【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

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Study181: silence「沈黙」

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我々は理性によってのみではなく、心によって真実を知る
────  We know the truth, not only by the reason, but also by the heart.

理論や理性だけではたどり着けない真実があると言う。
真崎の中で感情が追いつかないにしろ、理屈では解釈出来ない何かが反応して、自分を意識しているのだろうか。
それに、誤解されたくないとここまで主張すると言う事は、もしかして、本当に誤解なのかもしれない。

「落とすって言うのは、吐かせるってコト。あのナース、あんたのカルテ持ってたから」

真崎がソファを立ち歩を詰める。
間近に迫った真崎の瞳には悪戯な好奇心が窺えた。

「…………なんで私のカルテ」
「あんた、点滴してたよな?何かの理由で入院してんだろ?けどさ、同室にまでされてんのに、オレにだけ・・・・・隠すんだよ、あんたが何で入院してんのか」

記憶喪失でも迷惑なくらいに察しがいい。
この分だと、受験勉強の成果も健在かもしれない。

「あのナースなら口割るかと思ってね」

その自信に満ちた表情からして、真崎は自分の価値を認識している。
無意識に本能のまま、と言う訳ではないようだ。
夢月はそこに、僅かに安堵した。
同時に期待に胸が疼く。
気にはしてくれているようだ。

「教えてくれた?…………」

おずおずと夢月は尋ねる。

「いや、けど……………………代わりにこんなの拾った」

真崎が夢月の目の前にヒラヒラと白黒の紙をひらつかせた。
そんな真崎の仕草に既視感を覚え、夢月は紙ではなく真崎を凝視する。
『夢月先生をください』
そう言われた時にそんな場面が。


「これ、誰の子?」


真崎の声にハッとする。
白黒の紙を見て、それがエコー写真だと漸く気づいた。
破れたり汚れたりしないように透明フィルムに写真とメモを挟み込んだ。

『真崎くんと初受診。6週くらい。胎嚢と胎芽を確認、心拍は確認できず──── 』

後から母子手帳に記入しようと思っていた。

さっき落としたんだ…………
しかも真崎くんに拾われたなんて
こんなの誰が父親かなんて…………わかる。


「……………………オレの?」


応えを待つ真崎の瞳は、穴の中に吸い込んでいきそうな程に黒く深く、真実を探っている。
ただ夢月は沈黙するしかできなかった。
それに対して驚愕と沈黙で返している時点で、すでにそれは肯定なのだろう。

本当の正解が理性でたどり着いた正解でないことなんて沢山ある。
正しいことだけが正解ではないし、人のとる行動は理性的な判断や損得勘定だけのものとは限らない。
だから怖いのだ。

その責任が確かに真崎にあったとしても、今の真崎には「知らない」と言えてしまうのだ。

迷惑な話だと突き放されたら?
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