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1章

【31】ダンジョンてこんな感じなのね

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 朝、ダンジョンに向かう。
 酒場には冒険者らしき人が結構居たのに、今朝は見かけない。

「早起きな冒険者なんて私達位よね」

 リネットはお尻に大きな腰袋をぶら下げている。

「弓ってダンジョン内じゃ活躍する機会少ないから、もっぱら荷物持ちなの」

 とのこと。
 戦力外みたいな言い方してるけど、スキルのお陰でほぼほぼ1人で持ち運べる上に、いざとなれば戦えるって十分過ぎる働きよね。


 ダンジョンの表面は地下に続く階段があるだけで、屋根が目印になってなければ余裕で見落とすくらい質素。
 最初に発見した人大変だっただろうなぁ。
 ダンジョン内は以外と明るい。
魔光石とか言う魔素に反応して光る鉱物のお陰らしい。
 階段を降りると前後にまっすぐな通路が伸びている。
 天井は3メートル位。ディアボロスを差し上げるとぶつかって仕舞う高さだけど、斜めに振り下ろすようにすれば問題なさそう。
 階段そばの壁には道標が書かれてる。
まっすぐ行くと2・3層目。折り返して後ろに進むと2層目って矢印。

「このダンジョンは端に階段があるんんだよ。4層目に行きたければ先の階段で3層目まで降りて、反対の端にある階段で降りる。また反対の端まで進めば5層目に降りる階段がある」
「行ったり来たりになるから疲れるのよね」

 地上の柵の範囲がダンジョンの広さと同じ。
直径2キロはあったから4層目まで降りるとなると1時間半近く掛かる?それはダルいわね。
 それでも迷路じゃないだけ易しいんだとか。

「端まで行って、右側を回ろうか」

 ニコラがダンジョンに潜る前にチラッと見せてくれた地図をまた見せてくれる。
 広い道は縦断している通路と外周ぐるり。その間を小道がいくつも走っていて不規則な大きさの広間に繋がっている。
 通路は横に5人並べるくらい幅があるので1×3×1の菱形隊列を組む。
 ニコラが中心で、前にセドリック。右にルーシ、左にヴィオラ。後ろがリネット。
 ルーシが増えた事で新しく編成した隊列ってのもあるし、他の基本隊列もそうだけど、メンバーの配置は臨機応変に換えるらしい。
例えば、行きはセドが先頭で帰りはしんがりみたいな。
 基本隊列は後、1×2×2の2列縦隊と1列縦隊がある。

「端に着く迄の横道からモンスター出てこないか警戒しながら進んでね」

 セドが確認しながら進むから大丈夫なんだろうけど、安心しきるのは良くない。
 幸い、3層目行きの階段そばに到着するまでモンスターと遭遇はしなかった。

 階段脇の横道は入口入ってすぐに開けてる。
地図見る限り四方全部そうで、外周側の壁は湾曲してる。
 入口の高さは通路と一緒だけど、幅が2人分しかないので1列で入る。セド、ルーシ、ニコラ、リネット、ヴィオラの順。

 入るとすぐ側にゴブリン2匹。奥の出入り口付近にも2匹居た。

  キェー!

 セドが入った位で見つかってしまい襲いかかられたけど、セドリックが1薙ぎで一掃。
 いちいち奇声あげやがるもんだから奥の2匹にも気づけれ駆け寄って来る。
 でも距離があるので、全員中に入って菱形隊列に組み直す時間は十分あった。

「ルーシ、右側の奴を頼む」

 ゴブリンが走り幅跳びの様に飛びかかって来るのをセドが突き刺す。。
 ルーシはセドの右後ろから斜めに鎌を振り上げて、セドの右前で1匹を両断。

「いいね」

 セドがボソッと誉める。
 でもなんか、ゴブリンてどいつもこいつも飛びかかって来るわね。

「攻撃が単調だからって嘗めてると痛い目見るからね」

 アタシの心を読んだかの様なヴィオラの一言。

 そう言えば何か言ってたわね。
とある学者曰く、『モンスターは個々に独立した存在では無く、駒に過ぎない。』って。
 メジャーな説じゃないらしいけど、100匹おんなじ攻撃して来た次に全く違うアプローチしてくるとかあるらしくって、そんな時大怪我しやすいから油断しちゃ駄目よって話。

「ここはもういいわね」

 辺りを警戒しながらゆっくり進み、外周側の出口にたどり着く。

「湧くの待ってるより次進みましょ」

 モンスターの誕生?発生?の事を『湧く』と言う。
誰も見た事ないらしいけどね。
 人の目がある所では発生しないとか、一瞬で湧くから観測出来ないとか説は色々。

 外周から次の横道に入る。
 ここは出入り口幅の細道が長く伸びてて、中間に部屋がある。
 地図で地形は把握出来てるから警戒に集中できて精神的にはだいぶ楽ね。
 部屋の反対側にゴブリン3匹。こちらに気付いていない。

「後ろで見守ってるから、1人で倒して見ようか」

 昨日も思ったけど、この人達もロジィさんに負けず劣らずのスパルタだわ。
 隊列から外れてルーシが前に出る。
 アタシがぼふっと一発火ィ吹いて音鳴らす。振り返ったゴブリンがルーシを認識して駆けてくる。
 前に1匹、後ろに2匹。
1匹目の跳躍から2テンポ遅れて2匹も飛びかかって来る。

 ディアボロスの大刃側を振り上げ気味に薙ぎって1匹を真っ二つ。
続けざまに振り戻して小刃側で切り裂くのを狙ったけど、早すぎた。
 ギリギリ大刃の先端が右のゴブリンを捉えたけど、左側は無傷で飛んで来てる。でも、ルーシは焦ってないわ。
 ディアボロスを振り戻した回転活かして石突き側の柄をゴブリンの延髄に当て、力いっぱい地面に叩きつける。
 首の骨、折れたのかな。煙になっちゃうから骨があるかも分からないけど。

「やるじゃない」

 いつの間にかヴィオラが隣に来ていた。
3匹目が危うかったからフォローに来てくれたのね。

 その後は通路まで出て次の横道入り、外周に出たらまた次の横道進んで通路に出る。

  キェー!

