3 / 11
3
しおりを挟む
それから一ヶ月経って、津田と過ごす時間が増えた。昼休みはそれぞれ別の友達と昼食を食べているけど、朝と夜は一緒だ。
お互いローテンションだから、ゲラゲラ笑い合うことはない。でも、以前より会話も増えて、距離感はだいぶ近くなったと思う。
「津田、起きて。朝だよ」
「んー………」
呼びかけただけじゃすぐに起きてくれない。身体を揺さぶったら小さく唸って、俺の腕を掴んで引っ張ってきた。そのまま津田にぎゅっと抱きしめられる。
「ちょっ、な、何して……」
「……………」
…………寝ぼけてるのか?
抜け出そうにも力が強くて身動きが取れない。
「ねえ、津田。起きてよ」
「……………」
…………だめだ、返事がない。どうしよう。くすぐったりしたら怒るかな。
そう考えてるうちに、ふとある事に気付く。
…………津田の匂いだ。
いつもの匂いとは違う。石鹸っぽい感じ。
同じやつ使ってるのに、いい匂いする……。
この匂いのほうが好きかも。
しかも、これ、落ち着くな………。
津田の体温があったかいし、いい匂いだし、抱きしめられてるの、落ち着く………。
やばい、俺まで眠くなってきた。
「…………?」
意識が遠くなっていく途中で、俺を包む腕がピクリと動いた。
「………は? なにしてんの」
頭上から降ってきた声に、はっとした。津田が驚いたように見ている。
「いや……起こそうとしたら、津田が引っ張ってきたんだよ」
「………俺が?」
「うん。今も抱きしめてるの、津田だからね」
そう言うと、腕の力が緩まって身体が離れていった。
「……ごめん、寝ぼけてた」
素直に謝られたけど、別に嫌だとは思っていない。居心地良くて眠りそうだったし。
何なら今は……津田が離れて寂しいとさえ感じていた。
◇
夜になって、勉強机で読書をしていたら後ろから肩を叩かれた。
「なあ、なに読んでんの」
のしっと肩に腕を乗せられる。普段は勉強中や読書をしている時は話しかけてこないのに珍しい。
伏線回収中の一番盛り上がる場面だけど、津田から声を掛けてくれるのが嬉しくて、本をパタリと閉じた。
「ファンタジー小説だよ。津田も読む?」
「ふーん。本読むの好きじゃねーから、別にいい。それより、腹減った」
「ああ、もうこんな時間なんだ。食堂行こっか」
「うん」
何を読んでるか気になったんじゃなくて、お腹空いたからだったのか………。
ほんとマイペースっていうか、自由人だ。
基本的に津田と過ごす時は、津田のペースに合わせている。振り回されてるって言い方のほうが正しいかもしれない。
でも、もともと俺は受け身な性格で、人を振り回すよりも振り回されるほうが好きだ。津田のそういうところは、嫌いじゃない。
…………なんか、猫みたいで可愛いし。
人に懐きにくいところとか、大事な時に邪魔してくる感じとか、丸まって寝るところとか。
少し前までは不良で怖いとしか思ってなかったけど、今はそれだけじゃない。俺より身長高いイケメンを可愛いって言うのおかしい気がするけど。
お互いローテンションだから、ゲラゲラ笑い合うことはない。でも、以前より会話も増えて、距離感はだいぶ近くなったと思う。
「津田、起きて。朝だよ」
「んー………」
呼びかけただけじゃすぐに起きてくれない。身体を揺さぶったら小さく唸って、俺の腕を掴んで引っ張ってきた。そのまま津田にぎゅっと抱きしめられる。
「ちょっ、な、何して……」
「……………」
…………寝ぼけてるのか?
