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09.2人の歩む道
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ディアーナの叫び声と一緒にイヴァンは地に落ちていく。
「く…そ…っ!」
アーヴィングは楽しそうに笑みを浮かべながらイヴァンを見下ろしていた。
そんなアーヴィングに向かってディアーナは細剣を突き出す。
「はっ!!!」
立ち止まってる暇は無い。
イヴァンの無事を確かめる暇など無い。
誓ったんだ命にかえても十二血族を滅ぼすと。
でも…イヴァンにだけは生きて欲しかった。
私がここに攫われた時、このまま助けに来ないで、魔女の血を飲んで人に戻って普通の人生を歩んで欲しかった。それが彼をバンパイアのハーフにしてしまった私が彼に出来る唯一の罪滅ぼしだと思った。
「ごめんね、イヴァン…」
ディアーナの瞳から1粒の涙が溢れ出た。
それからアーヴィングの蛇のような尾の刃をかわしきり、そしてアーヴィングを通り過ぎ遥か頭上へと飛び立つ。
度重なる戦闘の衝撃で吹き抜けになってしまった天井へディアーナは手の平を向けた。
「アーヴィングもうお終いにしましょう」
ディアーナの手にエネルギーが集まり大きな玉が出来上がる。
「イヴァン…今までありがとう……愛してたよ」
そう、私は彼を愛してしまった。
いつも傍で支えてくれる彼を、いつの間にか好きになっていたのだ。
そんな事許されるはず無いのに。
一瞬ディアーナがイヴァンを見つめながらとても優しく微笑んだ。
その微笑みを見て琴子はディアーナが何をしようとしているのか理解する。
彼女はあの大きなエネルギーの塊を天井にうち、降り注ぐ陽の光でアーヴィングを殺そうとしているのだ。
「ダメ…そんな事したら…貴女まで………」
頼みのイヴァンを見るも彼は倒れていて…生きているのか死んでいるのかさえ分からない。
そうこうしてる間にディアーナが天井に巨大なエネルギーの玉を打ち上げた。
それは天井を突き破り、ディアーナの思惑通り陽の光が降り注ぐ。
「ぐぁぁぁあ!」
アーヴィングの断末魔が響く。
「ディアーナっ!!貴様っ!!!」
アーヴィングはディアーナに向かっていく。
その身体は炎に包まれている。
もちろんディアーナも。
アーヴィングは燃え続けるディアーナを己の手で葬るべく、物凄い殺気と憎悪を向けて彼女に向かって飛んでいく。
そんなアーヴィングを無抵抗にディアーナは見つめていた。
「(これで…終わった。やっと……やっと…)」
同族狩りを初めて500年あまり…
もっと孤独な旅になるかと思ったけど…
ディアーナの頭に浮かんだのは自分の意見に耳を傾け同感してくれる、バンパイアの仲間達だった。
10人いた仲間たちは十二血族を倒す度に1人、また1人と死んでいった。
その思いをディアーナに託して。
いつの間にか残ったのはイヴァンとディアーナの2人だけだった。
しかしそんな辛く長い旅だったが、
その道中は仲間達と楽しく笑い合い時にはぶつかり合い過ごした大切な思い出でいっぱいだった。
「…あ、りがと、……う。さ……よ、うな……ら、…」
アーヴィングが目と鼻の先に迫ってきた。
しかし寸前のところでアーヴィングの動きが止まる。
ディアーナが不思議に思っていると、アーヴィングの身体は傾き地に落ちていった。
そしてその背後にいたのはイヴァンだった。
どうやらアーヴィングはイヴァンに銀の短剣で心臓を1突きされたようだった。
「………」
イヴァンが生きていた事にディアーナは心底安堵した。
あぁ、良かった…と。
するとイヴァンの顔が近付いてきてディアーナの唇にイヴァンの唇が重なった。
「っつ!!?」
イヴァンから流される何かを思わずディアーナは飲み込む。
重なった唇からは赤い液体が滴る。
そしてイヴァンはディアーナをぎゅっと抱きしめた。
いつの間にかディアーナを包んでいた炎は消えていた。
そうして2人は見つめ合う。
