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◇大恋愛がしたいのに②
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窪田さんは口は悪いけれど、将来自分でお店を出したいと考えているから経営自体に興味があるのか、こういう雑誌や新聞を休憩時間によく読んでいる。
貸してやるからお前も読め、と私にも勧めるほど実は勉強熱心な人なのだ。
世情に疎くてどうするんだよ、と説教をされるので、私も社会人としてパラパラとめくる程度には読むようにしている。
そのビジネス雑誌の先月号に、例の男性客の写真が載っていて記事になっていた。
「ここに載ってたからだな。だから俺も見覚えがあったわけだ」
じっと見入ってしまっているが、間違いなく先週間近で目にした“眉目秀麗”な顔だ。
こうして紙面の中に収まっていると、まるでこれがオシャレなファッション雑誌に思えてくる。
「ひなたさんもこの雑誌で見たんじゃないですか?」
「そう……かな」
「だからふたりして覚えてたんですよ~」
自分の目算が当たったとばかりに、萌奈ちゃんが人差し指をピンと立てて言う。
たしかにそのとおりなのだろう。
この雑誌以外に思い当たることはないので、そう納得せざるをえない。
「あ、プロフィールが出てますよ」
写真が載っているページの右隅に彼のプロフィールが小さく出ており、それを萌奈ちゃんが目ざとく見つけた。
「日下 来人。年齢は三十二歳。私と同い年くらいだと思ってたけど五歳も年上だった」
あっけらかんと私がそう言うと、萌奈ちゃんは興奮気味に別の場所を指差した。
「ひなたさん! そんなことより、ここ!」
「……へ?」
「サンシャインホールディングスの副社長って書いてますよ?!」
本当だ。雑誌の見出しも、【若きイケメン副社長にインタビュー】と書かれてある。
サンシャインホールディングスと言えば、主にホテル業だったかな。
あとは外食産業やアミューズメントなど、とにかく様々な事業を展開している大きな会社だ。
「そんなすごい人だったんですね~」
素直な感想を言う萌奈ちゃんの言葉に、私も大きく首を縦に振ってうなずいた。
大企業の副社長なのだから、きっと目が回るほど多忙に違いない。
わざわざこの店にハンカチを返しに来る時間なんて持ち合わせていないはず。
だからもう、会うこともない。
返しに来ると言ったのは、おそらく社交辞令だ。
本当に来るとしても、本人ではなく秘書など代理の人を寄越すのだろう。
そう考えながらもう一度紙面に視線を落としたところで、とあることに気づいてフフッと噴出すように笑ってしまった。
「ひなたさん、どうしたんですか~? なにか面白いことでも?」
「いや……だって、これ」
私は彼の名前が書かれたところを、指でトントンと叩きながら再びクスクスと笑う。
貸してやるからお前も読め、と私にも勧めるほど実は勉強熱心な人なのだ。
世情に疎くてどうするんだよ、と説教をされるので、私も社会人としてパラパラとめくる程度には読むようにしている。
そのビジネス雑誌の先月号に、例の男性客の写真が載っていて記事になっていた。
「ここに載ってたからだな。だから俺も見覚えがあったわけだ」
じっと見入ってしまっているが、間違いなく先週間近で目にした“眉目秀麗”な顔だ。
こうして紙面の中に収まっていると、まるでこれがオシャレなファッション雑誌に思えてくる。
「ひなたさんもこの雑誌で見たんじゃないですか?」
「そう……かな」
「だからふたりして覚えてたんですよ~」
自分の目算が当たったとばかりに、萌奈ちゃんが人差し指をピンと立てて言う。
たしかにそのとおりなのだろう。
この雑誌以外に思い当たることはないので、そう納得せざるをえない。
「あ、プロフィールが出てますよ」
写真が載っているページの右隅に彼のプロフィールが小さく出ており、それを萌奈ちゃんが目ざとく見つけた。
「日下 来人。年齢は三十二歳。私と同い年くらいだと思ってたけど五歳も年上だった」
あっけらかんと私がそう言うと、萌奈ちゃんは興奮気味に別の場所を指差した。
「ひなたさん! そんなことより、ここ!」
「……へ?」
「サンシャインホールディングスの副社長って書いてますよ?!」
本当だ。雑誌の見出しも、【若きイケメン副社長にインタビュー】と書かれてある。
サンシャインホールディングスと言えば、主にホテル業だったかな。
あとは外食産業やアミューズメントなど、とにかく様々な事業を展開している大きな会社だ。
「そんなすごい人だったんですね~」
素直な感想を言う萌奈ちゃんの言葉に、私も大きく首を縦に振ってうなずいた。
大企業の副社長なのだから、きっと目が回るほど多忙に違いない。
わざわざこの店にハンカチを返しに来る時間なんて持ち合わせていないはず。
だからもう、会うこともない。
返しに来ると言ったのは、おそらく社交辞令だ。
本当に来るとしても、本人ではなく秘書など代理の人を寄越すのだろう。
そう考えながらもう一度紙面に視線を落としたところで、とあることに気づいてフフッと噴出すように笑ってしまった。
「ひなたさん、どうしたんですか~? なにか面白いことでも?」
「いや……だって、これ」
私は彼の名前が書かれたところを、指でトントンと叩きながら再びクスクスと笑う。
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