【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

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Study95: start negotiations with 「交渉に入る」

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戦々恐々とは、今の自分みたいな状況だろうか。
夢月は真崎と園田を交互に見やってから、真崎のシャツを掴んで遠慮がちに引っ張る。

「真崎くん、私、平気だから、話聞こうよ。今回誤解を与えたのも、私達の事隠す為の嘘からだし、ね?」
「夢月が平気でもオレは平気じゃない。ニコニコ笑って談笑なんかできないよ」

自分を見下ろす真崎の瞳からは不安が溢れている。
園田は真崎との関係を知ってしまったのだ。
真崎なりに打開策は考えてはいるのだろうけど、園田と言う人物への警戒心が強い敵視を生んでいる。
警戒心は必要だけれど、あまり攻撃し過ぎても良くない気がするし、「勘違いでした。じゃあ帰ります」では解決にならない。
何とか丸く収める方法はないのだろうか。

「彼が言ってることは正しい。夢月先生、すみませんでした。まず謝罪するべきでした」

頭を下げる園田を冷ややかに見下ろし、真崎はシャツを掴む夢月の手を握った。

「では、オレ達は今回の略取誘拐の件を、園田さんは夢月とオレの関係を、互いに他言しない、と言う交換条件はいかがですか?」
痒いところに手が届いたような、真崎が口にした解決案に夢月は強く頷く。
「オレらの関係がバレたら最悪クビと退学、それに比べて略取誘拐罪で逮捕でもされたら園田さんは社会的にかなりマズい立ち場になりますよね。園田家には大ダメージだ」

いい案だと思ったけど、何だろうか………
口調がちょっと脅し込みのような?

「出世、したばかりでしたっけ?園田さんにとって悪い申し出ではないはずです」
自分の時と言い、鈴木の時と言い、真崎はこう言う交渉が上手いと思う。
「あ、それに、カミングアウトする覚悟はありますか?今回の件が公になると、蓮との事も知れるかもしれない。蓮にも影響が出ますよね」

園田の顔が一瞬にして引き攣った。
夢月は真崎の腕を引いて園田から距離を取ると、背伸びをし声を潜める。
「真崎くん、ちょっとやり過ぎな気が………」
「あれくらいしねーと効き目ねーだろ」
「だけど、清水先生のことを持ち出すのは、少し違う気がして」
「………夢月、甘い」
真崎が深い息を吐くと、夢月の頭に手を置いた。
「殴られて怪我までしてんのに」
「もう痛くないし、真崎くんが来てくれたからそれでいいかなって」
「うわー、お人好し発言………」
呆れたように真崎が笑い、夢月もつられて笑う。

「わかりました、それでお願いします」

気づくと園田がこちらを見ていた。
「交換条件を呑みます」

この時は、これで落着したと思ったのだ。
全て上手く転んだと、もう夜道に怯える必要もない、真崎との日々も戻る。
真崎の手の平を頭に感じながら、心底ホッとしていた。
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