95 / 259
Study95: start negotiations with 「交渉に入る」
しおりを挟む
戦々恐々とは、今の自分みたいな状況だろうか。
夢月は真崎と園田を交互に見やってから、真崎のシャツを掴んで遠慮がちに引っ張る。
「真崎くん、私、平気だから、話聞こうよ。今回誤解を与えたのも、私達の事隠す為の嘘からだし、ね?」
「夢月が平気でもオレは平気じゃない。ニコニコ笑って談笑なんかできないよ」
自分を見下ろす真崎の瞳からは不安が溢れている。
園田は真崎との関係を知ってしまったのだ。
真崎なりに打開策は考えてはいるのだろうけど、園田と言う人物への警戒心が強い敵視を生んでいる。
警戒心は必要だけれど、あまり攻撃し過ぎても良くない気がするし、「勘違いでした。じゃあ帰ります」では解決にならない。
何とか丸く収める方法はないのだろうか。
「彼が言ってることは正しい。夢月先生、すみませんでした。まず謝罪するべきでした」
頭を下げる園田を冷ややかに見下ろし、真崎はシャツを掴む夢月の手を握った。
「では、オレ達は今回の略取誘拐の件を、園田さんは夢月とオレの関係を、互いに他言しない、と言う交換条件はいかがですか?」
痒いところに手が届いたような、真崎が口にした解決案に夢月は強く頷く。
「オレらの関係がバレたら最悪クビと退学、それに比べて略取誘拐罪で逮捕でもされたら園田さんは社会的にかなりマズい立ち場になりますよね。園田家には大ダメージだ」
いい案だと思ったけど、何だろうか………
口調がちょっと脅し込みのような?
「出世、したばかりでしたっけ?園田さんにとって悪い申し出ではないはずです」
自分の時と言い、鈴木の時と言い、真崎はこう言う交渉が上手いと思う。
「あ、それに、カミングアウトする覚悟はありますか?今回の件が公になると、蓮との事も知れるかもしれない。蓮にも影響が出ますよね」
園田の顔が一瞬にして引き攣った。
夢月は真崎の腕を引いて園田から距離を取ると、背伸びをし声を潜める。
「真崎くん、ちょっとやり過ぎな気が………」
「あれくらいしねーと効き目ねーだろ」
「だけど、清水先生のことを持ち出すのは、少し違う気がして」
「………夢月、甘い」
真崎が深い息を吐くと、夢月の頭に手を置いた。
「殴られて怪我までしてんのに」
「もう痛くないし、真崎くんが来てくれたからそれでいいかなって」
「うわー、お人好し発言………」
呆れたように真崎が笑い、夢月もつられて笑う。
「わかりました、それでお願いします」
気づくと園田がこちらを見ていた。
「交換条件を呑みます」
この時は、これで落着したと思ったのだ。
全て上手く転んだと、もう夜道に怯える必要もない、真崎との日々も戻る。
真崎の手の平を頭に感じながら、心底ホッとしていた。
夢月は真崎と園田を交互に見やってから、真崎のシャツを掴んで遠慮がちに引っ張る。
「真崎くん、私、平気だから、話聞こうよ。今回誤解を与えたのも、私達の事隠す為の嘘からだし、ね?」
「夢月が平気でもオレは平気じゃない。ニコニコ笑って談笑なんかできないよ」
自分を見下ろす真崎の瞳からは不安が溢れている。
園田は真崎との関係を知ってしまったのだ。
真崎なりに打開策は考えてはいるのだろうけど、園田と言う人物への警戒心が強い敵視を生んでいる。
警戒心は必要だけれど、あまり攻撃し過ぎても良くない気がするし、「勘違いでした。じゃあ帰ります」では解決にならない。
何とか丸く収める方法はないのだろうか。
「彼が言ってることは正しい。夢月先生、すみませんでした。まず謝罪するべきでした」
頭を下げる園田を冷ややかに見下ろし、真崎はシャツを掴む夢月の手を握った。
「では、オレ達は今回の略取誘拐の件を、園田さんは夢月とオレの関係を、互いに他言しない、と言う交換条件はいかがですか?」
痒いところに手が届いたような、真崎が口にした解決案に夢月は強く頷く。
「オレらの関係がバレたら最悪クビと退学、それに比べて略取誘拐罪で逮捕でもされたら園田さんは社会的にかなりマズい立ち場になりますよね。園田家には大ダメージだ」
いい案だと思ったけど、何だろうか………
口調がちょっと脅し込みのような?
