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第一章「ニゲラの節」
005:半年後
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再び満月の夜に出会うようになってから半年が経った。
毎月決められた日は木の下に向かうと必ず彼女はいた。
会う度に話を沢山し、その月にあったくだらないような事や面白いことを沢山共有しあった。
今月もその日がやってくる。
いつも通り身支度をして両親が寝たのを確認するとこっそり玄関から夜の世界へと足を進めた。
木の下まではいつも走っている。
息切れを起こしたりもするがこれをずっと続けているうちに慣れ初めて来ていた。
今夜も無事に着く。
まだ彼女は来ていない。
座って待とう。
腰を下ろした。
この時、初めて夜中に家を抜け出した時のことを思い出した。
時刻は深夜11時を回ろうとしていた。
約束を守る為に昼寝をし、夜中まで目が冴えてはいたが寝ているかを確認しにくる両親を警戒してベットで寝たフリをしていた。
何時間がたったであろうか。
部屋から生活音がすっかり消え去った後、両親が寝静まったのを確認した。
玄関からこっそりと外に飛び出した。
静まり返った世界は恐怖と心配という罪悪感に近い感情が湧いてくる。
昼に鳴いている鳥の声が聴こえない。
空を大きく照らしている太陽はどこかへ消え、月がゆっくりと大地を照らしている。
近くの茂みからは何かしらの動物のうめき声すらも聞こえてきそうであった。
不気味とはこういうものなのだと少し考えてしまう程である。
一心不乱に目的地へと足を急がした。
気が付けば到着していた。
少し一息を着いて空を見上げれる。
最初に気が付かなかった程に大きな星がこちらを見つめて来ていた。
「綺麗……」
無数に広がる星は、いつかに見た時よりも数倍以上の感動があるような気がした。
この日、初めて夜の世界というものを知った……そんな気がした。
「……キロル……? 」
聞きたかった声がした。
ゆっくりと顔を下げるとそこにはいつも通りリリが立っている。
夜に負けない笑顔をうかべ、白い服とサラサラした水色の髪が月明かりに照らされて少し輝いていた。
「今月は何があったの? 色んな話を聞かせてね! 」
2人は小一時間ほど喋り解散する。
これ程に幸せなことは無いのだろうか。
今日も彼女はやって来た。
ただ、今日はひとつ表情が違った。
顔から本来の笑顔は消えて何か悲しんでいるように見えた。
「……リリ? どうしたの? 」
一瞬で何かがあったかが分かる。
「あのね、私来月末に引っ越すことになったの。だからもう……会えないかもしれないの」
「……え? 」
「だからね、あと会えてと1回なの。うちは厳しいからこの日しか会えないし……多分連絡手段は全て絶たれると思うの……」
何も出来ないという状況は目に見えている。
「私のね、お母さんが再婚するんだ。隣の国の王子と。私だけ置いていくのも嫌だと思うし、ついて行くことになったの」
彼女の目から少し光が無くなっていた。
どんな声を掛ければいいのか分からなかった。
落ち込んでいるのは見て分かりきっていた。
いい言葉が分からない。
そっと手を握った。
「……いよ」
リリは何かを呟いていた。
「なんて言ったの? ごめん、ちょっと聞こえなかった……」
心做しか頬に雫が着いているように見えた。
「ううん! なんでもない! 」
頬に軽く擦って空を眺める姿に再び、あの子の面影が浮かんできた。
でも、考えすぎる癖があるのを思い出して深く追うことは出来なかった。
その中でひとつの言葉が出てくる。
「それなら……僕らが大人になった時、ここでまた集まらない……? 」
今がダメなら、将来に会う約束をすればいい。
良くする考え方なのだが、なんだかんだで覚えている人の方が多いと思える。
「うん! 絶対だよ! それじゃあ……10年後ね! 」
少し曇っていた目は輝きを取り戻した。
「約束! 忘れないでね」
2人は再び手を繋ぐ。
そのまま星空を見つめ続けた。
月が西に沈みかけたのを見て、時間も時間なので別れて家に向かった。
