【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

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Study122: spin a daydream「妄想にふける」

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検査薬を買いに行きたい………
けど、いつ、どのタイミングで？
コンビニには売ってないよね……………
出勤する時間にドラッグストア開いてるのかな？
帰りは無理だよな………清水先生の車だろうし。
一層の事、今？今なのかな？
……………今、どうやって抜け出す？？

夢月はソファで二人、真崎と肩を寄せる。
何度も一緒に過ごした場所なのに、隠し事のせいで居心地が悪い。
夢月はそっと隣を盗み見た。
テレビ画面を見つめる真崎の横顔は穏やかに見える。
真崎は何事もなかったように、普通に優しく甘い。

それにしても、睫毛長い………綺麗な横顔。
あっくんの時からそこは変わらないかな？
あれから4年か………4年でこんなに変わるもんなんだな。
そういえば、ただの生徒だった頃とも違う気がする。
髪型？髪、少し伸びたかな？

耳にかかる髪を横に流しているせいか、その横顔は普段にも増して大人びている。
今日はゆっくりしようと、真崎は夢月が観たがっていた映画のDVDを借りて来てくれた。
言われてみると、二人で肩を並べゆっくりと過ごす日曜日は久しぶりだ。
そしてあれから必要以上に触れず、求めても来ない。
夢月の身体を気遣い、家事もさせてはくれない。

子どもが得意そうには見えないけれど………
世話好きだし、気が利くし、案外良い父親になるのかも。
それに真崎くんに似た女の子なら絶対美少女になる！
男の子なら、あっくんみたいな子になるのかもっ
可愛い！そんな息子、めっちゃ可愛いっ

………………ん？
待って待って、ちょっと待って私。
まだ十代の未来ある若者を捕まえて『良い父親』とか、ないでしょう？！
弁護士目指すんだよっ！！
絶対遣り手の弁護士になるしっ
第一にその前に検査薬っっ
………はっきりさせないと！！

馬鹿な事を考えてしまったと真崎から視線を外し、クッションを抱える。
妊娠しているかもしれないと思う前は、ブレずに真っ直ぐに思っていた。
真崎には、なりたい将来を掴んで欲しい。
警官なら警官に、弁護士と決めたなら弁護士に。
なりたい仕事に就くと言うことは幸せな事だ。
だから、掴んで欲しかった。
それなのに、今は気を抜くと手に入る筈のない光景を思い浮かべてしまう。
自分がいて、真崎がいて、その腕に抱く赤ちゃん。
幸せが降り注ぐような明るく温かい時間を夢見てしまう。

私は、家族を夢見てるのかな………
私は赤ちゃんが欲しいの？
ずっと一緒にいたいけど、それって
真崎くんと結婚したいって事？？

夢月はクッションを握り締め、再びこっそり隣へと視線を移し、ぎょっとした。
真崎がこちらを見ている。
しかも、まるで今初めて目が合った訳ではないような、悪戯な笑みを浮かべている。

「映画じゃなくてオレを鑑賞しながら百面相？」
「え？あっ…………、う、うん」
「へー、じゃあ、感想は？」

真崎が夢月に向き直り、ソファの背もたれに腕を乗せた。
妄想しかしてないのに、感想なんて言える訳がない。

「………わ、私、買い物行ってくる」

思わずクッションを抱えたままソファを立つ。
「はっ？」
「す、すぐ戻るから」
「待て待て待て待て」
脈絡のない行動に真崎は慌てて夢月の手を掴んだ。
「熱あるし、オレが行くって」
「真崎くんには頼めないものなの！」
「生理用品とか？」
「そ、そう！それを選んで買いたいの」
「トイレに山ほどストックあるけど？」
怪訝に眉を顰め見上げてくる瞳の奥に懐疑心が潜ませられている。
昨日の事は無かった事にはしていない。
疑いを伏せているだけだ。
責めずにいてくれている。
「そ、そうだっけ？じゃあ、いいかな………」
夢月は諦めてソファへと戻った。

真崎くんは、優しい。
それを振り切って
………………買いに行けない。
駅前の薬局がすごく遠い………

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