「どうして……どうしてイヴァン!!!私は貴方を巻き込んでしまった…だからせめて人に戻って人としての人生を歩んで欲しかった…貴方には幸せになって欲しかった」
ディアーナは自分の身体の異変に気づく。イヴァンが何を飲ませたのかも分かっている。魔女の血だ。
それを飲んだ自分の身体は人になったのだろう。その証拠にこんなに陽の光を浴びてるのに身体は燃えない。
火傷も治らない。
そんなディアーナの言葉にイヴァンは不機嫌そうな顔をした。
「勝手に決めるなよ!!俺の幸せは俺が決める。こんな物を置いていくなんてまるで、俺の事突き放してるみたいじゃないか。俺は人に戻りたいんじゃない、ディアーナと一緒にいたいだけだ」
そう言って魔女の血が入っていた空き瓶をディアーナに見せるとそれを投げ捨て真剣な眼差しをディアーナに向けた。
「ディアーナ…俺と一緒に生きよう。俺たちは沢山の命を奪ってきた…だから今度は生きて償うんだ」
「生きて…?そんなの許されないわ」
「だから生きて償うんだよ、俺達は一生苦しみながら生きるんだ」
死ぬのなんて簡単だ。とイヴァンは言い切った。
「沢山の命を奪ってきた…今度は沢山の命を救っていこう。」
「命を…救う……」
ディアーナには実感がわかなかった。
そもそも十二血族を殺す時に自分も死ぬつもりだった。そうすればこの世から十二血族はいなくなる。だから自分が人になって生きるなんて選択肢、彼女の頭の中には無かったのだ。
彼と共に生きながら罪を償う、もしそんな事が許されるのなら私は…彼と共に生きたいのかもしれない。
その可能性が出来た今、そんな未来を少しだけ期待してしまった。
「ディアーナ…故郷に帰ろう。」
イヴァンはディアーナに優しく微笑みかける。
「私は…生きていいのかしら?」
たくさんの同族を殺してきた。
彼らから見たら私は殺人鬼だ。悪だ。
「死んでいい命なんてあるわけないだろ」
しかしイヴァンは言い切った。
こんな私でも死んでいい命では無いと言い切ってくれた。
「そうよね…」
ディアーナの瞳から一筋の涙が溢れた。
それは嬉し涙なのか、悲し涙なのか、はたまた違う涙なのかは分からない。
そんな彼女をイヴァンは再び優しく抱きしめた。
2人は一生十字架を背負って生きていくのだろう。
「く…そ…っ!」
アーヴィングは楽しそうに笑みを浮かべながらイヴァンを見下ろしていた。
そんなアーヴィングに向かってディアーナは細剣を突き出す。
「はっ!!!」
立ち止まってる暇は無い。
イヴァンの無事を確かめる暇など無い。
誓ったんだ命にかえても十二血族を滅ぼすと。
でも…イヴァンにだけは生きて欲しかった。
私がここに攫われた時、このまま助けに来ないで、魔女の血を飲んで人に戻って普通の人生を歩んで欲しかった。それが彼をバンパイアのハーフにしてしまった私が彼に出来る唯一の罪滅ぼしだと思った。
「ごめんね、イヴァン…」
ディアーナの瞳から1粒の涙が溢れ出た。
それからアーヴィングの蛇のような尾の刃をかわしきり、そしてアーヴィングを通り過ぎ遥か頭上へと飛び立つ。
度重なる戦闘の衝撃で吹き抜けになってしまった天井へディアーナは手の平を向けた。
「アーヴィングもうお終いにしましょう」
ディアーナの手にエネルギーが集まり大きな玉が出来上がる。
「イヴァン…今までありがとう……愛してたよ」
そう、私は彼を愛してしまった。
いつも傍で支えてくれる彼を、いつの間にか好きになっていたのだ。
そんな事許されるはず無いのに。
一瞬ディアーナがイヴァンを見つめながらとても優しく微笑んだ。
その微笑みを見て琴子はディアーナが何をしようとしているのか理解する。
彼女はあの大きなエネルギーの塊を天井にうち、降り注ぐ陽の光でアーヴィングを殺そうとしているのだ。
「ダメ…そんな事したら…貴女まで………」
頼みのイヴァンを見るも彼は倒れていて…生きているのか死んでいるのかさえ分からない。
そうこうしてる間にディアーナが天井に巨大なエネルギーの玉を打ち上げた。
それは天井を突き破り、ディアーナの思惑通り陽の光が降り注ぐ。
「ぐぁぁぁあ!」
アーヴィングの断末魔が響く。
「ディアーナっ!!貴様っ!!!」