抜け出そうにも力が強くて身動きが取れない。
「ねえ、津田。起きてよ」
「……………」
…………だめだ、返事がない。どうしよう。くすぐったりしたら怒るかな。
そう考えてるうちに、ふとある事に気付く。
…………津田の匂いだ。
いつもの匂いとは違う。石鹸っぽい感じ。
同じやつ使ってるのに、いい匂いする……。
この匂いのほうが好きかも。
しかも、これ、落ち着くな………。
津田の体温があったかいし、いい匂いだし、抱きしめられてるの、落ち着く………。
やばい、俺まで眠くなってきた。
「…………?」
意識が遠くなっていく途中で、俺を包む腕がピクリと動いた。
「………は? なにしてんの」
頭上から降ってきた声に、はっとした。津田が驚いたように見ている。
「いや……起こそうとしたら、津田が引っ張ってきたんだよ」
「………俺が?」
「うん。今も抱きしめてるの、津田だからね」
そう言うと、腕の力が緩まって身体が離れていった。
「……ごめん、寝ぼけてた」
素直に謝られたけど、別に嫌だとは思っていない。居心地良くて眠りそうだったし。
何なら今は……津田が離れて寂しいとさえ感じていた。
◇
夜になって、勉強机で読書をしていたら後ろから肩を叩かれた。
「なあ、なに読んでんの」
のしっと肩に腕を乗せられる。普段は勉強中や読書をしている時は話しかけてこないのに珍しい。
伏線回収中の一番盛り上がる場面だけど、津田から声を掛けてくれるのが嬉しくて、本をパタリと閉じた。
「ファンタジー小説だよ。津田も読む?」
「ふーん。本読むの好きじゃねーから、別にいい。それより、腹減った」
「ああ、もうこんな時間なんだ。食堂行こっか」
「うん」
何を読んでるか気になったんじゃなくて、お腹空いたからだったのか………。
ほんとマイペースっていうか、自由人だ。
基本的に津田と過ごす時は、津田のペースに合わせている。振り回されてるって言い方のほうが正しいかもしれない。
でも、もともと俺は受け身な性格で、人を振り回すよりも振り回されるほうが好きだ。津田のそういうところは、嫌いじゃない。
…………なんか、猫みたいで可愛いし。
人に懐きにくいところとか、大事な時に邪魔してくる感じとか、丸まって寝るところとか。
少し前までは不良で怖いとしか思ってなかったけど、今はそれだけじゃない。俺より身長高いイケメンを可愛いって言うのおかしい気がするけど。
115
お気に入りに追加
1,617
あなたにおすすめの小説
同室のイケメンに毎晩オカズにされる件
おみなしづき
BL
オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?
それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎
毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。
段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです!
※がっつりR18です。予告はありません。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
彼女ができたら義理の兄にめちゃくちゃにされた
おみなしづき
BL
小学生の時に母が再婚して義理の兄ができた。
それが嬉しくて、幼い頃はよく兄の側にいようとした。
俺の自慢の兄だった。
高二の夏、初めて彼女ができた俺に兄は言った。
「ねぇ、ハル。なんで彼女なんて作ったの?」
俺は兄にめちゃくちゃにされた。
※最初からエロです。R18シーンは*表示しておきます。
※R18シーンの境界がわからず*が無くともR18があるかもしれません。ほぼR18だと思って頂ければ幸いです。
※いきなり拘束、無理矢理あります。苦手な方はご注意を。
※こんなタイトルですが、愛はあります。
※追記……涼の兄の話をスピンオフとして投稿しました。二人のその後も出てきます。よろしければ、そちらも見てみて下さい。
※作者の無駄話……無くていいかなと思い削除しました。お礼等はあとがきでさせて頂きます。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
どうやらドSの先輩に狙われているようです
おみなしづき
BL
瀬上智則(せがみとものり)は、つり上がった目に薄い唇が特徴の見た目がドSっぽい高校生。
見た目のせいで、ドMの変態にばかり目をつけられる。
ある時、痴漢にあって助けられる。
助かったと感謝したその人は、学校の先輩で……。
※がっつりR18です。予告はないのでご注意を。
【短編/R18】親友からホワイトデーにお返しもらったけど全く心当たりない
ナイトウ
BL
モテモテチャラ男風巨根イかせたがりDD攻め×平凡攻め大好き全肯定系DD受け
傾向: 両片想いからのイチャラブ、イかせ、前立腺責め、PC筋開発、精嚢責め、直腸S状部責め、トコロテン、連続絶頂、快楽漬け、あへおほ
両片思いだった大学生ふたりが勘違いの結果両思いになり、攻めの好きゲージ大解放により受けがぐちゃぐちゃにされる話です。
酔った勢いで幼馴染と寝たら、翌日何倍にもして返された話
辻河
BL
・酔っ払って片思いの相手を襲ってしまった受けが、翌朝記憶を失って素面の状態で攻めにどれだけ好かれているか分からされる話
・散々煽られたのに翌朝何も覚えていないと言われご立腹の攻め(本谷瀬永/もとやせな)×攻めに大恋愛をしていたら酔って全部本人に露呈した挙句とろとろになるまで詰められる受け(藤野維月/ふじのいづき)
※♡喘ぎ、濁点喘ぎ、結腸責めなどの表現が含まれています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる