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Study112: squeeze「抱き締める」
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『人は女に生まれるのではない、女になるのだ。』
── One is not born, but rather becomes, a woman.
フランスの女性作家がそんな名言を残している。
どの本で目にしたのか、いつの事だったか、もうわからないくらいの記憶の底に眠るその言葉が、真崎に抱かれているとふと過ぎる。
与えられる愛撫に悦ぶ身体が、女の本能を知らしめる。
堪らない幸せと充足感、その心地好さに沈み込む。
浮上したくない、現実の中には………
ふわふわとした意識の浮遊に夢月は微睡む。
頭の下にある真崎の腕が視線の先にスラリと伸び、投げ出された大きな手の平と長く細い指先が見える。
互いに求め合い果てた後のその時間が好きだ。
背中にあるしっとりと染み込むような真崎の体温、労わるように腰に当てがわれる手の平、そして枕には硬い筋肉質な腕、背後にある優しい吐息。
その全てを抱え込みたくなる。
失くしたくない。
何時迄も、記憶しておきたい。
愛しい、幸せな時間。
ふと、真崎の寝息が聞こえ夢月は微睡みの中から覚醒した。
自分より真崎が先に寝入るのは珍しい。
やはり根を詰めた試験勉強に疲れたのだろう。
期末試験が始まり3日目、明日が最終日だ。
初日から今日まで真崎は黙々と勉強し、夜も寝ているのかどうか怪しいくらいだった。
今の内にシャワーを浴びて洗濯をしてしまおうかと、夢月はそっと身体を起こす。
「………どこ行くの?」
腰の上にあった真崎の手が夢月の腹部に回り引き止めた。
「シャワー浴びようかなって」
「あとで一緒に浴びよ」
背中を真崎の口付けが這い上がり、夢月の吐息が震える。
あと、ということはこれからまた一戦交えるのだろうか。
真崎の手がそれを示すように肌を這い、胸の膨らみに触れた。
背中に感じる柔らかい唇の感触とくすぐる様な尖りへの愛撫が、じんわりと下腹部を熱くした。
目に入ったベットサイドの時計は日付を越えようとしている。
明日は試験最終日、本来なら快楽に溺れている場合ではない。
「………真崎くん、今日はもう寝よ?」
気持ちを切り替え真崎の手から逃れるように身をよじると、背後から回った真崎の腕ががっしりと腹部を押さえ込んだ。
「夢月だってまだ足りないだろ?」
「そうだけどっ………」
「そうなんだ」
「そ、そうじゃなくてっ」
「そうじゃないの?」
くすくすと真崎が夢月の肌の上で楽しそうに笑うと、頸に頬を擦り寄せる。
意外にも真崎の甘えるような仕草に、夢月は逃げるのをやめた。
SEXを始める訳ではない雰囲気だ。
「………夢月は明日には結果わかんの?」
「ううん、………明日は私は採点だけで」
「………そっか」
涼子の出した条件など軽くクリアできるかのような、そんな余裕を見せていた真崎が見せる不安。
夢月はそれに初めて触れた気がした。
期末トップ3入り、その条件をクリアしたとしても涼子は何処までを判断し、容認するのだろうか。
真崎の本気を探る為の条件だとしたら、そこから判断するわけで関係を容認される訳ではないのかもしれない。
とりあえずの第一関門突破、今回の条件クリアはほんの入口であり、スタート地点なのだ。
夢月はゆっくりと真崎の腕の中で向き直り、真崎の頭を胸元へ引き寄せた。
そっと力を込めて抱き締める。
自分に出来ることは何だろうかと考えてみても、これくらいしか思いつかなかった。
結果がどうあれ、それごと全部受け止める。
温もりで与えられる安心感や幸福感、それに愛しさを真崎が教えてくれたから。
── One is not born, but rather becomes, a woman.
フランスの女性作家がそんな名言を残している。
どの本で目にしたのか、いつの事だったか、もうわからないくらいの記憶の底に眠るその言葉が、真崎に抱かれているとふと過ぎる。
与えられる愛撫に悦ぶ身体が、女の本能を知らしめる。
堪らない幸せと充足感、その心地好さに沈み込む。
浮上したくない、現実の中には………
ふわふわとした意識の浮遊に夢月は微睡む。
頭の下にある真崎の腕が視線の先にスラリと伸び、投げ出された大きな手の平と長く細い指先が見える。
互いに求め合い果てた後のその時間が好きだ。
背中にあるしっとりと染み込むような真崎の体温、労わるように腰に当てがわれる手の平、そして枕には硬い筋肉質な腕、背後にある優しい吐息。
その全てを抱え込みたくなる。
失くしたくない。
何時迄も、記憶しておきたい。
愛しい、幸せな時間。
ふと、真崎の寝息が聞こえ夢月は微睡みの中から覚醒した。
自分より真崎が先に寝入るのは珍しい。
やはり根を詰めた試験勉強に疲れたのだろう。
期末試験が始まり3日目、明日が最終日だ。
初日から今日まで真崎は黙々と勉強し、夜も寝ているのかどうか怪しいくらいだった。
今の内にシャワーを浴びて洗濯をしてしまおうかと、夢月はそっと身体を起こす。
「………どこ行くの?」
腰の上にあった真崎の手が夢月の腹部に回り引き止めた。
「シャワー浴びようかなって」
「あとで一緒に浴びよ」
背中を真崎の口付けが這い上がり、夢月の吐息が震える。
あと、ということはこれからまた一戦交えるのだろうか。
真崎の手がそれを示すように肌を這い、胸の膨らみに触れた。
背中に感じる柔らかい唇の感触とくすぐる様な尖りへの愛撫が、じんわりと下腹部を熱くした。
目に入ったベットサイドの時計は日付を越えようとしている。
明日は試験最終日、本来なら快楽に溺れている場合ではない。
「………真崎くん、今日はもう寝よ?」
気持ちを切り替え真崎の手から逃れるように身をよじると、背後から回った真崎の腕ががっしりと腹部を押さえ込んだ。
「夢月だってまだ足りないだろ?」
「そうだけどっ………」
「そうなんだ」
「そ、そうじゃなくてっ」
「そうじゃないの?」
くすくすと真崎が夢月の肌の上で楽しそうに笑うと、頸に頬を擦り寄せる。
意外にも真崎の甘えるような仕草に、夢月は逃げるのをやめた。
SEXを始める訳ではない雰囲気だ。
「………夢月は明日には結果わかんの?」
「ううん、………明日は私は採点だけで」
「………そっか」
涼子の出した条件など軽くクリアできるかのような、そんな余裕を見せていた真崎が見せる不安。
夢月はそれに初めて触れた気がした。
期末トップ3入り、その条件をクリアしたとしても涼子は何処までを判断し、容認するのだろうか。
真崎の本気を探る為の条件だとしたら、そこから判断するわけで関係を容認される訳ではないのかもしれない。
とりあえずの第一関門突破、今回の条件クリアはほんの入口であり、スタート地点なのだ。
夢月はゆっくりと真崎の腕の中で向き直り、真崎の頭を胸元へ引き寄せた。
そっと力を込めて抱き締める。
自分に出来ることは何だろうかと考えてみても、これくらいしか思いつかなかった。
結果がどうあれ、それごと全部受け止める。
温もりで与えられる安心感や幸福感、それに愛しさを真崎が教えてくれたから。
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