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1日目(月) 帰ってきた、私の実家3

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「……それじゃ、行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい」
「瀬良ー、気をつけて行ってくるんだぞー」

と居間から母と父の声が聞こえてきた。私は「はーい」と答えながら、靴を履き、そして、家を出た。

「おぉっ、今日はとてもいい天気だなぁ」

私は空を見上げ、発言した。雲ひとつもない快晴だ。それから、スマホの画面と向き合った。

「美香ちゃんから家までの道のりの地図を写真で送られてきたけど……たどり着けるかなぁ……?」

しばらく私は家の前でスマホの画面とにらめっこしていた。方向にはあまり自信がない。今、自分が頼りに出来るのは前の自分の記憶と美香ちゃんから貰った地図、そして、家の外見の情報も教えて貰った。家は四角い感じで、黒色だった。私はとりあえず、自身がなかったら一旦立ち止まり、地図を確認してから進むことにした。

「どうか無事に着いてくれますように……」

私は心の中で祈ってから、美香ちゃんの家へと歩き出した。



「…………ふぅ……やっと着いたぁあ……」

もう、身も心もボロボロだ。地図を見て確認したとしても道には迷うし、歩いている途中、おじさんに声をかけられて、スーパーまでの道のりを教えて……それまでならいいけど、着いてきてって…… あぁ……疲れたぁ。
でも、そのおじさんからお礼としてお茶を貰えたのはとても嬉しかったなぁ。ちょうどその時喉が乾いていたからねぇ。

私はペットボトルのお茶最後の一口分を飲んでから、インターホンをポチッと押した。中には何かの音楽が流れていた。それから「はーい」という明るい女性の声が聞こえた。ガチャとドアが開いた。中から、黒色のカーディガンを羽織り、ピンク色のガウチョパンツを履いた女性が出てきた。私は目線を顔の方へ向けた。その顔を見て私は、はっと息を呑んだ。「綺麗……」と思わず声に出してしまった。きりっとした大きな黒色の目。鼻筋の通ったモデルさんのような顔立ち。口元のホクロ。美の塊のようなものだ。私が見とれていると、女性の人が「大丈夫?」と私に少し顔を近づけてきた。

「はっ……!あ、いや、だっ、大丈夫です……ところでここ……美香さんの家ですか……?私、玉原瀬良って言うんですけど……」
「そう、ならよかったわ。あなたが瀬良ちゃんなのね。こうやって会ってみると……何だか、改まっちゃうわね。さぁ、入って入って」

と私を笑顔で迎え入れてくれた。私は「おじゃまします」と行って、お辞儀をしてから、美香ちゃんの後について行った。歩く度にさらさらと揺れる黒い長い髪。それについても、つい見とれてしまった。

私……この家に居て大丈夫なのかなぁ……?気持ちを強く保てるのか…… 気をとらわれすぎて、仕事に身が入らないとか……

私が美香ちゃんの家に来たのは、ある仕事をする為だった。私は色々と心配な点があるのだが、仕事はきちんとやって帰ろうという思いで、この時間を過ごすことにした。

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