございます」
この時の表情はとても暗かったと思う。
それでも足の運びは止まらなかった。
ただひとつ頭に浮かんだのは、ジョンに会わなければということだけである。
お城の中に正々堂々と入れる保証はなかった。
ダメ元ではあるが1回行ってみようと思い、城の前の扉へと足を運んだ。
偶然なのかは分からないがたまたま正門の扉が開いており、呆気なく侵入ができた。
中に入った時だった。
突然頭にとてつもない痛みが襲ってくる。
中を抉るような途方もない痛みはすごくキツイ物だったが、数歩行けばなんともなくなった。
多分大丈夫だろうと思いもっと先へ足を運んで行った。
石造りの廊下は何となくであるが不気味に感じた。
もう少し歩くと赤色の大きなドアが現れた。
自分の身長の数倍はあるであろう。
その大きさに圧巻されながらもゆっくり扉を引いて中へ入った。
その中にはジョンがいた。
「……キロル。来たのか……」
赤色の王族衣装に身を包んだジョン。
いつも通りの顔をしていた。
「ジョン……戦争なんてやめようよ……」
真っ先に出たのはこのセリフだった。
その言葉を聞き、ジョンはいつもの笑顔で笑っていた。
「それは……出来ない」
「なんで? 」
「なんでもだ! 分かったらさっさとどっかに行け! 」
当たりが強くなっていた。
どんだけきつい言葉を言われようと今日は絶対に引かないと決めていた。
「俺は自室に帰る。次見かけたら、一生ここに来れないようにしてやるから」
ゆっくりと背中を向き歩き始めるジョンにどんな声をかけたらいいか分からなかった。
思ったことを大声で叫ぶことにした。
「君って、辛い時いつも笑っているよね。どんだけしんどくても笑って、自分の感情を押し殺して……」
足を止め背中を向けたまま、彼は一向にこちらを向こうとはしていない。
「親父が死んだ今、俺が意志を継ぐしかないんだ……だから、キロル……ごめん」
頭を下げて立ち去っていく彼を止めたかった。
少し怖かった。
足も震えていた。
それでも、ここで止めなければいつか後悔する日がくる。
前世でも、嫌なことは逃げてさっきも喧嘩して別々になった。
ここでまた同じことをしたら今度は一生会えないかもしれない。
言うなら……今しかない。
「本当にそれが本心なの? 本当にバカ。いつも笑って、自分の意見を言わないでやり過ごそうとしてる! 辛いことがあったら助け合うってあの日約束しただろ! 自分だけで溜め込まないで少しは人に頼ることも覚えろよ! 馬鹿野郎! 」
今までにないほど大きな声で叫んだ。
周りの兵士の目つきは変わり、数人は確実に武器を構えていた。
「ジョン……いつかの日、約束したよね……? 抱え込むなら2人で背負おうって……」
彼は振り向き始める。
それでも体は疲れていたのか、どんどんと力を失っていく。
どうしてだろう……こんなにも大変なのに……眠気が酷くなっている……。
急にくる脱力感とジョンが何かを大声で叫んでいるのがわかった。
力が入らなくてそのまま地面へと叩きつけられる感覚の痛みはじわじわと遠くなって行っていた。
そのまま地面へと叩きつける衝撃と暗くなる世界を眺めてるのであった。
第二章[完]
今日の天気はとてつもなく青い空が広がっていた。
朝にすることを終わらせると城下町に用事があるのを思い出し、身支度をし始めた。
軽く服装を整え、帽子を被ると家を出た。
ここから城下町は徒歩で10分ぐらい掛かる。
目的地に到着し、中へ入る。
いつもなら血気盛んな町は何故か静まり返っていた。
不思議な世界であった。
普段ならはしゃいで歩く子供たちの姿もなく、街で喋る大人たちもいなかった。
幸い、目的である店は空いていたのでそこに向かい買い物を済ませた。
帰り際どうしても気になったので店主に状況を聞いてみた。
「今日とても町が静かですがなにかあったんですか? 」
その質問に対し、店主は少し驚いた様子を見せたが、直ぐに答え返してくれた。
「一昨日か? 前国王様がお亡くなりになられてな。今日新しい国王様が継かれたのだが、そいつが戦争するって言い出してな。今大騒ぎでみんなひきこもっているんだよ」
想定しているよりもとても大きな出来事だった。
国王が新しくなった?