「出世、したばかりでしたっけ?園田さんにとって悪い申し出ではないはずです」
自分の時と言い、鈴木の時と言い、真崎はこう言う交渉が上手いと思う。
「あ、それに、カミングアウトする覚悟はありますか?今回の件が公になると、蓮との事も知れるかもしれない。蓮にも影響が出ますよね」
園田の顔が一瞬にして引き攣った。
夢月は真崎の腕を引いて園田から距離を取ると、背伸びをし声を潜める。
「真崎くん、ちょっとやり過ぎな気が………」
「あれくらいしねーと効き目ねーだろ」
「だけど、清水先生のことを持ち出すのは、少し違う気がして」
「………夢月、甘い」
真崎が深い息を吐くと、夢月の頭に手を置いた。
「殴られて怪我までしてんのに」
「もう痛くないし、真崎くんが来てくれたからそれでいいかなって」
「うわー、お人好し発言………」
呆れたように真崎が笑い、夢月もつられて笑う。
「わかりました、それでお願いします」
気づくと園田がこちらを見ていた。
「交換条件を呑みます」
この時は、これで落着したと思ったのだ。
全て上手く転んだと、もう夜道に怯える必要もない、真崎との日々も戻る。
真崎の手の平を頭に感じながら、心底ホッとしていた。
0
お気に入りに追加
380
あなたにおすすめの小説
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
一つ、お尋ねしてよろしいですか?
アキヨシ
恋愛
甚大災害で命を落したバツイチ子持ちのおばちゃんは異世界転生を果たす。
今度は貴族令嬢。でも父親にはガン無視されて不遇な生活を送る事になるかと思えばそうでもなく、父親以外には普通に大事にされている。
しかもこの異世界、現代に通じる魔導具があり、インフラ整備され、ご飯も美味しい。魔法のおかげで便利生活が送れてる!
あれ?前世の記憶で無双とかする隙間がないじゃない!
という事で、魔法の使える普通の貴族令嬢として頑張って生きていこうとしたのに……王子の婚約者候補とかフツーに嫌ですメンドクサイ!
え、神の恩寵がある?だから役に立つ?――いやいや、ないない、もう充分国は栄えているって。
え、魔力の相性が良い?――いや、ちょっと迫られても……さては、おまえロリだな!?
という年の差カップル(?)の攻防の物語です。
※基本西洋風な異世界ですがとても現代的で便利な世界です。
※設定は独自のものが多く、貴族的なあれこれは厳密なものではありません。生暖かく受け流してくださいませ。
※他サイト様にも掲載しています。
王立学園食堂部にて〜没落令嬢は観察中〜
yanako
恋愛
ここは、王立学園の食堂
私はそこで働いてる、没落令嬢。
沢山の貴族の子息令嬢たちが集うこの学園では
今日も沢山の人間模様が見られるのです
(不定期更新予定)
【完結】婚約者を寝取られた公爵令嬢は今更謝っても遅い、と背を向ける
高瀬船
恋愛
公爵令嬢、エレフィナ・ハフディアーノは目の前で自分の婚約者であり、この国の第二王子であるコンラット・フォン・イビルシスと、伯爵令嬢であるラビナ・ビビットが熱く口付け合っているその場面を見てしまった。
幼少時に婚約を結んだこの国の第二王子と公爵令嬢のエレフィナは昔から反りが合わない。
愛も情もないその関係に辟易としていたが、国のために彼に嫁ごう、国のため彼を支えて行こうと思っていたが、学園に入ってから3年目。
ラビナ・ビビットに全てを奪われる。
※初回から婚約者が他の令嬢と体の関係を持っています、ご注意下さい。
コメントにてご指摘ありがとうございます!あらすじの「婚約」が「婚姻」になっておりました…!編集し直させて頂いております。
誤字脱字報告もありがとうございます!
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。
音無砂月
恋愛
幼い頃から気心知れた中であり、婚約者でもあるディアモンにある日、「君は運命の相手じゃない」と言われて、一方的に婚約破棄される。
ディアモンは獣人で『運命の番』に出会ってしまったのだ。
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
兄弟がイケメンな件について。
どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。
「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。
イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる