15年後のスターチス

小糸咲希

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第三章「ゲンノショウコの節」

001#悪夢の始まり

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呼ばれるがままに広場にでてきたリリは、ミラの指定した場所へと足を運んだ。
少し居住場所から離れた広場に立っていたミラは読書をしながらその場に鎮座していた。

「……来たか。リリ、お前異世界転生しているだろ? 」

突然のことに戸惑いを隠せていないリリの表情は曇っていた。
さっきまで晴れていた空は黒くなり始め、何か良くないことが起こる気がした。

「……だとしたら、どうするつもりよ」

「何もしないさ。舞香、お前はいつも警戒が強いんだよ! 」

鋭い目でこちらを睨めつけている。
明らかに何かを知っている。
それ以上に悪巧みをしているように見えていた。
この発言はとても怪しく詰めるしかないと思い質問を返した。

「どうして前の名前を知っているの? あなた、何か知っているわね? 」

「おいおい、言葉がきついんじゃねぇのか? お嬢様よぉ! 拓也。そう言ったら分かるんじゃねぇか? 」

「……どうしてあんたがこの世界にいるのよ。転生してるとしたら、死んでるはずじゃ……」

リリの顔は青ざめる。

「……あなたって本当に気持ち悪い」

「ふっ。我にとっては褒め言葉だ! さぁここでも永遠の愛を育もうでは無いか! 」

さっきまでのミラの様子はなく、自分を殺した憎い相手が目の前に現れているという無常に湧いてくるだけだった。
彼がいつからこの意識を持っているかは分からない。
記憶にあるとして、数日前までは普通であった。
なぜこうなったかは分からないが向こうの気持ち悪い思いがあるならこっちにだって考えがあるということを思い知らさなければならないと思った。

「あなたの考えはお見通しよ。お母様に行って別のところに飛ばしてもらうわ。生憎、あなたの素行は問題になっているから」

少々強気で当たる。
前世の経験上ここまで行かなければまた酷い目に合うのかもしれない。

「……ふっ。やれるもんならやってみろ! 後悔するぞ」

ミラも強気でいた。
この男の気持ち悪さは計り知れないのは知っていた。
今日はもう関わりたくないと思ったので、黙ってその場を去ることにした。
この日は結局母親と出会うことなく、部屋の中に篭もり続けたのであった。
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