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春
❶過去〈月 白兎〉
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これは自分が絶対に思い出したくない過去の事だった。記憶は保育園に遡る――
僕が保育園の年少さんの頃からずっと、周りから変な目で見られたり、馬鹿にされたりしていた。それも全部、僕の性格と見た目のせいだろう。影でみんな決まって同じようなセリフを吐き出す。
「ねぇ、あの子の髪の毛、白いんだけどー!……おじいちゃん?いや、おばあちゃん?」
「目、真っ赤!!怖っ!怪物だぁぁ!!」
「気持ち悪いー!」
そんな言葉を聞く度に、僕は胸が苦しくなった。そこで泣き出してしまうと、またさらにからかわれた。「弱虫」とか「泣き虫」だって酷いことを言ってくるんだ。先生が注意しても、何も変わらなかった。それでまたもっといじめられる。僕は引っ込み思案で、臆病で、オドオドとしている性格だから、周りに友達なんていなかった。できなかった。いつもひとりぼっちだった。みんなとワイワイ楽しく遊んでいる子たちが、羨ましくて、羨ましくて仕方がなかった。
僕はみんなと違うから……
そうやって僕は思い込み、周りの子にも、先生にも関わることをやめていた。毎日、目立たない隅っこで本を読んだり、ひとり遊びをして過ごしていた。それが僕にとって当たり前の日々だったから。
でも、そんな退屈で、つまらない日々にも転機が訪れた。
僕が保育園の年長さんになった頃だった。季節は冬。外は雪がしんしんと降り積もっていた。外遊びをする人がほとんどだったけど、僕は温かい部屋の中にいてのんびりと本を読んでいた。すると、いつもいじめてくる子たちが、ズカズカと僕の方にやってきた。そして、読んでいた本を取り上げられてしまった。
「や、やめてよ……」
気が弱いせいで、小さな声になってしまった。それも、口の中でモゴモゴと言ってしまった。やはり、その声は届いておらず、寄って集っては大声で笑われるばかりだった。僕はまた泣きそうになり、手をぎゅっと握って堪えていた。その時だった。
「やめろよ」
ふと、何人かのいじめっ子の後ろに立っている男の子がいた。目はキッととんがり、つり上がっていて、怒っているように見えた。何人かが振り向き、「はぁ?」と軽蔑した声を上げた。「何言ってんの?」と馬鹿にしている声を上げている子もいた。笑われものの標的は男の子に向けられた。それでもその男の子は微動だにせず、どっしりと構えていた。その気迫に負け、いじめっ子たちはずりと後ずさりをした。
その瞬間――
パシン。
突然、その男の子がいじめっ子の一人の頭を叩いた。一人はよろっと後ろにふらめいた。男の子は何事も無かったかのように、すました顔をしていた。
「いって……!何すんだよ!!」
そう怒鳴りながら、男の子の胸をドンと押すと、男の子は「早く返してやれよ!」と叫び、頬を叩いた。すると、互いに叩き合い、蹴り合い、口喧嘩が止まらなくなった。室内の中にいた子も、僕も唖然とその様子を見ていた。すると、大きな騒ぎに気づいたのか、職員室の方に行っていた僕達の組の先生がやってきた。先生も驚いた様子だったが、間に入り、「やめなさい!」と真剣に両方を宥めていた。何とか暴力は納まったものの、まだ口でごもごもと何か喋っていた。終いには、お互い鋭い目つきで睨み合い、ぷいとそっぽを向いてしまった。
僕が保育園の年少さんの頃からずっと、周りから変な目で見られたり、馬鹿にされたりしていた。それも全部、僕の性格と見た目のせいだろう。影でみんな決まって同じようなセリフを吐き出す。
「ねぇ、あの子の髪の毛、白いんだけどー!……おじいちゃん?いや、おばあちゃん?」
「目、真っ赤!!怖っ!怪物だぁぁ!!」
「気持ち悪いー!」
そんな言葉を聞く度に、僕は胸が苦しくなった。そこで泣き出してしまうと、またさらにからかわれた。「弱虫」とか「泣き虫」だって酷いことを言ってくるんだ。先生が注意しても、何も変わらなかった。それでまたもっといじめられる。僕は引っ込み思案で、臆病で、オドオドとしている性格だから、周りに友達なんていなかった。できなかった。いつもひとりぼっちだった。みんなとワイワイ楽しく遊んでいる子たちが、羨ましくて、羨ましくて仕方がなかった。
僕はみんなと違うから……
そうやって僕は思い込み、周りの子にも、先生にも関わることをやめていた。毎日、目立たない隅っこで本を読んだり、ひとり遊びをして過ごしていた。それが僕にとって当たり前の日々だったから。
でも、そんな退屈で、つまらない日々にも転機が訪れた。
僕が保育園の年長さんになった頃だった。季節は冬。外は雪がしんしんと降り積もっていた。外遊びをする人がほとんどだったけど、僕は温かい部屋の中にいてのんびりと本を読んでいた。すると、いつもいじめてくる子たちが、ズカズカと僕の方にやってきた。そして、読んでいた本を取り上げられてしまった。
「や、やめてよ……」
気が弱いせいで、小さな声になってしまった。それも、口の中でモゴモゴと言ってしまった。やはり、その声は届いておらず、寄って集っては大声で笑われるばかりだった。僕はまた泣きそうになり、手をぎゅっと握って堪えていた。その時だった。
「やめろよ」
ふと、何人かのいじめっ子の後ろに立っている男の子がいた。目はキッととんがり、つり上がっていて、怒っているように見えた。何人かが振り向き、「はぁ?」と軽蔑した声を上げた。「何言ってんの?」と馬鹿にしている声を上げている子もいた。笑われものの標的は男の子に向けられた。それでもその男の子は微動だにせず、どっしりと構えていた。その気迫に負け、いじめっ子たちはずりと後ずさりをした。
その瞬間――
パシン。
突然、その男の子がいじめっ子の一人の頭を叩いた。一人はよろっと後ろにふらめいた。男の子は何事も無かったかのように、すました顔をしていた。
「いって……!何すんだよ!!」
そう怒鳴りながら、男の子の胸をドンと押すと、男の子は「早く返してやれよ!」と叫び、頬を叩いた。すると、互いに叩き合い、蹴り合い、口喧嘩が止まらなくなった。室内の中にいた子も、僕も唖然とその様子を見ていた。すると、大きな騒ぎに気づいたのか、職員室の方に行っていた僕達の組の先生がやってきた。先生も驚いた様子だったが、間に入り、「やめなさい!」と真剣に両方を宥めていた。何とか暴力は納まったものの、まだ口でごもごもと何か喋っていた。終いには、お互い鋭い目つきで睨み合い、ぷいとそっぽを向いてしまった。
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