上 下
21 / 45

3日目(水) 楽しい家族とのお出かけと静寂に包まれた喫茶店3

しおりを挟む
じゃじゃん、と言って、手を広げて見せたのは、とあるデパートだ。

「ここが第二の目的地です!」
「わぁぁぁ……!大きなデパートね~…!色々な品物が置いてそうね!」

母は興奮気味で食らいついてきた。父は「おお」と言って、建物を見上げていた。
私がここに来た理由は買い物をしたり、色々見て回ると言うのもあるが、ここに来た最大の理由、それは…………

「とんぼ玉のアクセサリーを作りに来たのです!」

それを聞いた二人は目をぱちくりさせた。その時、母は何かを思い出したように、はっとした顔をして見せた。

「もしかして……!」
「そうです!前、お母さんは何かアクセサリーが欲しいって言ってたでしょ。で、お父さんはバッグにつけるちょっとした小物が欲しいって言ってたからさ」
「あぁ、確かに」

と父も思い出したように声を出した。私は「ここでとんぼ玉アクセサリー手作り体験会があるって知ったから」と言う説明も付け足した。「それじゃ、行こう」と言うと、母も父も快い笑顔でうんと頷き、私の後を付いて行った。


人がうじゃうじゃと沢山いるデパートの中、ついに私達は体験会の前までやって来ることが出来た。どこを見ても人、人、人。迷子になっている人もいそうな感じがする。よくはぐれないで来たものだ。私はふぅと軽く息をつき、透明な窓ガラス製のドアを開けると中から女性スタッフが出てきて、「こんにちは、今日は何名様ですか」と聞いてきた。三と指で示すと、「では、こちらへどうぞ」と席に案内された。テーブルの上には色鮮やかなとんぼ玉が沢山あった。様々な種類の飴玉のようにカラフルで綺麗だった。私達は説明を十分に聞いた後、黙々と制作に取り掛かった。



「………………出来た!」
「私も~」
「俺も」

見せ合うのは後にして、先に会計を済ませた。丁寧に紙袋に包んでくれた後、中にいるスタッフ全員で「ありがとうございましたー」
と明るい声で送ってくれた。私は軽くお辞儀をして、そこから出た。


その後も買い物をしたり、色々な店舗を回ったりして、家族と楽しいひと時を過ごすことが出来た。私達は大満足だった。そして、人混みの多かったデパートから出ると、次は車の多い駐車場へと切り替わった。沢山の車の中から私の車を見つけ、中で見せ合い会を始めることにした。

「じゃーん、見て見て~ これすっごく可愛いよねぇ」

私が作ったのは、鮮やかな水色に浮かぶ桜模様の大きなとんぼ玉が目立つブレスレットだ。自分なりにバランスを考え、その一個以外は、あえて目立たないように派手なものにはしなかった。母が作ったのは、全体的にピンク色のとんぼ玉が連なった、シンプルなネックレスだった。でもその中に小さな白い花が散りばめられていて、可愛さも感じる。父が作ったのは宇宙をイメージしたストラップだった。キラキラと輝いていて、綺麗だった。みんなのものを見て、「どれもいいね」と三人同時に言った。その後「息ぴったりだったねぇ」と私は言い、三人で笑い合った。

「……はい、今日はこれで終わり。今日は楽しかったねぇ。また行けるといいね」
「ええ、そうね」
「うん、そうだな」

と母と父は微笑んで頷いていた。今日のお出かけは大成功だった、と自分でも思った。そして私もうん と大きく頷いた後、車を発進させた。

そう言えば、私はもう一つとんぼ玉で作っていたものがあるが、家族には見せなかった。透き通る大空のようなとんぼ玉を使ったペンダントだ。でも、これは誰にも言えない、私だけの秘密なのだ。

作ったばかりのブレスレットを手首にはめ、運転していた。とんぼ玉一つ一つが夕日に照らされてキラキラと眩しく輝いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

天使と狼

トウリン
恋愛
女癖の悪さに定評のある小児科医岩崎一美《いわさき かずよし》が勤める病棟に、ある日新人看護師、小宮山萌《こみやま もえ》がやってきた。肉食系医師と小動物系新米看護師。年齢も、生き方も、経験も、何もかもが違う。 そんな、交わるどころか永久に近寄ることすらないと思われた二人の距離は、次第に変化していき……。 傲慢な男は牙を抜かれ、孤独な娘は温かな住処を見つける。 そんな、物語。 三部作になっています。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

処理中です...