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第二章「カリンの節」
001#周りの事
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「……また夢で逢いましょう……」
小さい頃の夢は思い出さない、もしくはもう見れないということが多いのだが、あのころの夢をここ数年でまた見るようになった。
小さい頃に見た恐怖を持って何度も泣きじゃくった経験はこの世界に来てからはなく、トラウマというのはないのではないかと思える程になっていた。
あの別れから気がつけば10年も経っていた。
あの山の家から少々離れた商店街に身を移し今、両親は商人の家を切り盛りしている。
幼い頃からの体験というものは一瞬と言うのはよく聞く話だが、こうしてまた体験してみればそうなんだなと、何となくではあるが確信が起こる。
あの日の約束は今も覚えている。
今日は15歳の誕生日であり、この世界では成人という扱いになっているらしい。
前の世界は、確か享年18歳だったから成人と呼ばれるのは何気に初体験ではある。
初めての感覚に何となく嬉しさを覚えたのは今じゃいい思い出だ。
幼い顔は抜けて男の子から男になったように凛々しい顔になり、髪の毛は耳が隠れるぐらいまで伸びていた。
昔と今で変わったかって聞かれると、なんと言えばいいのか、不思議な感覚ではあるのだがそのうちになれるであろうと言うことで気にしないことにした。
この世界について知れたことは沢山あった。
まず、この世界は2つの国に別れているということ。
今住んでいる国はオリーブ家が代々統治している。
それにここ数百年間はダントツに関係が最悪らしいのだ。
とても大変なことがあったと言うことしか本にも書かれていたので、真相を知ることはまだ出来ていない。
職業というものを手に入れた。
その中でもエリートと呼ばれる馬商人をしているのがそれがすごく楽しいのだ。
朝は速いし大変なことも多いのだが、前世でしたいと思っていたことが仕事になったのは不幸中の幸いだろう。
馬については今でも好きなので特に苦ではないのだ。
友人関係も良好。
家を少し離れたところにジョンという少年が住んでいる。
彼との出会いはとても不思議なものだったのを覚えている。
短い金髪と男らしい凛々しい姿をしていて容姿端麗である。
数年前、初めてあった日に商店街で振り回された。
それがきっかけで遊ぶ日が増えた。
ある日、夢を明かしたらなれるという後押しをして、今の自分のための1歩が踏め出せたきっかけの人物なのだ。
今日は珍しく彼が牧場に遊びに来るらしいので少しではあるが楽しみにしていた。
昼時に馬たちにご飯をやっている時だった。
「その馬、とってもかっこいいな。名前なんて言うんだ? 」
ジョンがやってきた。
いつも通りフードを被っていたが、それを外しこちらを見つめていた。
「こいつはマーガレットというんだ」
首を擦りながら話を返す。
「そうか。白馬ってこの辺だと珍しいな」
雪のように白く、美しい馬体を持ったマーガレット。
生まれた時、その白さの隣にマーガレットが咲いていたのを見てそう命名した。
「うん。結構最近生まれたばかりで、白馬はここでも初めてらしい」
馬好きということで仲良くなり、いつも間にかよく遊ぶ中にはなっていた。
だが、この男。
謎が多いのだ。
家の場所やフルネームは教えてくれないしで、孤児院の子なのではないことも考えはしたが、遊んでゆくうちにどうでも良くなり今は気にしていない。
あの約束まであと5年。
向こうも覚えていれぼいいな。
そんなことを思いながら星空を見上げることにした。
小さい頃の夢は思い出さない、もしくはもう見れないということが多いのだが、あのころの夢をここ数年でまた見るようになった。
小さい頃に見た恐怖を持って何度も泣きじゃくった経験はこの世界に来てからはなく、トラウマというのはないのではないかと思える程になっていた。
あの別れから気がつけば10年も経っていた。
あの山の家から少々離れた商店街に身を移し今、両親は商人の家を切り盛りしている。
幼い頃からの体験というものは一瞬と言うのはよく聞く話だが、こうしてまた体験してみればそうなんだなと、何となくではあるが確信が起こる。
あの日の約束は今も覚えている。
今日は15歳の誕生日であり、この世界では成人という扱いになっているらしい。
前の世界は、確か享年18歳だったから成人と呼ばれるのは何気に初体験ではある。
初めての感覚に何となく嬉しさを覚えたのは今じゃいい思い出だ。
幼い顔は抜けて男の子から男になったように凛々しい顔になり、髪の毛は耳が隠れるぐらいまで伸びていた。
昔と今で変わったかって聞かれると、なんと言えばいいのか、不思議な感覚ではあるのだがそのうちになれるであろうと言うことで気にしないことにした。
この世界について知れたことは沢山あった。
まず、この世界は2つの国に別れているということ。
今住んでいる国はオリーブ家が代々統治している。
それにここ数百年間はダントツに関係が最悪らしいのだ。
とても大変なことがあったと言うことしか本にも書かれていたので、真相を知ることはまだ出来ていない。
職業というものを手に入れた。
その中でもエリートと呼ばれる馬商人をしているのがそれがすごく楽しいのだ。
朝は速いし大変なことも多いのだが、前世でしたいと思っていたことが仕事になったのは不幸中の幸いだろう。
馬については今でも好きなので特に苦ではないのだ。
友人関係も良好。
家を少し離れたところにジョンという少年が住んでいる。
彼との出会いはとても不思議なものだったのを覚えている。
短い金髪と男らしい凛々しい姿をしていて容姿端麗である。
数年前、初めてあった日に商店街で振り回された。
それがきっかけで遊ぶ日が増えた。
ある日、夢を明かしたらなれるという後押しをして、今の自分のための1歩が踏め出せたきっかけの人物なのだ。
今日は珍しく彼が牧場に遊びに来るらしいので少しではあるが楽しみにしていた。
昼時に馬たちにご飯をやっている時だった。
「その馬、とってもかっこいいな。名前なんて言うんだ? 」
ジョンがやってきた。
いつも通りフードを被っていたが、それを外しこちらを見つめていた。
「こいつはマーガレットというんだ」
首を擦りながら話を返す。
「そうか。白馬ってこの辺だと珍しいな」
雪のように白く、美しい馬体を持ったマーガレット。
生まれた時、その白さの隣にマーガレットが咲いていたのを見てそう命名した。
「うん。結構最近生まれたばかりで、白馬はここでも初めてらしい」
馬好きということで仲良くなり、いつも間にかよく遊ぶ中にはなっていた。
だが、この男。
謎が多いのだ。
家の場所やフルネームは教えてくれないしで、孤児院の子なのではないことも考えはしたが、遊んでゆくうちにどうでも良くなり今は気にしていない。
あの約束まであと5年。
向こうも覚えていれぼいいな。
そんなことを思いながら星空を見上げることにした。
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