Passing 〜僕達の「好き」〜

*花*

文字の大きさ
上 下
13 / 29

❶過去〈月 白兎〉

しおりを挟む
これは自分が絶対に思い出したくない過去の事だった。記憶は保育園に遡る――


僕が保育園の年少さんの頃からずっと、周りから変な目で見られたり、馬鹿にされたりしていた。それも全部、僕の性格と見た目のせいだろう。影でみんな決まって同じようなセリフを吐き出す。

「ねぇ、あの子の髪の毛、白いんだけどー!……おじいちゃん?いや、おばあちゃん?」
「目、真っ赤!!怖っ!怪物だぁぁ!!」
「気持ち悪いー!」

そんな言葉を聞く度に、僕は胸が苦しくなった。そこで泣き出してしまうと、またさらにからかわれた。「弱虫」とか「泣き虫」だって酷いことを言ってくるんだ。先生が注意しても、何も変わらなかった。それでまたもっといじめられる。僕は引っ込み思案で、臆病で、オドオドとしている性格だから、周りに友達なんていなかった。できなかった。いつもひとりぼっちだった。みんなとワイワイ楽しく遊んでいる子たちが、羨ましくて、羨ましくて仕方がなかった。

僕はみんなと違うから……

そうやって僕は思い込み、周りの子にも、先生にも関わることをやめていた。毎日、目立たない隅っこで本を読んだり、ひとり遊びをして過ごしていた。それが僕にとって当たり前の日々だったから。


でも、そんな退屈で、つまらない日々にも転機が訪れた。

僕が保育園の年長さんになった頃だった。季節は冬。外は雪がしんしんと降り積もっていた。外遊びをする人がほとんどだったけど、僕は温かい部屋の中にいてのんびりと本を読んでいた。すると、いつもいじめてくる子たちが、ズカズカと僕の方にやってきた。そして、読んでいた本を取り上げられてしまった。

「や、やめてよ……」

気が弱いせいで、小さな声になってしまった。それも、口の中でモゴモゴと言ってしまった。やはり、その声は届いておらず、寄って集っては大声で笑われるばかりだった。僕はまた泣きそうになり、手をぎゅっと握って堪えていた。その時だった。

「やめろよ」

ふと、何人かのいじめっ子の後ろに立っている男の子がいた。目はキッととんがり、つり上がっていて、怒っているように見えた。何人かが振り向き、「はぁ?」と軽蔑した声を上げた。「何言ってんの?」と馬鹿にしている声を上げている子もいた。笑われものの標的は男の子に向けられた。それでもその男の子は微動だにせず、どっしりと構えていた。その気迫に負け、いじめっ子たちはずりと後ずさりをした。

その瞬間――

パシン。

突然、その男の子がいじめっ子の一人の頭を叩いた。一人はよろっと後ろにふらめいた。男の子は何事も無かったかのように、すました顔をしていた。

「いって……!何すんだよ!!」

そう怒鳴りながら、男の子の胸をドンと押すと、男の子は「早く返してやれよ!」と叫び、頬を叩いた。すると、互いに叩き合い、蹴り合い、口喧嘩が止まらなくなった。室内の中にいた子も、僕も唖然とその様子を見ていた。すると、大きな騒ぎに気づいたのか、職員室の方に行っていた僕達の組の先生がやってきた。先生も驚いた様子だったが、間に入り、「やめなさい!」と真剣に両方を宥めていた。何とか暴力は納まったものの、まだ口でごもごもと何か喋っていた。終いには、お互い鋭い目つきで睨み合い、ぷいとそっぽを向いてしまった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平熱が低すぎて、風邪をひいても信じてもらえない男の子の話

こじらせた処女
BL
平熱が35℃前半だから、風邪を引いても37℃を超えなくていつも、サボりだと言われて心が折れてしまう話

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

記憶喪失の君と…

R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。 ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。 順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…! ハッピーエンド保証

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...