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◇彼の正体と土砂降りの雨②
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「その王子様なんですけどね……」
「うん」
「これ見てくださいよ~」
今度は自分のスマホを操作して、画面を見ろとばかりに突き出してくる。
そこには雑誌とは違う日下さんの写真が映し出されていた。
萌奈ちゃんはネットに載っているプロフィール欄のところを拡大して、私にここだと指を差す。
「結婚してるみたいです」
雑誌のほうには生年月日や出身大学など簡潔な内容が書かれていただけだったが、どうやら日下さんは私たちが思っている以上に有名人らしい。
サンシャインホールディングスの副社長なのだから当然といえば当然なのだけれど、ネット上には彼にまつわる様々な情報が出ていた。
そして、雑誌よりももっと詳しいプロフィールが載っていて、萌奈ちゃんはその真実を目にしてしまったのだ。
「……本当だね」
彼は今から二年前に結婚したとネットのプロフィールに書かれてあった。
私が苦笑いを浮かべると、萌奈ちゃんがハァーッと盛大な溜め息を吐きだす。
「ひなたさんに王子様が現れたと思ったのに~」
あからさまにぐったりとうなだれる萌奈ちゃんを見て、クスリと笑ってしまった。そこまで落胆しなくてもいいのに。
「たった一度来店してくれただけじゃないの。私たちとは住む世界も違うし、元々縁なんてなかったのよ」
ハンカチを返しに来ると言っていたのに、あれから彼が現れることはなかった。
期待はしていなかったものの、約束を破られたようで、そこだけは残念な気持ちが残る。
「ですよね~。こんなにイケメンな副社長がモテないわけがないとは思いましたけど。まさか妻子のいる人だったとは」
「え、妻子?!」
「結婚してるんだから、きっと子供だっているでしょう」
雑誌には二年前に結婚したことのみが書かれていて、お相手はどういう女性なのかや子供の有無までは載っていない。
だけど子供がいてもまったく不思議ではない。いるとすれば結婚してまだ二年なのだから、小さい赤子だろう。授かり婚の可能性もある。
「でっかいお家に綺麗な奥さんとかわいい子供がいて、幸せに暮らしてるんでしょうね。お庭にはゴールデンレトリバーみたいな大型犬が走り回っていて、プールやテニスコートなんかがあるかも!」
「世に言うセレブってやつ?」
「絶対そんな感じですよ」
羨ましそうに萌奈ちゃんが口を尖らせる。
異世界にいる人たちと自分を比べても仕方がないのに。
頭では冷静にそう思えるのだけれど……
ズシッと重たいものが乗ったみたいに胸が苦しい。
正直、結婚していると聞いた瞬間、なぜかショックを受けた。
それがどうしてなのか、理由はわからないけれど。
友達が結婚すると報告してきたときの、あの焦燥感と似ている?
いや、違う。
密かに憧れていた男性から突然サヨナラを言われたような……そんな感覚に近い。
もうこれ以上関わらないでくれと、プツリと遮断されたような寂しい気持ちになったのだ。
「うん」
「これ見てくださいよ~」
今度は自分のスマホを操作して、画面を見ろとばかりに突き出してくる。
そこには雑誌とは違う日下さんの写真が映し出されていた。
萌奈ちゃんはネットに載っているプロフィール欄のところを拡大して、私にここだと指を差す。
「結婚してるみたいです」
雑誌のほうには生年月日や出身大学など簡潔な内容が書かれていただけだったが、どうやら日下さんは私たちが思っている以上に有名人らしい。
サンシャインホールディングスの副社長なのだから当然といえば当然なのだけれど、ネット上には彼にまつわる様々な情報が出ていた。
そして、雑誌よりももっと詳しいプロフィールが載っていて、萌奈ちゃんはその真実を目にしてしまったのだ。
「……本当だね」
彼は今から二年前に結婚したとネットのプロフィールに書かれてあった。
私が苦笑いを浮かべると、萌奈ちゃんがハァーッと盛大な溜め息を吐きだす。
「ひなたさんに王子様が現れたと思ったのに~」
あからさまにぐったりとうなだれる萌奈ちゃんを見て、クスリと笑ってしまった。そこまで落胆しなくてもいいのに。
「たった一度来店してくれただけじゃないの。私たちとは住む世界も違うし、元々縁なんてなかったのよ」
ハンカチを返しに来ると言っていたのに、あれから彼が現れることはなかった。
期待はしていなかったものの、約束を破られたようで、そこだけは残念な気持ちが残る。
「ですよね~。こんなにイケメンな副社長がモテないわけがないとは思いましたけど。まさか妻子のいる人だったとは」
「え、妻子?!」
「結婚してるんだから、きっと子供だっているでしょう」
雑誌には二年前に結婚したことのみが書かれていて、お相手はどういう女性なのかや子供の有無までは載っていない。
だけど子供がいてもまったく不思議ではない。いるとすれば結婚してまだ二年なのだから、小さい赤子だろう。授かり婚の可能性もある。
「でっかいお家に綺麗な奥さんとかわいい子供がいて、幸せに暮らしてるんでしょうね。お庭にはゴールデンレトリバーみたいな大型犬が走り回っていて、プールやテニスコートなんかがあるかも!」
「世に言うセレブってやつ?」
「絶対そんな感じですよ」
羨ましそうに萌奈ちゃんが口を尖らせる。
異世界にいる人たちと自分を比べても仕方がないのに。
頭では冷静にそう思えるのだけれど……
ズシッと重たいものが乗ったみたいに胸が苦しい。
正直、結婚していると聞いた瞬間、なぜかショックを受けた。
それがどうしてなのか、理由はわからないけれど。
友達が結婚すると報告してきたときの、あの焦燥感と似ている?
いや、違う。
密かに憧れていた男性から突然サヨナラを言われたような……そんな感覚に近い。
もうこれ以上関わらないでくれと、プツリと遮断されたような寂しい気持ちになったのだ。
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