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五章 本当は……【前】
五.原因
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俺は最後の力を振り絞り、その場に立ってみせた。まだ痛む箇所がいくつかあったが、今はそんなこと、ちっとも気にならなかった。よろよろと歩き、窓の前まで来た。そして、ガラガラと音を立てて、窓を開けた。太陽の光が差し込んできた。眩しいくらいにピカピカと輝き、希望に満ち溢れているように、俺を照らしていた。そして、風がふわりと俺の頬を撫でて、通っていった。「頑張って」「負けるな」と優しく励ますように。俺は窓のふちにだらしなく手を置いて、外の光景をぼんやりと眺めた。
こうやって見てみると、この世界も普通に平和なんだよなぁ……何で、俺今こんなことになってんのかなぁ……
なんて、呑気に思いながら、ふっと短いため息をついた。そして、答えを求めるように、後ろを振り返った。月琉はおどおどした様子で、その場に座り込んでいた。今は不気味で狂気のオーラが消え失せ、何かに怯えている、ごく普通のロリータ少女に見える。また風が吹いてきて、スカートがひらりとなびいた。さっきまでの姿勢が逆転した。月琉の視界には、逆光を浴びていて俺自身が光っているような姿が映る。目玉は月琉に寄り添うように、歩み寄ってきた。そして、キッと鋭く睨みつけるようにしてこっちを見た。その目付きに俺もビクッと肩が動いた。目玉がジリジリと近づいてくる。まるで、仇でも打つかのように、復讐心で燃えたぎった瞳で寄ってくる。殺しにかかりそうで怖い。
あっ、そういえば。
この目玉は月琉のお父さんだったんだ。話していた。すごく誇らしげな表情で。じゃあ、もしかして――
目玉は月琉の目の前でピタリと止まった。瞳の奥は変わらぬまま、月琉のことを庇うように、身構えていた。俺のことを警戒していた。
「お父……さん……」
月琉の弱々しい細い声が、ちくりと俺の胸に刺さってきた。それと同時に、なぜだか月琉の曇っている瞳が、希望の光でも差し込んできたかのように、キラキラと明るさが灯っているように見えた。俺は胸の辺りをぎゅっと掴んだ。そして、もしかしてから確信へと変化した。
――守ろうとしているんだ。
……月琉は大切な家族だから。たった一人の可愛い可愛い娘だから。
いや、でも何で――
確信はしたものの、また新たな疑問が浮かんできた。俺はすっと月琉の方を見る。相変わらず月琉は、不安げな顔で、不穏そうに瞳を微かにあちこちへ動かしていた。そして、もう一度目玉の方へ顔を向ける。
こいつ……何で、今にも泣きそうな顔をしているんだ?
深い緑色の瞳がキュッと細くなって、今にも涙がこぼれんばかりの目付きをしていた。目がプルプルと小刻みに震えている。襲ってこない隙に、原因は何か考えてみることにした。とにかく考えてみた。
前、月琉と一緒に遊んであげられなかった後悔?それとも、まだ死にたくなかった?いや、その逆で、もう人生に疲れきっていたから、楽になれてよかったって言う意味の嬉し涙か??それか、今の月琉に対しての恐怖、辛さ?それで、俺に助けを求めているのか?