もしかしてジョンがこんなことをしているのではないかと心配になった。
「国王様の新しい名前って分かりますか? 」
確認のために一応聞いてみた。
「えーと……ジョンだった気がするな」
最悪なことになっていた。
先に浮かんだのは国の戦争のことや戦争を仕掛けられた国の心配ではなく、ジョンのことだった。
「分かりました……。ありがとうございます」
この時の表情はとても暗かったと思う。
それでも足の運びは止まらなかった。
ただひとつ頭に浮かんだのは、ジョンに会わなければということだけである。
お城の中に正々堂々と入れる保証はなかった。
ダメ元ではあるが1回行ってみようと思い、城の前の扉へと足を運んだ。
偶然なのかは分からないがたまたま正門の扉が開いており、呆気なく侵入ができた。
中に入った時だった。
突然頭にとてつもない痛みが襲ってくる。
中を抉るような途方もない痛みはすごくキツイ物だったが、数歩行けばなんともなくなった。
多分大丈夫だろうと思いもっと先へ足を運んで行った。
石造りの廊下は何となくであるが不気味に感じた。
もう少し歩くと赤色の大きなドアが現れた。
自分の身長の数倍はあるであろう。
その大きさに圧巻されながらもゆっくり扉を引いて中へ入った。
その中にはジョンがいた。
「……キロル。来たのか……」
赤色の王族衣装に身を包んだジョン。
いつも通りの顔をしていた。
「ジョン……戦争なんてやめようよ……」
真っ先に出たのはこのセリフだった。
その言葉を聞き、ジョンはいつもの笑顔で笑っていた。
「それは……出来ない」
「なんで? 」
「なんでもだ! 分かったらさっさとどっかに行け! 」
当たりが強くなっていた。
どんだけきつい言葉を言われようと今日は絶対に引かないと決めていた。
「俺は自室に帰る。次見かけたら、一生ここに来れないようにしてやるから」
ゆっくりと背中を向き歩き始めるジョンにどんな声をかけたらいいか分からなかった。
思ったことを大声で叫ぶことにした。
「君って、辛い時いつも笑っているよね。どんだけしんどくても笑って、自分の感情を押し殺して……」
足を止め背中を向けたまま、彼は一向にこちらを向こうとはしていない。
「親父が死んだ今、俺が意志を継ぐしかないんだ……だから、キロル……ごめん」
頭を下げて立ち去っていく彼を止めたかった。
少し怖かった。
足も震えていた。
それでも、ここで止めなければいつか後悔する日がくる。
前世でも、嫌なことは逃げてさっきも喧嘩して別々になった。
ここでまた同じことをしたら今度は一生会えないかもしれない。
言うなら……今しかない。
「本当にそれが本心なの? 本当にバカ。いつも笑って、自分の意見を言わないでやり過ごそうとしてる! 辛いことがあったら助け合うってあの日約束しただろ! 自分だけで溜め込まないで少しは人に頼ることも覚えろよ! 馬鹿野郎! 」
今までにないほど大きな声で叫んだ。
周りの兵士の目つきは変わり、数人は確実に武器を構えていた。
「ジョン……いつかの日、約束したよね……? 抱え込むなら2人で背負おうって……」
彼は振り向き始める。
それでも体は疲れていたのか、どんどんと力を失っていく。
どうしてだろう……こんなにも大変なのに……眠気が酷くなっている……。
急にくる脱力感とジョンが何かを大声で叫んでいるのがわかった。
力が入らなくてそのまま地面へと叩きつけられる感覚の痛みはじわじわと遠くなって行っていた。
そのまま地面へと叩きつける衝撃と暗くなる世界を眺めてるのであった。
第二章[完]
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