アーヴィングはディアーナに向かっていく。
その身体は炎に包まれている。
もちろんディアーナも。
アーヴィングは燃え続けるディアーナを己の手で葬るべく、物凄い殺気と憎悪を向けて彼女に向かって飛んでいく。
そんなアーヴィングを無抵抗にディアーナは見つめていた。
「(これで…終わった。やっと……やっと…)」
同族狩りを初めて500年あまり…
もっと孤独な旅になるかと思ったけど…
ディアーナの頭に浮かんだのは自分の意見に耳を傾け同感してくれる、バンパイアの仲間達だった。
10人いた仲間たちは十二血族を倒す度に1人、また1人と死んでいった。
その思いをディアーナに託して。
いつの間にか残ったのはイヴァンとディアーナの2人だけだった。
しかしそんな辛く長い旅だったが、
その道中は仲間達と楽しく笑い合い時にはぶつかり合い過ごした大切な思い出でいっぱいだった。
「…あ、りがと、……う。さ……よ、うな……ら、…」
アーヴィングが目と鼻の先に迫ってきた。
しかし寸前のところでアーヴィングの動きが止まる。
ディアーナが不思議に思っていると、アーヴィングの身体は傾き地に落ちていった。
そしてその背後にいたのはイヴァンだった。
どうやらアーヴィングはイヴァンに銀の短剣で心臓を1突きされたようだった。
「………」
イヴァンが生きていた事にディアーナは心底安堵した。
あぁ、良かった…と。
するとイヴァンの顔が近付いてきてディアーナの唇にイヴァンの唇が重なった。
「っつ!!?」
イヴァンから流される何かを思わずディアーナは飲み込む。
重なった唇からは赤い液体が滴る。
そしてイヴァンはディアーナをぎゅっと抱きしめた。
いつの間にかディアーナを包んでいた炎は消えていた。
そうして2人は見つめ合う。
「どうして……どうしてイヴァン!!!私は貴方を巻き込んでしまった…だからせめて人に戻って人としての人生を歩んで欲しかった…貴方には幸せになって欲しかった」
ディアーナは自分の身体の異変に気づく。イヴァンが何を飲ませたのかも分かっている。魔女の血だ。
それを飲んだ自分の身体は人になったのだろう。その証拠にこんなに陽の光を浴びてるのに身体は燃えない。
火傷も治らない。
そんなディアーナの言葉にイヴァンは不機嫌そうな顔をした。
「勝手に決めるなよ!!俺の幸せは俺が決める。こんな物を置いていくなんてまるで、俺の事突き放してるみたいじゃないか。俺は人に戻りたいんじゃない、ディアーナと一緒にいたいだけだ」
そう言って魔女の血が入っていた空き瓶をディアーナに見せるとそれを投げ捨て真剣な眼差しをディアーナに向けた。
「ディアーナ…俺と一緒に生きよう。俺たちは沢山の命を奪ってきた…だから今度は生きて償うんだ」
「生きて…?そんなの許されないわ」
「だから生きて償うんだよ、俺達は一生苦しみながら生きるんだ」
死ぬのなんて簡単だ。とイヴァンは言い切った。
「沢山の命を奪ってきた…今度は沢山の命を救っていこう。」
「命を…救う……」
ディアーナには実感がわかなかった。
そもそも十二血族を殺す時に自分も死ぬつもりだった。そうすればこの世から十二血族はいなくなる。だから自分が人になって生きるなんて選択肢、彼女の頭の中には無かったのだ。
彼と共に生きながら罪を償う、もしそんな事が許されるのなら私は…彼と共に生きたいのかもしれない。
その可能性が出来た今、そんな未来を少しだけ期待してしまった。
「ディアーナ…故郷に帰ろう。」
イヴァンはディアーナに優しく微笑みかける。
「私は…生きていいのかしら?」
たくさんの同族を殺してきた。
彼らから見たら私は殺人鬼だ。悪だ。
「死んでいい命なんてあるわけないだろ」
しかしイヴァンは言い切った。
こんな私でも死んでいい命では無いと言い切ってくれた。
「そうよね…」
ディアーナの瞳から一筋の涙が溢れた。
それは嬉し涙なのか、悲し涙なのか、はたまた違う涙なのかは分からない。
そんな彼女をイヴァンは再び優しく抱きしめた。
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