分からない、分からない。俺が眉間に皺を寄せて考え込んでいると、ふと、脳に聞き慣れた声が響いてきた。だが、かなり深刻な声のような感じがした。
「……晋太。大丈夫か?」
「アイ……!」
俺は月琉達に気づかれないよう、口を少しだけ動かし、ひっそりと名前を呼んだ。するとアイは「よかった」と一言だけ言って、また「晋太」とさっきの声に、強い真剣さが混じった声で呼ばれた。そして急に、「俺が考えた作戦がある」とキッパリ言った。俺は「お、おぅ……」と曖昧な返事をして、アイの作戦を聞くことにした。聞きながらも、俺の視線はついつい目玉の方へ向けてしまう。やっぱり、俺に何か訴えかけて、助けを求めているように見えてしまう。目玉の後ろにいる月琉は、小さなナイフに手をかけ、ぐっと握りしめていた。深紅の瞳には暗さも明るさもなく、また『狂気』の文字が浮かび始めていた。
こうやって見てみると、この世界も普通に平和なんだよなぁ……何で、俺今こんなことになってんのかなぁ……
なんて、呑気に思いながら、ふっと短いため息をついた。そして、答えを求めるように、後ろを振り返った。月琉はおどおどした様子で、その場に座り込んでいた。今は不気味で狂気のオーラが消え失せ、何かに怯えている、ごく普通のロリータ少女に見える。また風が吹いてきて、スカートがひらりとなびいた。さっきまでの姿勢が逆転した。月琉の視界には、逆光を浴びていて俺自身が光っているような姿が映る。目玉は月琉に寄り添うように、歩み寄ってきた。そして、キッと鋭く睨みつけるようにしてこっちを見た。その目付きに俺もビクッと肩が動いた。目玉がジリジリと近づいてくる。まるで、仇でも打つかのように、復讐心で燃えたぎった瞳で寄ってくる。殺しにかかりそうで怖い。
あっ、そういえば。
この目玉は月琉のお父さんだったんだ。話していた。すごく誇らしげな表情で。じゃあ、もしかして――
目玉は月琉の目の前でピタリと止まった。瞳の奥は変わらぬまま、月琉のことを庇うように、身構えていた。俺のことを警戒していた。
「お父……さん……」
月琉の弱々しい細い声が、ちくりと俺の胸に刺さってきた。それと同時に、なぜだか月琉の曇っている瞳が、希望の光でも差し込んできたかのように、キラキラと明るさが灯っているように見えた。俺は胸の辺りをぎゅっと掴んだ。そして、もしかしてから確信へと変化した。
――守ろうとしているんだ。
……月琉は大切な家族だから。たった一人の可愛い可愛い娘だから。
いや、でも何で――
確信はしたものの、また新たな疑問が浮かんできた。俺はすっと月琉の方を見る。相変わらず月琉は、不安げな顔で、不穏そうに瞳を微かにあちこちへ動かしていた。そして、もう一度目玉の方へ顔を向ける。
こいつ……何で、今にも泣きそうな顔をしているんだ?
深い緑色の瞳がキュッと細くなって、今にも涙がこぼれんばかりの目付きをしていた。目がプルプルと小刻みに震えている。襲ってこない隙に、原因は何か考えてみることにした。とにかく考えてみた。
前、月琉と一緒に遊んであげられなかった後悔?それとも、まだ死にたくなかった?いや、その逆で、もう人生に疲れきっていたから、楽になれてよかったって言う意味の嬉し涙か??それか、今の月琉に対しての恐怖、辛さ?それで、俺に助けを求めているのか?
分からない、分からない。俺が眉間に皺を寄せて考え込んでいると、ふと、脳に聞き慣れた声が響いてきた。だが、かなり深刻な声のような感じがした。
「……晋太。大丈夫か?」
「アイ……!」
俺は月琉達に気づかれないよう、口を少しだけ動かし、ひっそりと名前を呼んだ。するとアイは「よかった」と一言だけ言って、また「晋太」とさっきの声に、強い真剣さが混じった声で呼ばれた。そして急に、「俺が考えた作戦がある」とキッパリ言った。俺は「お、おぅ……」と曖昧な返事をして、アイの作戦を聞くことにした。聞きながらも、俺の視線はついつい目玉の方へ向けてしまう。やっぱり、俺に何か訴えかけて、助けを求めているように見えてしまう。目玉の後ろにいる月琉は、小さなナイフに手をかけ、ぐっと握りしめていた。深紅の瞳には暗さも明るさもなく、また『狂気』の文字が浮かび始めていた。
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