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第二章「カリンの節」
006#ユウグレノハジマリ
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月が頂上に行く少し前に2人は厩に着いた。
マーガレットを中に入れるついでにほかの馬たちの様子を確認すると誰かが餌をやりほかの世話をしてくれたのか、熟睡をしていた。
「マーガレット、今日はお疲れ様。ゆっくり休みな」
頭を軽く撫で、鞍を外すと自分の定位置へと帰っていった。
ジョンは厩の前で座って星を眺めていた。
今、丁度夏に見える星座が沢山見えていた。
星はどれ程疲れた後でも勇気をくれるような気がしてままならない。
輝きはとても綺麗でいつ見ても時間を忘れる程だった。
特に夏の大三角形と呼ばれるものはどの世界でも美しいものなんだと思えた。
なびく金髪と横顔を見れば、心做しか国王の面影もあるように見えた。
嘘偽りのない真実なんだと改めて思うことがあり、心のどこかで何故彼は城ではなくここにいるという道を選んだのかという疑問が少しばかり浮かんだ。
でも、彼には彼なりの考え方もあると思う。
だからこそ深くは聞かないということを取った。
「この景色をみると、小さい頃にみた星空を思い出すよ」
家から初めて抜け出して、一人で見た満天の星空。
あの輝きと感動は今でも忘れていない。
丁度この時期だった。
「父さん母さんは元気にしてるのかな……」
ポケットから両親が描かれた絵を取り出す。
引っ越す前にと渡され、そのまま肌身離さず持っている。
家を出てもう数年が経とうとしている。
その間、両親とは文通する仲ではあるのだが文字だけで顔を見ていない。
微かな心配と寂しさを心のどこかで思い出した。
「元気さ。きっと。俺は親と仲良くないからなんか羨ましいわ」
ジョンは気が付けばいつもの笑顔になっていた。
「俺の親父はさ、口を開けば戦争跡継ぎ戦争跡継ぎ。一人息子っていうのは仕方ないけどさ、そのせいで仲は険悪なんだよ。両親、大切にしろよ」
「おう! 」
こんな感じで2人はいつも通り雑談をしていたのだが、ジョンの変化に気がついたのは解散時間数分前だった。
「……もうこんな時間か。悪い、俺帰るわ」
立ち上がり辺りを見渡しながらジョンはいった。
「……なぁキロル。ちょっと頼みごといいか? 」
「うん? 何? 」
「もしさ、俺が道を間違えようとしてると思ったら止めてくれ」
「急にどうしたの? それぐらいならいいよ。困った時はお互い様。一緒に背負おうよ」
「そうだな。はは。いや……なんでもない。それじゃあよろしくな」
この明るい笑顔にいつの間にか違和感を感じるようになっていた。
でも、このことに気がついたのは後に良かったのだと思える結果になったのは間違いないのだった。
マーガレットを中に入れるついでにほかの馬たちの様子を確認すると誰かが餌をやりほかの世話をしてくれたのか、熟睡をしていた。
「マーガレット、今日はお疲れ様。ゆっくり休みな」
頭を軽く撫で、鞍を外すと自分の定位置へと帰っていった。
ジョンは厩の前で座って星を眺めていた。
今、丁度夏に見える星座が沢山見えていた。
星はどれ程疲れた後でも勇気をくれるような気がしてままならない。
輝きはとても綺麗でいつ見ても時間を忘れる程だった。
特に夏の大三角形と呼ばれるものはどの世界でも美しいものなんだと思えた。
なびく金髪と横顔を見れば、心做しか国王の面影もあるように見えた。
嘘偽りのない真実なんだと改めて思うことがあり、心のどこかで何故彼は城ではなくここにいるという道を選んだのかという疑問が少しばかり浮かんだ。
でも、彼には彼なりの考え方もあると思う。
だからこそ深くは聞かないということを取った。
「この景色をみると、小さい頃にみた星空を思い出すよ」
家から初めて抜け出して、一人で見た満天の星空。
あの輝きと感動は今でも忘れていない。
丁度この時期だった。
「父さん母さんは元気にしてるのかな……」
ポケットから両親が描かれた絵を取り出す。
引っ越す前にと渡され、そのまま肌身離さず持っている。
家を出てもう数年が経とうとしている。
その間、両親とは文通する仲ではあるのだが文字だけで顔を見ていない。
微かな心配と寂しさを心のどこかで思い出した。
「元気さ。きっと。俺は親と仲良くないからなんか羨ましいわ」
ジョンは気が付けばいつもの笑顔になっていた。
「俺の親父はさ、口を開けば戦争跡継ぎ戦争跡継ぎ。一人息子っていうのは仕方ないけどさ、そのせいで仲は険悪なんだよ。両親、大切にしろよ」
「おう! 」
こんな感じで2人はいつも通り雑談をしていたのだが、ジョンの変化に気がついたのは解散時間数分前だった。
「……もうこんな時間か。悪い、俺帰るわ」
立ち上がり辺りを見渡しながらジョンはいった。
「……なぁキロル。ちょっと頼みごといいか? 」
「うん? 何? 」
「もしさ、俺が道を間違えようとしてると思ったら止めてくれ」
「急にどうしたの? それぐらいならいいよ。困った時はお互い様。一緒に背負おうよ」
「そうだな。はは。いや……なんでもない。それじゃあよろしくな」
この明るい笑顔にいつの間にか違和感を感じるようになっていた。
でも、このことに気がついたのは後に良かったのだと思える結果になったのは間違いないのだった。
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