111 / 245
第3章 特別任務
特別任務 19
しおりを挟む
コーブ農園からの道は小高い丘をいくつも越えて続いていた。半日も進んだ頃、遠くに雪化粧をした山々が見え始め、その麓に広大な森林が広がっているのが分かった。東の大街道から脇道に入りその森林へと向かうと、やがて石造りの建物が密集したカルハイムの街が見えて来た。
「あれだ」とディックが皆に告げた。
レイは山を背にした広大な森林の出現に身が引き締まった。かつて似たような場所で傭兵の仕事をした時に、熊退治に駆り出されたことがあったのだ。その時は十数人もの手練れで向かい退治したが、その圧倒的なパワーと凶暴さから、こちらにも多数の負傷者がでたのを思い出した。幸いにもレイは後方支援で、その時は怪我をしなかったが、肉が削げ落ちた負傷者の痛々しい姿が脳裏に焼き付いていた。
「ノアは熊退治をしたことはあるか?」
「ないよ。というか熊よく知らない。私、南の海辺出身だし」
「そうか。侮るなよ。あのパワーはまさに化け物」
トーブが近づいて来て自信ありげに「俺に任せろ!」と言ってきた。
「獣なんて目じゃねえ。俺の炎でやっつけてやるよ」
そういうと、右手の平で炎を燻らした。
カルハイムの街は、シエンナ城塞都市のオレンジ色と見比べると、なんとも薄暗く地味に見えた。しかし、夕暮れの街中に入るとその印象は一変した。夕食なのかシチューか何かの良い香りがただよい、窓や戸口から漏れる光は明るく、こぼれる湯気はとても暖かな雰囲気を作り出していた。どことなくノースレオウィルに似ているとレイは思った。
「あれだ」とディックが皆に告げた。
レイは山を背にした広大な森林の出現に身が引き締まった。かつて似たような場所で傭兵の仕事をした時に、熊退治に駆り出されたことがあったのだ。その時は十数人もの手練れで向かい退治したが、その圧倒的なパワーと凶暴さから、こちらにも多数の負傷者がでたのを思い出した。幸いにもレイは後方支援で、その時は怪我をしなかったが、肉が削げ落ちた負傷者の痛々しい姿が脳裏に焼き付いていた。
「ノアは熊退治をしたことはあるか?」
「ないよ。というか熊よく知らない。私、南の海辺出身だし」
「そうか。侮るなよ。あのパワーはまさに化け物」
トーブが近づいて来て自信ありげに「俺に任せろ!」と言ってきた。
「獣なんて目じゃねえ。俺の炎でやっつけてやるよ」
そういうと、右手の平で炎を燻らした。
カルハイムの街は、シエンナ城塞都市のオレンジ色と見比べると、なんとも薄暗く地味に見えた。しかし、夕暮れの街中に入るとその印象は一変した。夕食なのかシチューか何かの良い香りがただよい、窓や戸口から漏れる光は明るく、こぼれる湯気はとても暖かな雰囲気を作り出していた。どことなくノースレオウィルに似ているとレイは思った。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ガルダ戦記、欲しい世界は俺が作る!
夏カボチャ
ファンタジー
主人公のガルダはある日、弧ギツネのパパに成ることを決意した、一緒に暮らすなかで互いの成長と出会いだが、ガルダ達は新たな戦いの渦に巻き込まれていく。
ガルダは戦いの中にある結論を出すのであった、欲しいものは自分の力で掴み取ると。
ガルダと仲間達を待ち受ける運命が動き出す。
よろしければ見てやってください(〃^ー^〃)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる