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3章

12話 先生が来て… side坊ちゃん

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「失礼するね」
ドアの向こうから知らない声がして,僕はドアを恐る恐る開けた。
「あっあの…」
僕の目の前に,見たこともないおじいさんがいた。誰だろうと僕が戸惑っているとその方は僕に自己紹介をしてくれた。
「あ,ごめんね。初めまして…レオくんの主治医のアランです」
先生は落ち着いた様子で僕に自己紹介をする。
「先生…レオの…レオをよろしくお願いします。お部屋に」
なんて言えばいいのかわからなくて取り敢えずそう言って部屋に入ってもらう。
「えっと…君はカインくんであっているかな?」
「はい,カインです。自己紹介遅れてごめんなさい」
頭を下げて詫びを入れた。
「いやいいんだよ。それより,レオくんはどこかな?」
先生は辺りを見渡しながらレオを探している。
「ここにいます」
ベッド脇まで先生を案内する。
「カインくん,君は少しの間外に出ておいてもらってもいいかな?」
レオの様子を見るなり,先生はそう言って僕を部屋から出そうとする。
「…えっ…なんでですか?」
僕はなるべくレオと離れたくないそう思っていた。だから,先生の話を聞いた途端嫌で嫌でたまらなくなった。
「すぐに,終わるから…」
アラン先生は優しい口調でそう言いながらも目はどこか鋭く怖かった。
「わ,わかりました。では,終わり次第お呼びください」
そう言って渋々部屋を後にした。
「坊ちゃん…レオさんはご無事でしたか?」
部屋を出るとすぐそこにはメアリがいた。
「メ,メアリ…」
メアリの顔を見ると突然,今までの緊張から解放されたせいで身体から力が抜けて僕はその場に座り込む。
「大丈夫ですか?」
「だ,大丈夫…でも,レオがね…」
メアリは家に帰ってきてから,レオがどうなったのかまだ聞かされていない様子だった。
僕は言葉にならない声で,レオがどうなったかを説明する。メアリは,そんな僕の話を真剣にちゃんと向き合って聞いてくれている。
「今日だけで、いろんなことがございましたね」
「う,うん…」
今にも泣きそうな僕の頭を撫でてくれた。
「坊ちゃん…」
僕のことを囁くように呼んだ。
「メアリどうしたの?」
「坊ちゃんはもうお休みになられた方が良いと思います」
もう既にいつも寝る時間帯は過ぎていた。けれど,レオがいつ目を覚ますかわからないから寝るに寝れないそう思った。
「う,うん。それは,わかってる。けど,もう少しだけレオのそばにいたい。いさせて…」
「わかりました…では,私も坊ちゃんと一緒にいます。それなら,許します」
「…ありがとう。メアリ」
それから,僕とメアリは少しの間ドアの前で座ってアラン先生が呼びにくるのを待った。
ドアが開かれて,先生が僕たちに声をかける。
「…大丈夫かい?」
いつのまにか眠っていたらしく,先生は僕たちを起こしてそう聞いた。
「大丈夫です。それより,レオは?」
頭で考えるよりも先に声が出ていた。
「…レオくんは,命とかは大丈夫だよ。けどね…」
先生はそこから,レオがいつ起きるのか,起きたとしても精神的に問題はどうかそれは分からないと言った。
「えっ…それじゃあ…」
僕の頭には,嫌な想像が浮かぶ。
「うん,そうだね。色々覚悟はしないといけないのは確かだね」
先生の口調は僕たちをあまり心配させないかのように優しいのに,言っていることはとても残酷なように聞こえた。
「…どうすればいいですか?」
どうすればレオが起きるのか,落ち着くことができるのか僕に教えて欲しいと思った。
「それは,先生にもわからない…。レオくんは,これが初めてではないから余計にね」

「どういうことですか?」
この時,僕はレオのこと何にも知らないと思った。レオがここにくる前の話は何一つ知らない。教えてもらった記憶がない。
「…聞いてなかったんだね。カインくんは」
「聞いてないです。だから…教えてもらえませんか?」
レオの人生を知りたい,そう純粋に思った。知ったら,何か僕がレオのためにできることがあるのではないかと思ったから。それでも…。
「…それでは,僕の口から言えないね」
先生は,そう言って僕にそれ以上レオのことは語らなかった。
「なんでですか?」
「それは,もしカインくん,君の過去を勝手にレオくんに離されたら嫌でしょ?」
「うん,やだ。知られたくないこともあるもん」
「それと同じだよ。レオくんも君にカインくんに知られたくないことがあるのかもしれないでしょ?」
僕はそれを聞いて残念だと思いながらもレオからちゃんと聞いた方がいいなと思った。それに,レオにとって聞かれたくないこと思い出したくないことだとしたら今は聞いてはいけないことのように感じた。
「うん。あると思う。だから,今日は聞かない」
「いい子だね。カインくんは」
先生はそう言って僕の頭を撫でた。
「僕は,いい子じゃない。それは,本当のこと」
「君は,それでも悪い子じゃないよ」
「でも,僕が約束守らなかったから…レオが…うっ…」
「大丈夫だからね」
先生は何度も何度も,僕のことを落ち着かせようとしてくれた。
「今日は,もう休んだ方がいい。レオくんの詳しいことは,また明日説明するね」
「え,やだ。今日聞く」
不安でたまらなくなってお願いする。
「ダメだよ。君も,疲れているだろう?それなのに,聞いて,君まで倒れたら元も子もないからね。だから,明日また僕がくるから,それまで待っていて。できるかい?」
「わかりました…」
やっぱり,この人には敵わないそう思わせるような雰囲気だった。
「うん,ありがとう。あとは,僕がレオくんの近くにいるから,カインくん,君は,自分の部屋に戻って,寝てくれるかな?」
「…うん。そうします」
僕はそう言って,自分の部屋へと向かった。



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