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「音羽、ちょっと休憩しようか」
ぜいぜいと息を上げる私を見かねたのか、宏美が急に走るのをやめて歩き出した。
「あ、ベンチ発見! とりあえずあそこに座ろう」
「うん、ありがとう」
宏美が指をさした方向に目をやれば、沿道の木陰に背もたれ付きの木製のベンチがあり、幸い誰も座っていない。
私は吸い寄せられるようにそこへへたり込んだ。
誘われるままに走りにきたけれど、体を動かすのはたしかに気持ちがいい。
口から大きく息を吸い込めば、ほてった体を冷ますように冷たい空気が喉を通り抜けていく。
「喉渇いたよね。なにか飲み物を買ってくる。音羽はここで待ってて」
「え、いいの? お言葉に甘えます」
宏美はいつも私の話を聞いてくれるし、気配りもできて本当にやさしい。今度ご飯でもご馳走しなければ。
たいして走っていないのに太ももに疲労が溜まってきているのを感じて揉みほぐしていると、ふと沿道の反対側のベンチに目が留まった。
上下黒のトレーニングウェアを着た男性が座っている。
人目を引く大柄な体格、広い肩幅、筋肉質な長い手足。
バランスのいい体形をしたその人は、間違いなく私の知る人物だった。
「晴瑠……久しぶり。なんでここにいるの?」
「音羽?! え、すごい偶然だな」
お互いに驚きあう中、私は彼の隣にそっと腰をおろした。
ぜいぜいと息を上げる私を見かねたのか、宏美が急に走るのをやめて歩き出した。
「あ、ベンチ発見! とりあえずあそこに座ろう」
「うん、ありがとう」
宏美が指をさした方向に目をやれば、沿道の木陰に背もたれ付きの木製のベンチがあり、幸い誰も座っていない。
私は吸い寄せられるようにそこへへたり込んだ。
誘われるままに走りにきたけれど、体を動かすのはたしかに気持ちがいい。
口から大きく息を吸い込めば、ほてった体を冷ますように冷たい空気が喉を通り抜けていく。
「喉渇いたよね。なにか飲み物を買ってくる。音羽はここで待ってて」
「え、いいの? お言葉に甘えます」
宏美はいつも私の話を聞いてくれるし、気配りもできて本当にやさしい。今度ご飯でもご馳走しなければ。
たいして走っていないのに太ももに疲労が溜まってきているのを感じて揉みほぐしていると、ふと沿道の反対側のベンチに目が留まった。
上下黒のトレーニングウェアを着た男性が座っている。
人目を引く大柄な体格、広い肩幅、筋肉質な長い手足。
バランスのいい体形をしたその人は、間違いなく私の知る人物だった。
「晴瑠……久しぶり。なんでここにいるの?」
「音羽?! え、すごい偶然だな」
お互いに驚きあう中、私は彼の隣にそっと腰をおろした。
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