到着し、中へこっそり入ると母親が机の上で本を読んでいた。
「こんな時間にどこに行ってたの? 」
毎月決められた日は木の下に向かうと必ず彼女はいた。
会う度に話を沢山し、その月にあったくだらないような事や面白いことを沢山共有しあった。
今月もその日がやってくる。
いつも通り身支度をして両親が寝たのを確認するとこっそり玄関から夜の世界へと足を進めた。
木の下まではいつも走っている。
息切れを起こしたりもするがこれをずっと続けているうちに慣れ初めて来ていた。
今夜も無事に着く。
まだ彼女は来ていない。
座って待とう。
腰を下ろした。
この時、初めて夜中に家を抜け出した時のことを思い出した。
時刻は深夜11時を回ろうとしていた。
約束を守る為に昼寝をし、夜中まで目が冴えてはいたが寝ているかを確認しにくる両親を警戒してベットで寝たフリをしていた。
何時間がたったであろうか。
部屋から生活音がすっかり消え去った後、両親が寝静まったのを確認した。
玄関からこっそりと外に飛び出した。
静まり返った世界は恐怖と心配という罪悪感に近い感情が湧いてくる。
昼に鳴いている鳥の声が聴こえない。
空を大きく照らしている太陽はどこかへ消え、月がゆっくりと大地を照らしている。
近くの茂みからは何かしらの動物のうめき声すらも聞こえてきそうであった。
不気味とはこういうものなのだと少し考えてしまう程である。
一心不乱に目的地へと足を急がした。
気が付けば到着していた。
少し一息を着いて空を見上げれる。
最初に気が付かなかった程に大きな星がこちらを見つめて来ていた。
「綺麗……」
無数に広がる星は、いつかに見た時よりも数倍以上の感動があるような気がした。
この日、初めて夜の世界というものを知った……そんな気がした。
「……キロル……? 」
聞きたかった声がした。
ゆっくりと顔を下げるとそこにはいつも通りリリが立っている。
夜に負けない笑顔をうかべ、白い服とサラサラした水色の髪が月明かりに照らされて少し輝いていた。
「今月は何があったの? 色んな話を聞かせてね! 」
2人は小一時間ほど喋り解散する。
これ程に幸せなことは無いのだろうか。
今日も彼女はやって来た。
ただ、今日はひとつ表情が違った。
顔から本来の笑顔は消えて何か悲しんでいるように見えた。
「……リリ? どうしたの? 」
一瞬で何かがあったかが分かる。
「あのね、私来月末に引っ越すことになったの。だからもう……会えないかもしれないの」
「……え? 」
「だからね、あと会えてと1回なの。うちは厳しいからこの日しか会えないし……多分連絡手段は全て絶たれると思うの……」
何も出来ないという状況は目に見えている。
「私のね、お母さんが再婚するんだ。隣の国の王子と。私だけ置いていくのも嫌だと思うし、ついて行くことになったの」
彼女の目から少し光が無くなっていた。
どんな声を掛ければいいのか分からなかった。
落ち込んでいるのは見て分かりきっていた。
いい言葉が分からない。
そっと手を握った。
「……いよ」
リリは何かを呟いていた。
「なんて言ったの? ごめん、ちょっと聞こえなかった……」
心做しか頬に雫が着いているように見えた。
「ううん! なんでもない! 」
頬に軽く擦って空を眺める姿に再び、あの子の面影が浮かんできた。
でも、考えすぎる癖があるのを思い出して深く追うことは出来なかった。
その中でひとつの言葉が出てくる。
「それなら……僕らが大人になった時、ここでまた集まらない……? 」
今がダメなら、将来に会う約束をすればいい。
良くする考え方なのだが、なんだかんだで覚えている人の方が多いと思える。
「うん! 絶対だよ! それじゃあ……10年後ね! 」
少し曇っていた目は輝きを取り戻した。
「約束! 忘れないでね」
2人は再び手を繋ぐ。
そのまま星空を見つめ続けた。
月が西に沈みかけたのを見て、時間も時間なので別れて家に向かった。
到着し、中へこっそり入ると母親が机の上で本を読んでいた。
「こんな時間にどこに行ってたの? 」
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