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第三章「ゲンノショウコの節」
夢の話
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「あなたでしょ! あの人を押して事故を起こしたの! 」
「そうだ! これで……君と俺の…永遠の愛を! 」
「ほんとあなたって気持ち悪い! 別れたらもう関わらないって言ったはずでしょ! 」
「そうだとも。ただ、あいつが死んだら……話は別だろ? 」
「元々の狙いはこれだったのね!? もういい! さよなら! 」
「くっ……こんなことなら! 」
背を向けた瞬間、背中に激痛が走った。
何度も何度も、冷たい何かが背中に突き刺さる。
私はゆっくり、目を閉じる。
……。
昨日も眠りに着いたいつもの部屋で目が覚めた。
またあの時の夢を見ていた。
この世界に来て早くも10年の時が経っているのに、まだうなされてしまうのか。
最初、赤子になっていたのを確認した時は本当に異世界転生はあるものなんだと感動を覚えた。
だがこの世界で生活していく上で現代の文明というものは素晴らしかったのだと実感した。
娯楽はほぼないから家の図書室にある本を沢山読んだり、最近の流行である油絵をしてみたり菜園をしてみたりと色んなものに手を出した。
異世界転生をしたなら前の記憶を忘れて真っ当に生きたいのだがどうやらそれは出来ないらしい。
「……起きよう」
軽くけのびをしてストレッチをすると腰まで伸ばしてある水色の髪の毛を括る。
いつもの青いドレスとスターチスのネックレスを身につけて最初に菜園所に向かい花たちに水をやる。
最初に埋めたばらの花は綺麗な輝きを放っている。
馬の世話と身支度を終えると片付けをして食卓へ向かう。
これが最近のルーティーンだ。
「遅かったわね。リリ」
私と同じ髪色をしたこの女性。
この人は私の母親であり、この国の女王だ。
数年前、たまたまこの国の現国王に気に入られ貧相な出身ながらも上り詰めた人だ。
欲に溺れず悪役令嬢などと呼ばれることなく良い関係を築いている。
「今日は馬たちが寝ていたから起こすのに手間取ったの」
「そうなのね。子供はどうだった? 」
「元気そうだったよ」
軽い雑談をしていると近くの扉が開く。
「リリ、後でこれを手伝ってくれないか? 」
こいつはこの国の王子。
名前はミラ。
5つ下の弟である。
少し金に染った髪の毛が特徴的でナルシストに近い人である。
私はこいつのような人間は苦手だ。
弟となっているがあんまり好きじゃない。
自分を殺してこの世界に送ったあのクズに似ているからだ。
少し嫌な顔をしたと思ったが断るとまたお母さんに何か言われるかもしれないと感じたので黙って頷く。
そして、用意されたパンを口に頬張るとミラの所へと向きって行った。
「あと5年……か……。覚えてるといいな」
軽く目を閉じて、私はスターチスのネックレスを軽く握った。
「そうだ! これで……君と俺の…永遠の愛を! 」
「ほんとあなたって気持ち悪い! 別れたらもう関わらないって言ったはずでしょ! 」
「そうだとも。ただ、あいつが死んだら……話は別だろ? 」
「元々の狙いはこれだったのね!? もういい! さよなら! 」
「くっ……こんなことなら! 」
背を向けた瞬間、背中に激痛が走った。
何度も何度も、冷たい何かが背中に突き刺さる。
私はゆっくり、目を閉じる。
……。
昨日も眠りに着いたいつもの部屋で目が覚めた。
またあの時の夢を見ていた。
この世界に来て早くも10年の時が経っているのに、まだうなされてしまうのか。
最初、赤子になっていたのを確認した時は本当に異世界転生はあるものなんだと感動を覚えた。
だがこの世界で生活していく上で現代の文明というものは素晴らしかったのだと実感した。
娯楽はほぼないから家の図書室にある本を沢山読んだり、最近の流行である油絵をしてみたり菜園をしてみたりと色んなものに手を出した。
異世界転生をしたなら前の記憶を忘れて真っ当に生きたいのだがどうやらそれは出来ないらしい。
「……起きよう」
軽くけのびをしてストレッチをすると腰まで伸ばしてある水色の髪の毛を括る。
いつもの青いドレスとスターチスのネックレスを身につけて最初に菜園所に向かい花たちに水をやる。
最初に埋めたばらの花は綺麗な輝きを放っている。
馬の世話と身支度を終えると片付けをして食卓へ向かう。
これが最近のルーティーンだ。
「遅かったわね。リリ」
私と同じ髪色をしたこの女性。
この人は私の母親であり、この国の女王だ。
数年前、たまたまこの国の現国王に気に入られ貧相な出身ながらも上り詰めた人だ。
欲に溺れず悪役令嬢などと呼ばれることなく良い関係を築いている。
「今日は馬たちが寝ていたから起こすのに手間取ったの」
「そうなのね。子供はどうだった? 」
「元気そうだったよ」
軽い雑談をしていると近くの扉が開く。
「リリ、後でこれを手伝ってくれないか? 」
こいつはこの国の王子。
名前はミラ。
5つ下の弟である。
少し金に染った髪の毛が特徴的でナルシストに近い人である。
私はこいつのような人間は苦手だ。
弟となっているがあんまり好きじゃない。
自分を殺してこの世界に送ったあのクズに似ているからだ。
少し嫌な顔をしたと思ったが断るとまたお母さんに何か言われるかもしれないと感じたので黙って頷く。
そして、用意されたパンを口に頬張るとミラの所へと向きって行った。
「あと5年……か……。覚えてるといいな」
軽く目を閉じて、私はスターチスのネックレスを軽く握った。
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