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Immoral love

Immoral love①

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 週末になり、他県にあるあじさい園へは亮平さんの車で行くことになった。運転があるからか、今日の彼はオフでもメガネをかけている。

「美耶のワンピース、かわいいな」

 デート用に買った服を彼が褒めてくれたのがうれしくて、助手席に座った私は「ありがとう」と口にしつつ照れてうつむく。
 梅雨の時期だというのに幸いお天気も良く、移動がてらドライブも楽しめて、本当に最高のデートだ。

 あじさい園には様々な種類のあじさいがあり、どれも色鮮やかに咲いていて本当に癒された。
 メガネをはずした彼と手を繋ぎながら散策をし、私はふと歩みを止める。

「私、これが一番好きなの。八重咲きのガクアジサイ」
「そうなんだ。すごく綺麗だね」

 八重咲のガクアジサイは通常の品種よりも花びらの形が少し細長いのだけれど、その代わり何枚も花びらを重ねていて、上品なのに華やかだ。
 青紫の色味が一段と高貴な雰囲気を漂わせている。

「美耶は本当にあじさいが好きなんだな」
「うん。だから今日は大好きな花に囲まれて、隣には亮平さんがいて、最高の気分!」
「来年も一緒に来ようか」

 “来年も一緒に”……その言葉がうれしくて、うなずきながらがっちりとした彼の腕にギュッと抱きついた。

「連れてきてくれてありがとう」
「美耶が喜ぶ場所ならどこでも行くよ。まぁ、あまり遠くは無理だけど、行きたいところがあったら言って?」
「いいの? じゃあね……」

 もじもじする私の顔を、亮平さんが面白がって覗き込んでくる。

「亮平さんの家に行ってみたい」
「…………」

 私がそう答えた途端、彼の顔が一瞬引きつって見えた。
 笑顔を崩してはいないけれど、どことなく表情が曇ったような気がする。

「ごめん。俺、ひとり暮らしじゃないんだよ……」
「家族と暮らしてるの?」
「そうなんだ。だから……俺の家はちょっと……」

 なぜだか私は勝手に亮平さんはひとりで住んでいると思い込んでいた。
 歯切れの悪い様子からすると、なにか事情があるのかもしれない。
 ご両親のどちらかが病気とか、祖父母の介護を手伝っているとか?

「ごめん」ともう一度言われたら、それ以上突っ込んで聞けなくなってしまった。
 だけどいつかきっと話してくれると思う。そのときは、心から彼に寄り添いたい。

「そしたら、うちのマンションに来ない?」
「美耶の家に?」

 私の中ではこれは想定内だったから、部屋は隅々まで掃除を済ませてある。
 冷蔵庫に飲み物も冷やしているし、簡単につまみになるような食べ物も作っておいたから、何気に準備万端だ。

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