 3層目行きの階段側でゴブリンが奇声をあげる。
 やっぱり通路でも遭遇するのね。
 走って来てるからどんどん距離が縮まり、100メートル位。
 しんがりのリネットが其れを射抜く。
 その距離で当たるとか凄いな。
 リネットが弓使う度に彼女への評価が上がっちゃう。適性高くないって言ってたくせに。

「誰があの魔石取りに行くのよ」

 『どうせ私なんでしょうけど』って言いたげなヴィオラ。

「あ、ごめん。もっと引き付ければ良かったね」

 『そうね、お願い』って声色なリネット。

「後で左側も回るからその時回収しようか」

 とセドリック。
ヴィオラが微笑む。

 それからまたうねうねと進み、2層目までしか降りられない方の階段までたどり着く。
 その脇の広間を一掃してから休憩。これでちょうど半周ね。
 これまでで同時に出会すモンスターは最大でゴブリン4匹。
それも2匹が2組てので、1組の最大は3匹だった。

 休憩後は通路の左側をまたうねうねと戻る。
 この程度なら、もうルーシ1人で太刀打ち出来ちゃうだろうけど、油断は禁物ね。
 とは言ったものの、危なっかしい事もなく進んでいくので気を張ってないとアタシ寝ちゃいそうよ。道も簡単だし。


 1周制覇まで後1往復って時に、初めて他の冒険者と出会した。
 近い方の階段から登って来たのかな。何層目に行ってたのか知らないけど帰りでしょうね。
 行きで鉢合わなかったのはアタシ達が徘徊してたからでしょう。
 すれ違い様、お互いに軽く会釈する。
 男子3、女子1の若い4人組パーティーだ。10代後半位かも。
 杖持ってる女子は魔法士かな?ニコラ見てるとその発想は安易かもしれないけど。男子は全員前衛っぽかった。

「あ、あった」

 すれ違った直後にリネットがだいぶ前に射抜いたゴブリンの魔石を拾う。
 それを見ていた若者パーティーが内輪で会話を始めた。

「見たかよ。あいつ等、取りこぼし拾ってるぜ」
「マジ?だっさ」
「やめなよ、聞こえるよ。それにあの人達のかもしれないじゃない」
「そうだったとしてもさぁ、あの人数で1層目周回してるってやばない?弱すぎっしょ」

 とても聞かれない様に話してるとは思えない声量ね。

「女ばっかだからじゃね?」
「女だけじゃやっぱ無理なんだって。昨日ティチに声掛けてきた、でっけぇオバサンのパーティーも絶対弱いよな」
「あの猫耳エロかったなぁ」
「それな」

 グフリア達、あの娘の事誘ったのね。

「なぁ。ディオ。お前もそう思うよな」
「どっちの事いってんのか分かんないけど、今くちにする事じゃないよな」
「そうだよ。悪口はよくないよ」

 ディオって子とティチって娘は常識があるようね。

「出たよディオの優等生キャラ」
「ティチの前だからしょうがないっしょ」

 そんな事言いながら若者パーティーは去っていった。
色々残念パーティーだったけど、仲は良さそうだったわね。

「意気がっちゃってるわね」

 とヴィオラ。

「若いわねぇ。怪我しなければ良いけど」
「怪我で済めば良い方じゃない?」

 落ち着いた態度で喧嘩したりしないけど、本気で心配したり注意したりもしない。
 それが大人な対応です。何処の世界も一緒ね。

「1周、回りきったら俺たちも帰ろう。」



 ダンジョン探索を終えて、ギルドに寄ってから宿に戻り、体を洗って食事に出た。
 今日は宿前に出店してる屋台のテーブル席。

「さすがに疲れちゃったよね」

 リネットが寝てしまったルーシの頭を撫でてる。
 ルーシの血の回復力って気力にはあんまり効果ないのかな。

「それにしても初心者とは思えない身のこなしだったな」
「訓練の賜物ね」
「ぜんぜんゴブリンに怯えてないから、このままじゃ彼奴等みたいに調子乗っちゃうんじゃない?」

 この子に限ってそれは無いと思うけど。

「意気がったりしなくても甘く見ちゃうかもしれないわね」
「1回ビビらせに4層に行くのはどう?」

 4層目って難易度が格段に上がるって階だったよね。

「ワタシ達と一緒なら大丈夫だろうけど、セドどうすろ?」
「‥‥明日は2層に行こう。順調なら明後日は3層。そこでも易しいと思えたら明明後日4層に行こうか。それまでに危険だと思ったらその階層以下には降りない」
「分かったわ」

 とニコラ。他の2人も頷く。

「そろそろ帰りましょ。ベッドで寝かせてあげたいし」

 あ、じゃぁ起こさなくちゃ。

「でも今起こすのも可哀想ね」
「俺が連れて帰るから起こさなくて良いよ」

 セドがルーシを抱き抱える。

 萌シチュエーション
  うらやまっ!
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