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第2章 訓練の日々
訓練の日々 15
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ラクフは大広間を駆け抜け、裏手の訓練場の端の角まで駆け抜けた。後ろを振り向くと、ディックが間近に迫っていた。
「チッ、鬱陶しい奴だ!」
ラクフはそう言うと、チュニックの内から小瓶を取り出してディックの顔目掛けて激しく振った。真っ赤な粉が飛び出してディックを襲う。「グワッ」と言う声と共に顔を抑え立ち止まるディック。
「へへ、唐辛子の粉さ。結構効くだろ」
ラクフはナイフを腰に下げ、カバンから火薬の詰まった筒を取り出すと、火打ちの鉄で導火線に火をつけた。そのまま、鉤爪とロープのついた筒を上空狙いを定めて投げると、筒は花火が打ち上がるが如くヒューと音を立て要塞の外壁を越えていった。音の消えた頃ラクフがロープを引っ張ると、しっかりと鉤爪が外壁に食い込んだのか、ロープがピンと張った。「良し!」と声をあげてラクフがロープを登っていく。
「ク、クソッ」
ディックが見えぬ目のまま、闇雲にダガーナイフを振り回すが、もうすでにラクフはかなりの所までロープを登っていた。
「あばよ。間抜け!」
すぐに、クレテイスと槍を手にしたストラスブルがやって来た。
「ディック退け!」とクレテイスは叫ぶと同時に、ディックのダガーナイフを奪いラクフに驚く速さで投げつけた。下に残っていた紐をつかまれぬ様に手繰り寄せていたラクフは、靴の仕込みナイフで何とか弾き直撃を免れた。「あぶねー」と声が漏れたラクフに今度は槍が飛んでくる。「クソッ」と言って、紐を大きく揺らして避けるラクフ。
ストラスブルが後ろからやって来た他のシエンナ騎士から槍を受け取り、また投げるが器用に躱される。
「ブル上だロープを狙え。他の奴らは槍を置いて外壁の外に回れ、ここはブルに任せればいい。急げ! 絶対逃すな」
クレテイスはそう言うと、足首からナイフを取り出しトゥニカの両側を縦に切り裂いた。スリットを入れ走りやすくなった服で入口の詰所へと一陣の風を残し駆け抜けていく。
門の脇の詰所には5名の衛兵がいた。
「ク、クレテイス様! 一体?」
「逃亡者だ。二人は外壁沿いに外に回れ。二人は私について来い。一人はここに残れ」
そう言うと、クレテイスは詰所の奥にある螺旋階段へと向かった。門の脇にある塔は城壁の歩廊へと繋がっている。その階段を飛ぶ様に駆け上がっていった。
「チッ、鬱陶しい奴だ!」
ラクフはそう言うと、チュニックの内から小瓶を取り出してディックの顔目掛けて激しく振った。真っ赤な粉が飛び出してディックを襲う。「グワッ」と言う声と共に顔を抑え立ち止まるディック。
「へへ、唐辛子の粉さ。結構効くだろ」
ラクフはナイフを腰に下げ、カバンから火薬の詰まった筒を取り出すと、火打ちの鉄で導火線に火をつけた。そのまま、鉤爪とロープのついた筒を上空狙いを定めて投げると、筒は花火が打ち上がるが如くヒューと音を立て要塞の外壁を越えていった。音の消えた頃ラクフがロープを引っ張ると、しっかりと鉤爪が外壁に食い込んだのか、ロープがピンと張った。「良し!」と声をあげてラクフがロープを登っていく。
「ク、クソッ」
ディックが見えぬ目のまま、闇雲にダガーナイフを振り回すが、もうすでにラクフはかなりの所までロープを登っていた。
「あばよ。間抜け!」
すぐに、クレテイスと槍を手にしたストラスブルがやって来た。
「ディック退け!」とクレテイスは叫ぶと同時に、ディックのダガーナイフを奪いラクフに驚く速さで投げつけた。下に残っていた紐をつかまれぬ様に手繰り寄せていたラクフは、靴の仕込みナイフで何とか弾き直撃を免れた。「あぶねー」と声が漏れたラクフに今度は槍が飛んでくる。「クソッ」と言って、紐を大きく揺らして避けるラクフ。
ストラスブルが後ろからやって来た他のシエンナ騎士から槍を受け取り、また投げるが器用に躱される。
「ブル上だロープを狙え。他の奴らは槍を置いて外壁の外に回れ、ここはブルに任せればいい。急げ! 絶対逃すな」
クレテイスはそう言うと、足首からナイフを取り出しトゥニカの両側を縦に切り裂いた。スリットを入れ走りやすくなった服で入口の詰所へと一陣の風を残し駆け抜けていく。
門の脇の詰所には5名の衛兵がいた。
「ク、クレテイス様! 一体?」
「逃亡者だ。二人は外壁沿いに外に回れ。二人は私について来い。一人はここに残れ」
そう言うと、クレテイスは詰所の奥にある螺旋階段へと向かった。門の脇にある塔は城壁の歩廊へと繋がっている。その階段を飛ぶ様に駆け上がっていった。
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