お兄さんに拾われた少年のお話

目覚めの時

2・街についてから

　抱えているアウスを傷つけないように，ゆっくり、アクラムは普段寝ている寝床に寝かせてやる。

　改めて全身を見てやると，筋肉はなく，腕は細く，簡単に折れてしまいそうだった。

（生きているのか？）

　不思議に思って，アクラムはアウスの胸に手と耳を当てて心拍を確認する。

（あ，ちゃんと生きている……）

　アクラムは1人で暮らし，1人で生きていくと決めていた。自分は，普通に家族を作り，生活をすることができないと知っていたから。だから，家に人がいるのはどこか違和感を覚えずにはいられなかった。

　その違和感を感じながら，食べ物の用意をする。昨日から，まともなご飯を食べていなかったので、簡単に料理を作った。といっても男の一人暮らし誰が食べるわけではないので，本当に簡単なもの。

　アウスの見える，椅子に座りご飯を食べる。
　美味しいと心の中で言いながら，これからどうしていこうかと考える。
　子どもを拾ったことはもちろん初めてだし，子どもをどう育てるのかも知らなかった。

　それでも，育てるしかなかった。それが，子どもを拾ったと言うこと。知っていたのに，やっぱり戸惑いを隠せなかった。